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【関西 果実】紅まどんな

公開日:2024.1.18 更新日: 2024.1.31
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

一般に流通しているカンキツ類はとても種類が多く、各地の果樹試験場などで人工的に交雑が行われ、次々と新品種が生まれている。新品種を開発することを育種と呼ぶが、ひとことに育種と言っても簡単ではない。異なる品種の個体のめしべに花粉を受粉させてなった実から種子を採り、それを育てて野菜や果物として利用価値があるかを見定めるわけだが、種子を播いてから実を収穫して種子を採るまでの期間が短い野菜でも最低7~8年はかかると言われている。

育種の目的は野菜と果実では若干違いがあるようだ。どちらも、より食味の良いものを追求するという目的はあるのだが、野菜の場合には耐病性や収量、色や形状、棚持ちなど食味よりも生産性や見た目の品質が重視される傾向がある。一方、果樹は色や形状などの見た目も重視されるが、食べておいしいかどうかということが最も重視されるポイントになる。

しかし果樹は1年1作で、種子が採れてもそこから樹になり実がなるまで品目によっては5年以上かかるものもあるため、育種には非常に長い年月を要するのだ。しかも交雑によって新品種が生まれる確率は0.04%程度というのだから気の遠くなる話だ。

野菜は新品種が誕生すれば、もとの品種の掛け合わせによって種子を採れば良いだけなのだが、果樹の場合は新品種が誕生した後は枝を切って苗木を作って植えたり、同類の他の樹の幹に接木をして増やしていく。それでも生産者が商業利用できるまでには3年以上かかる。誕生時には「これは良い」と思ったものでも、世に出る頃には世間の流行やニーズからは遠のいてしまっているということも少なくない。果樹の新品種が誕生してヒットするのは宝くじに当たるようなものだ。

そんな果樹のなかで、この「宝くじ」に当たったと言える品種がある。愛媛県のカンキツ「紅まどんな」だ。

愛媛県農林水産研究所果樹研究センター(当時の名称は「愛媛県立果樹試験場」)で、甘みが強くバランスの取れた適度な酸味を持つ「南香」と、果汁が多くジューシーで果肉がやわらかい「天草」の交配により1990年から育成がはじまり、2005年に「愛媛果試第28号」として品種登録され、2007年に全農えひめによって「紅まどんな」として商標登録された。

愛媛県内のみで栽培が認められており、このなかで糖度10.5度以上、酸度1.2%未満という基準をクリアーしたものから、さらに外観にも優れたものを選別し、愛媛県内のJAを通じて出荷されたものだけが「紅まどんな」を名乗ることができる。

甘酸のバランスが取れているだけでなく、果肉がやわらかいのにはじける感じで「ゼリーのよう」と表現されることが多いが、噛むとコクのある果汁とオレンジ系の何とも言えない良い香りが口のなかいっぱいに広がるので、もう1個、あと1個とついつい手が伸びてしまう。

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