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【関東 切り花】アスチルベ

公開日:2023.5.23
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

アスチルベは小さな花が集まった花穂を持ち、花色にくすみがかった雰囲気があることから、昨今のトレンドキーワードを複数持つ花として人気が高い。アスチルベの由来を調べたところ、a+stilbe=輝きがない、という意味があり、まさに輝きの代わりにマット感を示す名前を持った花である。アスチルベが現在のトレンドにマッチしている状況に命名者は何を思うか、運命の不思議さを感じる。

アスチルベの月別流通通量は下記の図のようになっている。

流通は5~6月にかけてピークを迎える。ハウス生産がおおよそ3~5月にかけて出回り、露地ものは6月頃に出荷され、6月が年間を通したピークとなる。露地ものの最盛期は天候の影響を受けるため、年によって前後する。今年のように、気温の影響で農産物の流通が総じて早い年は相当前にピークが来るだろう。露地ものが終わるとしばらくは国産品は激減する。次に国産が増えるのが冷蔵苗のハウスものが晩秋から冬場にかけて出荷するシーズンだ。

一方、夏場から秋口に流通するのは主に輸入品だ。輸入品流通時期となる8〜10月頃の図の単価を見ていただきたい。この時期は本数が少なく、単価が非常に高いことがわかる。用途としては婚礼業務などの装飾用だ。夏場の価格が高止まりしているが、必需品としている顧客層がいるからだ。ただし、価格は需要と供給によるバランスというよりも商品を空輸するため、コストが単価に反映されている面が強い。婚礼需要に基づく要望がこのシーズンにあり、また国際物流は国際問題による影響を受けやすいことから国内生産で夏場出荷に取り組む動きもあり、まだまだ月別出荷動向には変化が続くだろう。

また、国産については興味深い取り組みがいくつかある。それは染色によるカラーバリエーションの拡大だ。植物が持っているくすみ感をベースにし、ヘアカラーのごとく冷たいテイストのカラーバリエーションからトレンドのヌーディカラーまで展開している。なかでもブルー系が秀逸で定着している。

日本流行色協会のHPによれば、1960年代はシャーベットカラーが流行り、単色ではなくカラーパレットという概念が広まった時代だった。当社分析での花きの流行サイクルの波とも一致していることから今後の流行について考察すると、ファッションと同等にカラートレンドがシンクロしているのもうなずける。

最後にアスチルベの日持ち性について触れておきたい。一般論として期待される一週間には少し足りない日持ちの植物だ。蒸散も進みやすく、穂先がうなだれやすい。昨今拡大しているホームユース需要において、この特性をポストハーベストなどで解消するのが今後品目の成長を拡大させる上では検討課題ではないだろうか。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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