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【関西 野菜】ミズナ

公開日:2023.12.29
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

寒くなってくると鍋ものが食べたくなる、というのは日本人なら地域や年齢などを問わずに共通なことのようだ。

では「最も食べられている鍋料理は何だと思いますか?」という質問をすると、たいていの人は寄せ鍋や水炊きなどをイメージするようだが、実際にはおでんとすき焼きが2トップなのだそうだ。

これを聞くと「そんなにすき焼きとかおでんって、家で頻繁にするかなあ」という人も多いようなのだが、一人暮らしや老夫婦二人だけなので、家で寄せ鍋など皆で食卓を囲むスタイルの鍋は食べない、という家庭も増えているようだ。

おでんなら好きな具材だけを取り分けて食べられるし、鍋ごと残しておいて数日に分けて食べられる、またはコンビニでも単品で売っている、ということもあり、ここ10年くらいはおでんがずっとナンバー1となっているようだ。

ではすき焼きはというと、鍋料理でもあるのだが焼肉や鉄板焼きなどと同じく、ちょっとぜいたくに牛肉を食べたいと思ったときに手っ取り早く料理できるのがすき焼きなので根強い人気があるようだ。

とはいえ、やはり秋から冬になると水炊きや寄せ鍋に代表される皆で食卓を囲んで食べる鍋料理が食べたくなるというのは変わらず、量販店でも鍋コーナーが作られて、キノコやハクサイ、白ネギなどが棚を埋め尽くす。

最近は「〇〇鍋のもと」のようなレトルトの鍋用調味料なども増えており、チゲ鍋、トマト鍋などその種類も多岐にわたるから、マンネリを避けるために定番の寄せ鍋や水炊きの頻度が減っているのかもしれない。

料理をする側からしても基本的には材料を切るだけなので楽だから家庭で鍋料理が登場する頻度は増えており、コロナ禍で巣篭り需要が増えたのをきっかけに、外食よりも家食が増えたことから冬場の鍋食材の需要も一気に増えたようだ。

野菜のなかで鍋食材の定番と言えばハクサイ、白ネギ、キノコ類だが、地域によってはご当地鍋に欠かせない食材もある。

宮城の仙台ならセリ鍋にセリの根も一緒に入れて食べる。山形の山菜鍋にはワラビやミズなどの山菜が、秋田のきりたんぽ鍋にはゴボウやセリが定番のようだ。福岡の博多もつ鍋にはキャベツが欠かせないし、常夜(じょうや)鍋はご当地鍋ではないが昆布だしに日本酒を入れた豚肉の鍋でホウレンソウが必須だ。

関西だとハリハリ鍋というものがある。古くはクジラの尾の肉やコロと呼ばれる皮の部分を入れた鍋だったようで、野菜にはミズナが使われた。

歯ごたえのあるミズナを食べるときにハリハリという音がすることから名づけられたらしく、今ではクジラ肉はほとんど使われることはないが、豚バラ肉が用いられることが多く、やはりミズナは欠かせない。

今のミズナはホウレンソウやコマツナのように200gくらいの細い束が袋に入れられたものが主流だが、昔はミズナと言えばハクサイの1玉と同じくらいの大きな株が当たり前だった。繊維も太くて生で食べるには少し硬い感じがしたように記憶している。

袋入りで売られているサイズのミズナも、株間を広くとって畑で大きくなるまで育てれば大きな株になるのだが、今は水耕栽培も多く若どりしたものを袋に入れて出荷されており、大きな株のミズナは市場でも見かけなくなった。昔の株のミズナの用途は鍋か漬物であったが、今はサラダやお浸しなどの用途のほうが多いようだ。

京都の壬生という地域が名前の由来となっている京野菜の壬生菜は、葉にミズナのようなギザギザの切れ込みがなく丸い形状をしている。歴史ある京都の伝統野菜だからこちらが原種かと思いきや、壬生菜はミズナの変異種とされている。古い書物によると、もともとはミズナと同じように葉にギザギザの切れ込みがあったようで壬生で栽培を続けているうちにカブラと交雑して突然変異で葉が丸くなったもので、漬物にすると歯触りが良く、漬けたときの見栄えも良いことから定着していったようである。

ミズナの変異種である壬生菜。京都の伝統野菜として古くから知られ、その名は京都の壬生地区で栽培されていたことに由来する。鍋物はもちろん、独特の辛味があることから漬物に向いている。
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