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切り花の乾式輸送と湿式輸送

公開日:2019.3.28 更新日: 2021.4.26

切り花が出荷や配送で運搬されているとき、切り花の置かれている状態は切り口から水を吸収できる場合とできない場合に分かれ、前者の輸送形態を湿式輸送と、後者を乾式輸送と呼んでいる。

乾式輸送

乾式輸送では輸送中の切り花には吸水させるための手立てをとらずに、通常の商品と同じように段ボール箱に詰めて輸送する。

乾式では切り花の水分損失が大きく、輸送後に水を再吸収させる水揚げの能力が低下する。
切り花の品質と鮮度保持を図り、観賞可能期間である日持ち性を保証するには、低温で流通させる湿式輸送が優れている。

しかし吸水させると開花が急速に進行するユリグラジオラスのような品目には、乾式の方が輸送中の切り花の成長を抑えるので望ましい。
乾式輸送の切り花は横詰め状態で輸送するが、茎が屈曲しやすいグラジオラス、ガーベラ、キンギョソウなどの品目では縦置きでも輸送される。

湿式輸送

切り花の切り口を溶液に浸して水を吸収できる状態にして輸送する方法を湿式輸送という。
湿式輸送にはバケツ(バケット)に水を入れて、これに切り花を立てて入れ輸送するバケット輸送と、切り花個体の切り口を給水資材で包んで、小型容器や袋などに挿して吸水させるピックル輸送とがある。
ピックルはゲル化剤などの給水資材を意味するが、それを入れた容器の保水キャップを一緒にしてピックルないしピックと呼んでいる。

乾式輸送では水ストレスを受けやすく、その後の水揚げでも吸水がむつかしい品目のバラ、シュッコンカスミソウ、ハイブリッド・スターチス、カンパニュラなどでは湿式輸送でなければならない。
またピックル輸送では段ボールへの横詰めができ、輸送効率が乾式輸送と同等になるが、花が開き過ぎたり、花首が上方に曲がるなどのように成長が進行するので、低温条件下での輸送が必須条件となる。

切り花は生きているので、その品質を保持するためには乾式輸送であれ湿式輸送であれ、両者ともに低温条件下で行われ、流通の一連の過程が低温で連続していること、すなわちコールドチェーンで結ばれていることが大切である。
設定温度は温帯性の品目では10℃以下、熱帯・亜熱帯性の品目では10~15℃の範囲であることが望ましい。

切り花の輸出入は航空機による輸送が主であり、航空機ではバケット輸送が禁止されているので、乾式輸送が行われている。
低緯度地帯の高原で大規模に栽培され、大量に生産されるバラ、カーネーションなどは、この輸送方式に適合するように品種改良が行われ、蕾開花が可能であって、早い生育段階での切り前で採花できるものが採用されている。

『農耕と園藝』2015年11月号より転載

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