農耕と園藝 online カルチべ

生産から流通まで、
農家によりそうWEBサイト

お役立ちリンク集~カルチペディア~
新品種発表会

2023年 タキイ夏季農場見学会リポート② 【単為結果品種ナス PCシリーズ】

公開日:2023.11.11 更新日: 2023.11.28

2023年7月4、5日の両日に渡り、滋賀県湖南市にあるタキイ種苗(株)研究農場にて、タキイ夏季農場見学会が開催された。品目別に分けてお伝えする今回はナス編。

単為結果ナス「PCお竜(りょう)」の開発経緯

単為結果ナス「PCお竜(おりょう)」の開発経緯についてナス担当の河西さんに伺った。

「国内の促成ナス、冬春のナスの最大の産地は高知県です。高知県では、他県ではあまり見られないようなナスの栽培方法をされております。高知県は、他県に比べ冬も日照量があるので、軒が低い小さなハウスの中で無加温で冬越しされる生産者がいらっしゃいます。夕方は早めにハウスを閉め、ハウスの中の温度や湿度を上げて夜を迎えると、ナスの茎が伸びでしまいます。その様な栽培様式・ハウス環境ですので、高知県の生産者は、節間が詰まって、草丈が低い特性の品種を使わないと、現地の栽培に適応しないのです」と河西さん。

そのような栽培環境で、一般的な長卵系ナス品種を使うと、節間が伸び、軒の低いハウスの天井につかえてしまうそうだ。同環境の下、『PCお竜』であると、太い側枝が良く出るので、横方向に全体に広がりながら、ちょっとずつ上に伸びていくそうだ。

「ナスの栽培の場合、吊ってある主枝に花は着きますが、側枝にも花が着きます。花数が多くなるということですから、果実もたくさんなります。側枝や、側枝になった果実の方に養分が回るので、草丈が低い状態に保たれます。果実数は一時に多くなるので、ちょっと小さめで収穫して、数でこなしていく、というのが高知の方の栽培です」

普通の長卵系のナスは1つ100g程度で収穫するのだが、高知では、75g~80gの、やや小さめで収穫する。そうすると400gパックの袋に5個入れて丁度良い感じになるそうだ。

「高知県特有の栽培様式を好んで作ってこられた生産者が、草丈の高い品種を使うと、実の成り方がちょっと物足りない、という意見が見られるので、高知の生産者専用に『PCお竜』を開発しました。もともとナス品種『竜馬』を作って頂いていたのですが、その作付けに対して『PCお竜』を用意しています。坂本竜馬さんの奥さんが『お竜』さんで、京都出身でもあるのでちょうどいいかなと思ってます。『竜馬』にくらべて、『PCお竜』は樹勢もおとなしくて、おしとやかなので(笑)。『お竜』と名前を付けて頂くほど、高知の生産者には愛着を持って育てて頂いております」

次ページは「PC鶴丸」と単為結果性品種導入のメリットについてリポート

1 2

この記事をシェア