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ジャガイモの種イモ生産を支える異常株検出支援システムの開発

公開日:2024.3.22

ジャガイモを安定して生産するには、質の良い種イモの供給が欠かせません。しかし農業従事者の高齢化の影響もあって、近年、種イモの生産者、圃場の面積は減少しつづけており、種イモ生産の担い手の育成が急務となっています。

種イモの生産では病気に感染した異常株を確実に抜き取ることが求められるものの、ジャガイモにあらわれた症状から異常株かどうかを判定することは決して簡単なことではなく、担い手を育成する上で大きな課題になっています。農研機構では熟練した種イモ生産者の知識や経験を参考に、異常株を検出する人工知能(AI)と、それを組み込んだ圃場管理車両の開発を進めています。

イラスト/坂木浩子

ソフトウェアの開発では、2023年度にジャガイモ品種「トヨシロ」の異常株検出モデルを開発済みで、植物防疫法で定められている罹病株の抜き残し0.1%以内に収めるために設定した「1回あたりの検出率83%」を、4回の検出で達成しています。

ただし同じ病気でも品種によって症状は異なることから、「トヨシロ」で異常株を検出できたAIをそのまま他品種に流用することはできません。北海道での作付け面積が広く、ジャガイモシストセンチュウに対する抵抗性を持つ「コナヒメ」、「キタアカリ」用のモデルの開発が進められています。

ハードウェアについては圃場管理車両が開発中で、異常株の検出に日差しが影響することから日照量を調節する日よけ装置などの改良が進行中です。今後は異常株検出システムを搭載した圃場管理車両を農研機構の種苗管理センターで試していくことになっており、本格的に実用化になればジャガイモの種イモ生産を力強く支援してくれることでしょう。

文/斉藤勝司

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