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【関西 野菜】山菜

公開日:2023.4.16

山菜と聞いてイメージするものは、地域や世代によって差があるように思う。

筆者が子供の頃は、大阪でも少し足を延ばすと小山や空地、池などがあり、いろんな植物が自生していた。なかには食用の植物もあり、ヨモギを採ったりクリ拾いをしたり、アケビの実を採って食べたりしたものだ。

幼稚園の時の先生のご実家が山里にあったのだが、春になると毎年親に連れられて遊びに行かせてもらい、一緒に一面に生えているツクシやワラビを収穫して持ち帰り、天ぷらや玉子とじにしてもらって食べたことを思い出す。

筆者にとっては山菜と言えば、このツクシやワラビだが、今の仕事に就いてからいろんな地域に行く機会があり、そこで出会った山菜はまったく異なるイメージのものであった。

山形県ではコシアブラという山菜に出会った。シーズンになると直売所で売られる他、地元の人は山に入って自分で収穫するということで、タラの芽とコシアブラの収穫に取引先の方にお連れいただいたことがある。素人でも意外と採れた。

青森県ではミズ(ウワバミソウ)という山菜が、北海道ではギョウジャニンニクという山菜が居酒屋などでも普通にメニューに並んでいる。

山菜の定義

山菜とは何か?

日本特用林産振興会というのがあって、そのWebサイトのなかに山菜のページがある。そこには、「一般に、自然状態で自生し利用されるものが山菜と呼ばれているようです。」と書かれてあり、同時に「セリ、ミツバ、フキ、ウドあるいは最近ではたらのめのように、栽培される野菜との境界が不確かなものもあります。」とも書かれてあるように、もともとは自然に生えているものを採集して利用していたが、利用頻度が高く人工的に増殖が可能なものは栽培するようになっていったということのようだ。

例えばタラの芽は、タラノキというウコギ科の樹木の枝先から出てくる新芽を収穫して食べるのだが、畑で人工的に栽培しているタラノキの樹木の枝を切り取ってビニルハウスなどのなかで水につけて並べて置き、促成栽培を行う「ふかし栽培」と呼ばれる方法で栽培したものが市場流通している。

同じWebサイトのなかには、山菜を科ごとに分類した一覧表があるので紹介しておく。

このなかで大阪市東部市場に入荷した実績のあるものは、オカヒジキ、アケビ、ワサビ、ネマガリタケ、ウド、タラノキ(タラの芽)、フキ(フキ、フキノトウ)、ジュンサイ、セリ、ミツバ、サンショウ、ギボウシ(ウルイ)、ノビル、ワラビ、クサソテツ(コゴミ)、ゼンマイといったところだ。


ウドは、自生のものは「山ウド」として流通しており、地下や洞窟、遮光ハウスなどで軟白化させて栽培しているものが「ウド」として流通している。オカヒジキやセリ、ミツバなどは種子が出回っており、今は家庭菜園でも簡単に栽培が可能だ。

また市場ではアケビは果実として、ワサビやサンショウは妻物として分類されており、ネマガリタケはタケノコ、フキとジュンサイはセリやミツバとともに葉物扱いとなっている。他のものも分類的には葉物なのか山菜なのか微妙なものもあって、山菜として市場流通していると呼べるものは山ウド、タラの芽、フキノトウ、ウルイ、ワラビ、コゴミといった辺りだろうか。フキも自生のものはヤマブキとして山菜扱いとなっている。

先述のタラの芽のように栽培しているものも含まれており、本来の定義からすると山菜と呼べるかどうかも曖昧だが、ある程度安定流通させるためにはこれらも含めて山菜と呼ぶしかなさそうだ。

季節ものとして味わう

山菜の入荷は1月から徐々にはじまり、品目によるがゴールデンウイーク頃まで続く。年によっては年末からスタートしたり7月以降も入荷があるが、平均的な入荷を見るために1〜6月までの品目ごとの入荷量をグラフにしてみた。

2月の節分を過ぎると、まだまだ気温は低いなかでも春を迎える雰囲気が生まれてくる。量販店の売場も春らしい売場作りへと変わっていき、山菜が並びはじめる。3月が出荷のピークで種類も多く、サクラの蕾も見えはじめると春を心待ちにする気分が高まってくる。

単価は一般的な他の野菜に比べると高く、旬になると大量に出回るものというよりは、季節ものでありがたいものという位置づけのようだ。品揃えとして売り場を賑やかすのが主な目的で、なくてはならないというものではないのだが、好きな人は好きだし、季節がきたら一度くらいは食べておこうという人は一定数はいるので、売場にないと寂しい感じはする。

不変的な産地構成

それぞれの産地構成は、いろんな地域から入荷してくるというよりも、ある程度固定化された産地があるという感じだ。

今は季節を問わずに食べるものにあふれており、山菜のありがたみを感じる人は多くはないだろうが、まだ日本で野菜の栽培が盛んではなかった時代には貴重な食材であった。アクを抜かないと食べられないものもあるが機能性に優れたものも多く、季節の変わりめに体を労わったり活力を与えたり、その価値は高いと感じる。

今はツクシやワラビが採れる野山も減っており、幼少時代のように自分で採りに行くこともなかなかできなくなっている。どれか一つでも良いから一年に一度くらいは食べておきたいと思う。

著者プロフィール

新開茂樹(しんかい・しげき)
大阪の中央卸売市場の青果卸会社で、野菜や果物を中心に食に関する情報を取り扱っている。
マーケティングやイベントの企画・運営、食育事業や生産者の栽培技術支援等も手掛け、講演や業界誌紙の執筆も多数。

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