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草原のカモシカはモテモテ!? 生息環境によって変わる社会システム

公開日:2023.7.14

カモシカを含む有蹄類(蹄のある哺乳類)は、森林に生息する種と草原に生息する種で社会システムが異なる傾向があります。森林では「単独性・一夫一妻」、草原では「群れ性・一夫多妻」の社会システムを持つことが多いのです。

有蹄類の祖先はもともと森林に暮らしており、地球の寒冷化によって広がった草原へと新たに進出する中で、単独性から群れ性へ、一夫一妻から一夫多妻へと、社会システムが進化したと考えられています。しかし、その社会システムの進化については、多くの謎が残されています。

このほど、東京農工大学などの研究グループは、森林と高山草原では、カモシカの社会システムが大きく異なることを明らかにしました。この成果は国際誌『Behavioral Ecology and Sociobiology』に掲載されています。

イラスト/坂木浩子

長野県浅間山で 7年間にわたり、ニホンカモシカの行動を観察した結果、餌資源の乏しい森林に生息するメスは単独でなわばりをもつのに対し、餌が豊富な草原に生息するメスは 2~3 頭の群れでなわばりをもつことがわかりました。一方、オスは森林でも草原でも同性に対して常に単独でなわばりを持っていました。そして、オスとメスはなわばりが重なる相手とつがいになっていました。このため、メスが単独生活する森林では一夫一妻、メスが群れで暮らす草原では一夫多妻になっていたのです。

豊富な餌資源を提供する高山草原は、群れ形成と一夫多妻を促進すると研究グループでは考えています。今回の成果は、カモシカの適切な保全につながると期待されます。

文/保谷彰彦

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