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渡辺和彦の篤農家見聞録

良い肥料・資材を有効活用し、1億円超えを目指せる農業を!

公開日:2023.4.13
飯塚正也さんと、収穫期などの繁忙期はもちろん、事務方としても強力な助っ人である奥様の里子さん。収穫期を迎えた「夏のぜいたく」を間に挟んで。

連載3回目の今回は、ケイ素を含む肥料を使い、安定した糖度のスイカを栽培している新潟県南魚沼市の飯塚正也さんを訪ねました。

筆者の以前の本誌連載「栄養素の新常識」(2019年冬号)では、国際植物栄養協会が2015年にケイ素はすべての高等植物に対して「価値ある物質」と認めたことを紹介した。すると、小西安農業資材株式会社の鈴木望文さんが連絡を下さった。鈴木さんによれば、(株)ネイグル新潟の清田政也さんらが営農指導をしている新潟県の生産者では、ケイ素を多く含む肥料「ハニー・フレッシュ」(表1A)(小西安農業資材(株))を使うことで、稲はもちろんのこと、長ネギ、アスパラガス、エダマメ、キュウリ、スイカなどで野菜の品質向上や多収につながっているという。そこで今回は清田さんの紹介で、新潟県南魚沼市のスイカ栽培農家として現地ではリーダー的存在の飯塚正也さんを訪ねた。

「ハニー・フレッシュ」は他に替えがたい存在

飯塚さんは就農30年、現在49歳になる。スイカの圃場は南魚沼市八色原(やいろはら)にあるが、祖父は同じ南魚沼市の塩沢で製材業を営んでいた。戦後、満州から帰国してみると現地はひどい食糧難となっていたが、あるとき、スイカを栽培してみたところ、思いもかけず優品ができたことから祖父が農業をはじめるため現地を開墾したという。

現在、飯塚さんご夫婦、飯塚さんの母、弟さんご夫婦、通年従業員1人で栽培に取り組む。スイカの他にも水稲、ニンジン、ジャガイモ、ウド、アスパラガスなどを栽培している。

スイカ圃場の広さは7.5ha(大玉2.5ha、小玉5ha)。「ハニー・フレッシュ」は苦土、コロイドケイ酸、硫黄を多く含み、各種微量要素も含まれている。「ハニー・フレッシュを使いはじめたのは5~6年前ですね。清田さんにスイカの苦土欠対策を求めたところ、勧められたからです。潅注でも葉面散布でも使えるため、使い勝手が良いのは他には替えがたいものがあります。単価もお手頃です」。

使い勝手がよく、お値段もお手頃な「ハニー・フレッシュ」は飯塚さんの心強い味方。肥大期の潅注で少し入れるのがコツ。葉、つるも元気になるという。

昨年のスイカの生育は、大玉は大きく育ち、小玉は前半の小雨の影響で小さかったという。交配はミツバチに頼らず人手でというこだわりようで、株当たり小玉で8~10個、大玉では4~6個を理想としている。

主に手がけているスイカは、小玉は「ひとりじめ7-EX」、「ひとりじめNEO」(以上、(株)荻原農場)、「ピノ・ガール™」((株)ナント種苗)。大玉は「富士光TR」、「夏のぜいたく」(以上、(株)荻原農場)。「ピノ・ガール™」は食べても大丈夫なほど種子が小さく、皮のギリギリまでおいしく食べられることからお客様の評判も上々だそうだ。また、飯塚さんによれば「ピノ・ガール™」はスイカ生産者を悩ませる炭疽病の耐性が高く、病害に強いのも魅力だという。

小玉スイカ「ピノ・ガール™」。炭疽病に耐性があり、やわらかい肉質でお客さんからも人気が高い。それほど手をかけなくても糖度が上がりやすいそうだ。

 

出荷を待つ大玉スイカ。大きいものは30cm前後となるものも。

 

安定した糖度のスイカを栽培
目指すは総売上1億円

もともと安定して糖度の高いスイカを生産していたが、はっきりとしたデータはないもののと前置きした上で、飯塚さんは「ハニー・フレッシュ」を使いはじめてから手がけている品種でどれも平均的に糖度が上がってきたように感じるという。以前はあった品種間の大きな差がなくなってきたというのだ。なお、小玉のほうが高糖度になる傾向にあるという。

「ハニー・フレッシュ」の施用時期は、生育前半では潅注のみ、梅雨時期になる後半は葉面散布を1~2回。飯塚さんによれば、「ハニー・フレッシュ」の効果として糖度の向上の他、つる持ち、葉の立ち方が良い、下葉の枯れ上がりが少ない、葉色が上がるなどが挙げられるそうだ。

