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分子を改造して用途が広がる!!  気孔開口を抑え、しおれを防ぐ天然物の発見

公開日:2023.8.9

植物の表皮にある気孔では、二酸化炭素が取りこまれ、酸素や水蒸気が放出されます。気孔の開閉は、気孔にある一対の孔辺細胞により調節されます。たとえば、暗条件や乾燥ストレスに応答して、植物ホルモンの1種であるアブシジン酸が活性化すると気孔は閉じます。一方、太陽光に含まれる青色光に応答して気孔は開きます。このとき、青色光が引き金となり、細胞膜のプロトンポンプが活性化されることが、気孔開口の駆動力になります。

このほど、名古屋大学を中心とする研究グループは、植物の気孔開口を抑える天然物を発見し、それをもとにして活性を大幅に向上させた分子を開発しました。この成果は国際誌『Nature Communications』に掲載されています。

イラスト/坂木浩子

この研究では、天然由来の化合物が含まれる既存の化合物ライブラリー(様々な化合物のセットのこと)を用いて、アブラナ目植物が産生する天然物のベンジルイソチオシアネート(BITC)が気孔開口を強く抑制する活性があることを明らかにしました。また、BITCが開口の駆動力となるプロトンポンプの働きを抑制することで、気孔が開かなくなることもわかりました。さらにBITCをキクの葉に塗ると、しおれを遅らせる効果を示すことなども明らかになりました。

次に、BITC分子の構造を改良し、抑制活性を大幅に強化したスーパーイソチオシアネート(スーパーITC)を開発しました。スーパーITCは、植物ホルモンのアブシジン酸をしのぐ気孔開口の抑制活性があり、さらにその作用が長く続くといった優れた性質があることもわかりました。

今回の成果は、切り花や生け花の鮮度保持剤や作物の乾燥耐性付与剤の開発につながると期待されます。

文/保谷彰彦

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