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ドローン空撮と人工知能を取り入れて規格外野菜を減らせるか?!

公開日:2023.12.15

農作物にはそれぞれ規格が設定されており、生産者は規格に適う農作物を生産することを求められます。しかし、どんなに均質な栽培を心がけていても、同じ圃場内で土壌や気象は微妙に異なり、生育にばらつきが生じます。そうした圃場で機械を用いて一斉に収穫しようとすると規格外野菜が出るのは避けられません。

そこで東京大学と千葉大学の研究グループはドローンと人工知能を活用して、規格外の野菜を減らす技術の開発に取り組みました。

イラスト/坂木浩子

圃場内で育つすべての作物の生育状況を把握して、適切なタイミングで収穫すれば、収入を最大化できるはずですが、広大な圃場に植わる膨大な数の作物の生育状況を生産者が個々に把握することは困難です。研究グループはブロッコリーを対象に圃場の上空を飛ばしたドローンが撮影した空撮データから、ブロッコリー全株のサイズを推定。今後、どのように成長していくかを予測できる生育モデルと、気象予報データを組み合わせて、約10日後までのブロッコリーのサイズを予測するシステムを開発しました。

このシステムが十分に機能すれば、株ごとに最適な時期に収穫でき、大きくなりすぎて規格外になってしまうことを避けられるはずです。研究グループは開発したシステムの有効性を2年間に渡る栽培試験で検証しました。ブロッコリーが育つ圃場で定期的にドローン空撮を行い、全個体のサイズを自動で推定。同時に520個体のブロッコリーの花蕾サイズを手作業で測定し、モデルの推定精度を検証したところ、高い精度でサイズを推定できることが確認されました。同時に約10日後までのサイズの変化も予測でも高精度の予測が可能なことも分かりました。

さらにブロッコリーのサイズ変化と、サイズごとの価格を組み合わせて、全個体を一度に収穫した場合の総出荷価格を日ごとに算出したところ、収穫が1日ずれるだけで、規格外のブロッコリーが最大5%増え、収入が20%も減ることが明らかになりました。このシステムはキャベツやハクサイなどの様々な露地野菜に応用できるため、実用化されて広く普及すれば、規格外野菜を減らし、収入の向上に役立てられると期待されます。

文/斉藤勝司

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