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地球最古の花は昆虫により送受粉されていた!

公開日:2023.10.2 更新日: 2023.9.22

現代の植物の約90%(30万~40万種)は、被子植物と呼ばれる花を咲かせる植物です。花を咲かせる植物は、生殖のために花粉を作り、それを別の花に移して卵細胞と受精させ、生存可能な種子を作ります。じつは複雑なしくみですが、この戦略は大成功を収めて、被子植物は大繁栄しています。

現代の被子植物の多くは昆虫により送受粉されていますが、風、水、脊椎動物による送受粉も多くの系統でみられます。被子植物の祖先は昆虫により送受粉される昆虫媒であった可能性が示されていますが、これまで全ての系統をもとにした網羅的な研究はなされていませんでした。

イラスト/坂木浩子

このほど、マッコーリー大学(オーストラリア)を中心とする研究グループは、被子植物の全ての科を含む1160種について、送粉システムのデータなどを集めて、系統樹を作成しました。そして、被子植物の祖先の送粉様式を復元し、送粉様式がシフトしたタイミングと環境との関連性などを調べました。

その結果、被子植物の祖先は昆虫媒であり、被子植物の進化の中で、その約86%は昆虫媒だったことがわかりました。さらに、風媒は少なくとも42回進化しましたが、動物媒への逆戻りはほとんどありませんでした。昆虫媒と脊椎動物媒との間での移行はより頻繁で、脊椎動物媒は、昆虫媒の祖先から少なくとも39回進化し、少なくとも26回の逆転がありました。また、風媒の確率は、生息地の開放性と赤道からの距離によって増加することもわかりました。

今回の成果により、被子植物における送受粉の進化の概略が明らかになりました。被子植物と送粉昆虫との長い相互作用の歴史は、今日でも生物多様性に不可欠であることが示されたというわけです。

文/保谷彰彦

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