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重要病害の茎枯病に対する抵抗性を持つアスパラガス新品種「あすたまJ」を育成

公開日:2024.3.1 更新日: 2024.2.22

安定して農業生産を行うため病害を確実に防除することが求められるとはいえ、作物が抵抗性を持たないと防除が難しくなります。例えば、アスパラガの露地栽培で発生する茎枯病は病原菌の感染によって茎全体が枯れ、大幅な減収に追い込まれます。

アスパラガスは10年以上、収穫し続けられるため、一度、茎枯病が発生すると、その影響は長期に及びます。抵抗性品種の育成が求められるも、アスパラガスの種内に茎枯病の抵抗性を持つ品種や育種素材が存在せず、これまで抵抗性品種の育成ができないでいました。

イラスト/坂木浩子

ところが、近年、アスパラガスと同じクサスギカズラ(アスパラガス)属に分類されているハマタマボウキが茎枯病の抵抗性を持ち、アスパラガスとの交雑が可能なことが明らかになりました。農研機構、香川大学、東北大学、九州大学の研究グループは、アスパラガスとハマタマボウキの交雑による育種に取り組み、茎枯病に対する抵抗性を持つアスパラガス新品種「あすたまJ」の育成に成功しました。

茎枯病が発生している圃場において、殺菌剤を散布することなく栽培試験を行ったところ、従来品種が衰弱したのに対して、「あすたまJ」は複数年に渡って旺盛に生育することを確認。春どり露地栽培では、従来品種の収量がほぼ皆無だったのに対して、「あすたまJ」は高い収量性を示しました。

ただし「あすたまJ」は従来品種に比べて食用となる若茎が細い傾向があります。市場では太いアスパラガスが求められるため、研究グループは「あすたまJ」の若茎の特徴を生かした需要の創出に取り組んでいくことになっており、2028年頃の種苗の供給が目指されています。

文/斉藤勝司

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