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農業への応用に期待! 根の伸長を制御するペプチドホルモンを発見

公開日:2023.5.24

植物の根系は発芽直後から伸長する「主根」と、主根から分岐して形成される「側根」で成り立っています。側根は根系の大部分を占めるだけに、植物の生育に大きく影響すると考えられますが、その形成については不明な点が多く残されています。

これまでの研究で主根の内部で特殊な細胞分裂が繰り返されることにより、側根の素となる組織(側根原基)が生じ、これが土壌中に伸長して側根が形成されることは明らかになっています。しかし、側根原基の密度や発生速度がどのように制御されるかは明らかになっていなかったため、熊本大学大学院先端科学研究部の研究グループは側根形成の仕組みを解き明かす研究に取り組みました。

イラスト/坂木浩子

過去、葉や根の成長に関わるCLE遺伝子群を研究していたことから、研究グループはゲノム編集技術を使ってモデル植物のシロイヌナズナが持つ7種類のCLE遺伝子をすべて欠損させた変異体を作り、その根の成長を観察しました。するとCLE遺伝子が失っていない野生型に比べて、変異体の側根は長くなり、側根の密度は高まり、側根原基の発生が速くなることを確認。CLE遺伝子の遺伝情報に従って合成されるCLEペプチドにより、側根の分岐頻度、分岐速度が抑制されていることが明らかになりました。

CLE遺伝子はシロイヌナズナだけでなく、すべての陸上植物が持っていると考えられています。またCLEペプチドは容易に合成することができることから、このペプチドを用いて収穫後に取り除く必要がある根菜の側根の形成を抑えたり、CLEペプチドの阻害剤を開発することで、側根の伸長を促して農作物の収量を増やしたりすることができるようになると期待されています。

文/斉藤勝司

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