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蒸散抑制剤

公開日:2023.6.10

植物の体内の水が水蒸気として空気中に排出される現象を蒸散という。表皮細胞を通じて行われる表皮蒸散と気孔を通じて行われる気孔蒸散があり、後者が大部分を占める。
植物の根で吸収される水はそのわずか1%以下が植物体内に残り、ほかは蒸散で逃げてしまう。例えば、成熟したトウモロコシの植物体は2ℓの水分しか含まないが、蒸散に使われた水は約200ℓになるといわれる。そこでこの蒸散を抑制することができれば蒸散過多による植物の萎凋を防ぎ、また水を節約でき水資源の減少の悩みも少なくなる。

この蒸散を抑制するために植物に与える物質を「蒸散抑制剤」という。蒸散を半分に抑えても葉温を高めたり無機養分の吸収を妨げることはないといわれるが、現在まだ理想的な抑制剤は現れていない。抑制の方法としては気孔を閉じさせる方法(ある種の殺菌剤が用いられ、気孔を閉じても光合成より蒸散の抑制の方が大であることに基づく)と、葉に被膜を作る方法(高級アルコールを用いる)とがある。

そのほか、植物体内に入る必要以上の太陽エネルギーを反射させるための物質を散布する方法や、炭酸ガス濃度を高め気孔を閉じさせ蒸散を抑制すると同時に、太陽光その他の要因が良好であれば光合成を増すことができる方法などが考えられる。今までのところ圃場で行われた結果は、その時々の条件を考慮していないので効果はまちまちである。
蒸散抑制剤は、ほかにも移植・挿し木での活着促進、冬季の乾燥害防止、切り花の寿命延長、収穫果の保護などへの利用が考えられる。さらに副効果としてスモッグ害、病虫害の防止作用がある。

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