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忌避剤開発のヒントになる?! ハダニ類が芋虫の足跡を避けることを発見

公開日:2023.5.31

安定して農作物を生産するためとはいえ、化学農薬を使い続けていれば、耐性を持つ害虫が出現しかねません。特に吸汁性害虫のナミハダニは10日程で世代交代するため、新しい農薬を開発してもすぐに耐性を獲得してしまう厄介な存在です。

しかし、自然界ではナミハダニが食草を食べつくしてしまうことはなく、ナミハダニを抑制する仕組みが働いている可能性があります。京都大学と京都工芸繊維大学の研究グループはナミハダニと、近縁種のカンザワハダニの生態を調べ、耐性を獲得させずに食害を防除する技術のヒントを見つける研究に取り組みました。

ハダニ類が寄生する植物にはチョウやガの幼虫(芋虫)もいます。ハダニ類が0.5mmに満たないのに対して芋虫は数cmもあり、ハダニ類ごと葉を食べてしまいます。旺盛な食欲の芋虫に出会うと、ハダニ類は自分が食べられるだけでなく、子孫の食草を失いかねません。そこで研究グループは、ハダニ類は芋虫を避けるのではないかと考えました。

イラスト/坂木浩子

分類上の科が異なる4種の芋虫(カイコ、セスジスズメ、ナミアゲハ、ハスモンヨトウ)のいずれかにインゲンマメの葉の表面を歩かせ、ナミハダニ、カンザワハダニが芋虫の足跡が残る葉に定着するかどうかを調べたところ、両種ともすべての芋虫の足跡を避けることが確認されました。次に溶媒を用いて足跡に含まれる化学物質を抽出。T字型濾紙の一方に足跡抽出物を染み込ませ、もう一方に溶媒だけを染み込ませて、ハダニ類がどちらを選ぶかを調べると、足跡抽出物を避けることが分かりました。

芋虫の足跡物質はありふれた天然物質ですから、足跡の匂いを人工的に調合することができれば、耐性を獲得される心配のないハダニ忌避剤が実現すると期待されています。

文/斉藤勝司

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