HOME 読みもの アグリニュース カラシ油爆弾を不活性化するイモムシのスゴイ技を発見!! アグリニュース カラシ油爆弾を不活性化するイモムシのスゴイ技を発見!! シロチョウゲノム編集カラシ油爆弾忌避物質イモムシアブラナ科 公開日:2023.4.14 キャベツ、ナタネ、ワサビ、カラシナなどのアブラナ科の植物は、「カラシ油爆弾」と呼ばれる草食動物に対する忌避物質を放出します。それらの植物に蓄えられているグルコシノレートという防御物質は、イモムシに食害されたとき、すなわち植物組織が傷つけられたときに、ミロシナーゼ酵素と反応します。グルコシノレートはミロシナーゼにより加水分解されて、カラシ油が生成されます。カラシナやワサビの辛味は、このカラシ油爆弾によって生じるものです。 イラスト/坂木浩子 これに対してシロチョウの幼虫は、 NSP(nitrile-specifier protein)というタンパク質をもち、これがグルコシノレートからカラシ油への分解を阻害し、無毒化することが知られていました。ところが、植物のグルコシノレートには130以上の種類があり、シロチョウがNSPだけで、多様なグルコシノレートを解毒できるのかは不明でした。 このほど、マックス・プランク研究所(ドイツ)など研究グループは、キャベツの害虫であるシロチョウのイモムシが2種類の腸内酵素を用いて、宿主植物の主な化学防御システムであるカラシ油爆弾を効果的に不活性化することを明らかにしました。 今回の研究では、ゲノム編集技術を用いて、オオモンシロチョウの幼虫がNSPだけでなく、その姉妹遺伝子であり解毒作用がないとされていたMA(major-allergen)というタンパク質も利用して、グルコシノレートを解毒していることがわかりました。さらに、NSPとMAはそれぞれ異なる種類のグルコシノレートの解毒を担い、オオモンシロチョウの幼虫はこれら2つの解毒遺伝子を食草に含まれるグルコシノレートの組成に応じて使い分けることで、より幅広い食草に適応していたのです。植物と昆虫の複雑な関係に驚かされます。 文/保谷彰彦 この記事をシェア 関連記事 2024.4.6 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(後編) 去る3月2日、表題のフォーラムが開催された。前編で紹介した基調講演に続いて行われ […] 獣がいフォーラム獣害 2024.4.5 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(前編) 生産者が丹精を込めて栽培しても、収穫前に野生動物に農作物を食べられては、すべての […] ヒグマ対策獣がいフォーラム獣害 2024.4.4 第39回花卉懇談会フォーラム~新しい園芸植物の伝え方・使い方・作り方~ 2024年2月23日、表題のフォーラムが東京農業大学世田谷キャンパスにおいて開催 […]