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日本バイオスティミュラント協議会 講演会 「バイオスティミュラント資材を知るーアミノ酸・ミネラル型バイオスティミュラントー」(前編)

公開日:2023.11.1 更新日: 2023.11.2
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

肥料とも農薬とも異なる作用で作物の生育に良い効果をもたらすとされるバイオスティミュラント。近年、急速に関心が高まっており、近い将来には世界で数十億米ドルもの市場規模にまで発展すると期待されている。日本でも多くの企業がバイオスティミュラント資材の製造、販売を手掛けるようになって、肥料、農薬、土壌改良剤などを扱う企業によって2018年に日本バイオスティミュラント協議会が設立された。

同協議会では、設立以来、毎年、バイオスティミュラントの普及啓発を目的に講演会を催しており、2023年9月7日、8日の2日間にわたって「バイオスティミュラント資材を知るーアミノ酸・ミネラル型バイオスティミュラントー」と題した講演会がオンライン開催された。第一線でバイオスティミュラントの可能性を探る研究者、バイオスティミュラント資材を製造、販売する企業の担当者によっていかなる講演が行われたのか、レポートする。

『マルチオミクス解析から見えた植物生育に対するアミノ酸の寄与』

福島大学食農学類
二瓶直登教授

新しい資材を取り入れるに当たっては、作物の生育にどのような効果をもたらすのかを調べる必要がある。近年では測定技術が発達して、数百、数千という多くの項目を調べられる「マルチオミクス解析」が実現しており、福島大学の二瓶直登教授はマルチオミクス解析によってわかってきたアミノ酸の効果を紹介した。

「数百、数千もの項目を測定できるようになると、項目どうしの関係性は非常に複雑になり、どのような関係性があるかを示すのに『ネットワーク解析』という手法を用います。例えば、収量に関わる項目を明らかにする場合、ネットワーク解析を行うことで、収量を含む“集まり”から収量に関連した項目が可視化されるのです」

ただし、ネットワーク解析で可視化されるのは関係性だけであって、どのような因果関係があるかはわからない。そこでネットワーク解析で示された収量に関係する項目に注目して、試験栽培を行い、実際に収量にどのように影響を及ぼしているかを調べることになる。二瓶教授は太陽熱処理を行った圃場で栽培したコマツナの収量に関わる測定項目を調べた。

「コマツナの収量に関係性の強い測定項目として、土壌中のアラニン、バリン、イソロイシンなどのアミノ酸、乳酸、カリウム、カルシウムなどが示されました。そのため、これらのアミノ酸が植物の生育に影響を与えるのかを調べるための試験栽培を行いました」

その結果、アラニンを与えて育てると、窒素量が同じ硝酸を与えた場合以上に生育することが確認された。他のアミノ酸でも試験栽培が実施されており、生育を促進するものがある一方、阻害するものがあることも明らかになっている。マルチオミックス解析を行い、その結果を検証する試験栽培を行っていけば、アミノ酸をはじめ、様々な資材の効果や土壌中の生態系の変化を正確に捉えられるだろう。

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