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直挿し、挿苗

公開日:2019.2.28 更新日: 2021.4.13

挿し木繁殖による苗の生産では、挿し穂が発根と発芽をして個体として独立した生活ができるようにする育苗過程を経て、挿し木苗とするのが一般的である。しかし育苗しないで挿し木苗とする作物もあり、この場合は挿し穂を栽培圃場に直接に挿す。

この栽培圃場への直接の挿し木直挿しまたは挿苗といい、この栽培法を直挿し栽培という。

挿苗はサツマイモの栽培で用いられてきた用語であるが、他の作物では挿し穂を固有の呼び名にして、その挿し穂を植えると表現している。
挿苗による栽培方法が新たに確立したキクの栽培では、挿し木苗による従来の栽培と区別して直挿し栽培という。挿苗や直挿しでは挿し穂の活着を良くするために、発根や発芽を促す前処理を行うことが多い。以下に例を挙げる。

サツマイモ
イモから発生した蔓を先端から約30 cmで切り、7節7葉を持つ挿し穂とする。
挿苗には水平植え、舟底植え、直立植え、斜め植え、釣針植えなどがあり、3節程度を土に挿し込む。
挿し穂苗は日の当たらない場所に3、4日置いて、不定根を少し発生させて植える。この苗の取り置きは挿し穂の発根を促す前処理になる。

サトウキビ
成熟したサトウキビの茎を30 cmに切って節のある挿し穂とするとき、これを茎節苗という。茎の節に側芽があるので、この側芽を発芽伸長させる。
挿苗は夏植えと春植えで行い、深さ30 cm位の植え溝の底に茎節苗を配置し、覆土は3.5㎝とする。
セル成型苗や側枝苗の鉢苗生産が行われているので、挿苗は直挿し栽培と呼ばれるようになるかもしれない。

キャッサバ
約20 cm長の茎を挿し穂にし、地中に直立か斜めに挿し、地上には少なくとも3節を残す。
熱帯では1年後にダリアの球根に似たイモが収穫できる。イモのデンプンはタピオカと呼ぶ。

タラノキ
挿し穂となる根を種根といい、根挿しの挿苗を行う。

セリ
田ゼリの栽培では、種ゼリのランナーを切らずに長いまま並べるか、1~2節に切り分けて水田にばらまくが、これは茎挿しによる挿苗であり、この挿し穂を種ゼリという。
挿苗前には発酵と呼ぶ種ゼリの萌芽、発根処理を行う。すなわち種ゼリ用の親株をランナー付きで束ねて積み上げ、ぬれむしろで覆う。
積んだ親株へは朝夕の散水と途中での積み換えを行い、葉が黄変し発根を始めたら上下を積み換え、根が1cm位伸びたときに挿し穂にする。

キク
輪ギクとスプレーギクで直挿し栽培が行われる。6~10 cm長の挿し穂を水揚げし、発根促進剤で処理した後、7℃で2週間程度貯蔵した後に本圃に挿苗する。
挿し穂の基部2、3cmを畝土壌に挿し込み、十分潅水した後、透明ポリフィルムや不織布でべた掛けする。
挿し穂の冷蔵は発根促進効果を持つ。

『農耕と園藝』2015年3月号より転載

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