新潟県農業普及センターの展示圃の試験結果の一部を表1Bに示す。これによれば、甘み、シャリ感あり、歯触りが良いとの総合評価を得ている。この地域でのスイカ栽培ではリーダー的存在の飯塚さんが「ハニー・フレッシュ」を使いはじめ、周囲の栽培仲間にも情報共有をしているため、地域では「ハニー・フレッシュ」の使用がずいぶん広がり、地域全体の品質向上につながっているそうだ。

飯塚さんは、「スイカの収益は、売上目標としては大玉で85万円以上は目指したい。小玉なら80万でプラスαあればいい」と言う。「ニンジン、ジャガイモなど他の品目も含めた総面積約21・5haで年間総売り上げ目標1億2500万を目指したい」と全国の生産者を勇気づける心強い決意を語ってくれた。

「ハニー・フレッシュ」と使って相乗効果となる資材の発見

ここで「ハニー・フレッシュ」にも含有されているケイ素について触れておきたい。ケイ素の農作物への効果は、葉の部分的ガラス質化による光合成力維持・拡大だ。蒸散能の促進によるクーラー効果による高温障害の低減も挙げられる。抵抗性誘導機能による病害虫被害の軽減効果もあり、また人間においてはケイ素を含む食べ物を食した上、かかと落としなどの運動を行った人の長寿ホルモン、骨ホルモンの2種がともに活性化し、健康寿命を長くすることがすでに解明されている。

なお、最近さらに明らかになっているのが、「ハニー・フレッシュ」と、世界初水抽出の天然フルボ酸とフミン酸を含む「HS-2®︎」((株)ケーツーコミュニケーションズ)との相性が良いことである。本誌2021年秋号で新潟県での稲の実験結果を紹介した。混合散布ではなく、別々に散布しても良い。飯塚さんのスイカ圃場でも試験をお願いしていたが、今年は大雨の影響で割れが多く発生し、同圃場でのデータがないのは残念である。

新潟県での主要作物である水稲では、大規模農地では水稲作直播き栽培がやや増加しているが、登熟(実入り)が悪いなどの欠点がある。そこで、その対策に図1に示すようにドローンによる「HS-2®︎」の散布が普及しはじめた。「HS-2®︎」は、個々のミネラルの吸収力を高め生育を良くするだけでなく、「HS-2®︎」の持つ抗酸化力が作物の高温耐性を高めることも明らかになっている。

肥料の重要性を再認識した米の成分分析

近年の科学進歩は著しい。(株)キーエンスは常温の空気中でも前処理なしで、多量に含まれる無機元素含有率を測定できる分析器を発売している。

筆者が同社のホームページを見てカタログをダウンロードして感心していると、それを知った同社の板坂裕基さんがわざわざわが家に測定器を持参してデモ分析をして下さった。ちょうど2022年12月7日に(株)ネイグル新潟主催の講演会に行ったとき、同社で施肥指導をしておられる生産者の新潟県産コシヒカリをいただいたので、わが家が近くのスーパーで購入している普通の兵庫県産コシヒカリと比較分析した。すると新潟県産の米には明らかにケイ素が検出されたのだ(下写真図2)。一方、わが家が食している兵庫県産のコシヒカリはケイ素は検出限界以下であった。

キーエンス:デジタルマイクロスコープとレーザー元素分析ヘッドの組み合わせによる精米表面の元素分析の様子。 (注)デジタルマイクロスコープはVHS-8000シリーズ。レーザー元素分析ヘッドはEA-300シリーズ。

 

参考までに記すが、この分析器は月20万円でリースしてくれるそうだ。やはり、(株)ネイグル新潟の指導で育苗時の「ハニー・フレッシュ」や、基肥施用でのリン酸・ケイ酸入り総合微量要素肥料「ホスビタ」、水口追肥専用省力肥料「ハイポン」(「ハニー・フレッシュ」と同成分)などケイ素資材をきちっと施用されている農家の米は、ケイ素をたっぷりと含んだ人間の健康にも良い素晴らしいお米であることが証明されたと言えよう。通常、ケイ素は糠層に多く含まれるのだが、精米した米にも、ケイ素が多く検出されたことは筆者には感動的な新事実であった。

取材協力/飯塚農場
取材・文/一般財団法人日本ヘルスケア協会 土壌で健康部会技術顧問
元兵庫県立農林水産総合技術センター環境部長
農学博士(京大) 渡辺和彦

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