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アブラナ科作物の根こぶ病に効果あり!!  新たな抵抗性遺伝子を発見

公開日:2023.8.16

土壌伝染病である根こぶ病は、アブラナ科作物に壊滅的なダメージを与える病気です。中国では、毎年320万~400万平方ヘクトメートルの農地が根こぶ病に侵され、収量が20%~30%減少します。根こぶ病の原因菌プラスモディオフォラ・ブラシカエ(Pb)の休眠胞子は、土壌中で最長20年間も生存するため、一度汚染された土壌では、アブラナ科作物を栽培することが難しくなります。現在までに、根こぶ病の抵抗性遺伝子は2つしか見つかっていないうえに、病原性Pbの進化によって、アブラナ科作物の抵抗性が崩れています。

このほど、中国科学院の研究チームは、アブラナ科作物の生産を脅かす根こぶ病に対する抵抗性遺伝子を発見し、その抵抗性のしくみを明らかにしました。この成果は国際誌『Cell』に掲載されています。

イラスト/坂木浩子

今回、新たに同定された抵抗性遺伝子WTSは、既存の抵抗性ナタネ品種に対して強い毒性をもつPbに対して抵抗性を示すことがわかりました。WTSは広範な抵抗性遺伝子であり、根こぶ病抵抗性の作物品種を育種する上で大きな可能性を秘めています。

詳細な研究により、WTS遺伝子は病原体が存在しない状態では発現しないこと、Pbが感染すると、WTS遺伝子は根の細胞層であるペリサイクル(内鞘)でのみ強く誘導されることがわかりました。さらに、WTSタンパク質複合体は、小胞体に局在するカルシウムを放出するカルシウムイオンチャネルとして機能し、植物の防御機能を活性化する重要な情報伝達物質である細胞質カルシウムイオンを増加させることも明らかになりました。

この成果は、植物免疫の基礎となる新しいメカニズムを明らかにし、作物育種の新たな道を開くものと期待されます。

文/保谷彰彦

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