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【関東 鉢物】ホオズキ

公開日:2023.7.1 更新日: 2023.6.30
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

ホオズキはナス科の多年草で、5月頃より開花がはじまり、7月頃から観賞期を迎える。白〜クリーム色の花を咲かせた後、がくの部分が袋状に育ち、観賞用は緑色から徐々にオレンジに色づいてくる。

ホオズキと言えば、浅草寺のほおずき市は非常に有名である。江戸時代の1764年頃が起源とされ、毎年7月9〜10日に行われる。とくに10日は、参拝すれば一生分のご利益があるとされる功徳日である。例年約100店以上のホオズキの露店や食べ物の屋台が並び、約50万人もの参拝者が訪れ、朝から晩までにぎわう夏の風物詩だ。しかし、新型コロナウイルスの流行により、イベントの延期や中止が相次いだ。ほおずき市も2022年の再開を迎えるまでの2年間、開催は中止された。

ところが、この中止によって売り上げを伸ばしたところがある。それは東京都の花き卸売市場だ。

下記の図は東京都中央卸売5市場における鉢物ホオズキの取り扱い数量と平均単価である。2020年7月の取り扱い数量は他の年と比較して突出しており、コロナ流行以前の2019年同月の取り扱い数量と比較すると約3.2倍もの多さだ。主な鉢物ホオズキの生産地は愛知県、静岡県、茨城県で、催事用の出荷のシェアが多い。2020年は開催中止になったことで、生産地から祭り用に直送されていたものが市場に回ってきたために、取り扱い数量が伸びたと考えられる。

さらに価格にも注目してみると、2020年7月は前年同月比で約1.7倍高くなっていた。ステイホームでの需要が高まり、注文の動きが多くあったことから、普段市場に出回りにくいホオズキの鉢物に高値がついたと考えられる。

また開催が中止された2年間では、食品のインターネット販売を展開する企業が花き卸売市場を通じて、ECサイトでの販売を行った。竹かごやアサガオとセットにして販売したり、まとめて販売して購入しやすい価格に設定したりすることで、数千鉢が販売されたようだ。

このように、新型コロナウイルスの蔓延によって、卸売市場は社会のインフラとして、その分配機能が改めて注目された。また、ECサイトによる活路が見いだされたことでも、ホオズキ生産の技術や伝統は受け継がれ、販路は広がったと考えられる。現在、生産者は50年前の十分の一程まで減少しているようだが、マーケットの開拓も含めて、広く生産していただけると良いだろう。

さて、古くから親しまれ、その形とオレンジ色からお盆の提灯として見立てられるホオズキは、夏のイメージが強い。しかし夏のみならず、透かしホオズキとして秋まで長く楽しむ方法も知られている。ホオズキを水につけ2週間程置くと、がくが腐って溶け、繊維のみが残る。すると繊維のなかに、がくに覆われて見えなかった丸くオレンジ色の実が現れ、提灯からランタンのような見た目になる。このスケルトンで美しい姿はハロウィンの飾りとして楽しむこともできるだろう。じきに実は腐ってしまうので切り取って除き、替わりにLEDライトを繊維のなかに入れるとインテリアとして、さらに長く楽しむこともできるだろう。

昨年から復活した浅草寺のほおずき市は、今年も7月9〜10日に開催される。ぜひ足を運んでその活気を味わってみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

倉光里佳(くらみつ・りか)
株式会社大田花き花の生活研究所研究員。株式会社大田花きでロジスティック部を経て現職に至る。花き業界唯一のシンクタンクとして調査、情報発信事業を行う。業界マーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作・販売している。

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