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新品種発表会

2023年 タキイ夏季農場見学会リポート① ベジスナック 長玉ミニトマト「千恋」

公開日:2023.11.10

2023年7月4、5日の両日に渡り、滋賀県湖南市にあるタキイ種苗(株)研究農場にて、タキイ夏季農場見学会が開催された。品目別に分けてお伝えする今回はミニトマト編。

限定試作品種 ベジスナック「千恋(ちこ)」

タキイ種苗(株)がおすすめする新カテゴリー「ベジスナック」。肉厚カリカリの食感で、スナック感覚で子どもが喜んで食べられるトマト品種。棚持ちに優れ(収穫後1週間)、在庫中もワレが発生しにくい、といった特徴を持つトマト品種「千恋(ちこ)」について、お話を伺った。

「『千恋(ちこ)』は見ての通り、細長い果実です。いわゆるミニトマトは食べるとブチュっとする食感ですけど、『千恋』は果肉が厚くてゼリーが少ないので、ポリポリッと食べられるかんじで、今までの食感とは違うタイプのミニトマトとなります。ミニトマトとは別物だと思っていただいた方がいいんじゃないかなと思います。」とタキイ種苗(株)の小林さん。一房が長いので、シングルであっても収量性は意外と良いそうだ。ゼリー部分が少ないので、裂果も少なく、棚もちも良い。また、「長玉のトマトは、果実に凹んだりエクボが出やすいのですが、『千恋』は出にくく、玉がきれいに揃うところが、もう一つの特徴です」。

栽培上の特性については、「節間が長いので、高さのあるハウスで作ると抜群の能力を発揮するのですが、高さの低いハウスで作ると一段目の花房が下に擦ってしまうので、畝から10cmぐらいの部分に横ひもを1本張り、そこまでまっすぐ作り、横ひもから斜めに誘引すると良い樹形になり、効率よく作って頂けると思います」

栽培上の注意点として、「節間が長く空いている感じがして、元気がないのかなと思うかもしれませんが、このタイプは細身でスラッと出来る品種ですので、ちょっと心もとない気がするかもしれませんが、このぐらいの雰囲気ですごく採れます。心配して肥料をやり過ぎるとバランスを崩してしまいますので、こういう品種だと思って見ていただくと、収量も上がって良いと思います」と小林さん。TYLCV耐病性も有しているので、安心して栽培できるそうだ。

収穫スタイルについて小林さんは「特徴としては、ヘタの部分からも簡単に収穫できるのでヘタ無しでの出荷がおすすめです。もちろん、ジョイントの部分から収穫することもできるのでヘタ付きにもなります。どちらのタイプで出荷するかは、出荷先の好みに合わせて選べます」と解説していた。ヘタの部分から水分が蒸発することがあり、ヘタ無しのほうが日持ちがすることと、また、ヘタに雑菌が付いているとパックの中で問題が起こる可能性があることを考えると、ヘタ無しで出荷を推すそうだ。

ポリポリとおやつとしても手軽に食べられるトマト品種「千恋」。新しい市場を開拓する品種である。今後の展開に期待したい。

取材協力/タキイ種苗(株) 取材・写真/御園英伸

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