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花色変化

公開日:2019.4.25 更新日: 2021.4.26

植物が開花している間に、花粉粒を運ぶ送粉と雌しべの柱頭または胚珠に付着させる受粉が行われるが、この送受粉の媒介者を送粉者といい、送粉者が動物種である時、動物媒という。
送受粉の役目を終えた花は、種子植物では一般的には早々に落下する。

送受粉の役目を終えた花が、落下せずに花冠の色を変えて咲き続ける現象があり、これを「花色変化」という。
花の色という時には、花序全体や色彩の目立つ花弁や花被片、および花序に舌状花と管状花がある時は舌状花の花弁の色を指すことが多い。
また、花色変化の多くは、花冠が完全に開いた状態のまま起こるため、老化による退色とは区別される。

例えば、スイフヨウ(酔芙蓉)は開花時の白花が、時間の経過とともに赤くなる。
花バスの品種、スイヒレン(酔妃蓮)では開花初期は全体にピンク色をしているが、次第に白となり、先端だけにピンク色が残る。
バラでは品種チャールストンの花色変化がよく知られ、咲き始めは黄色で、徐々にオレンジ色から赤色へと赤みが増し、終期には濃い赤色に変化する。咲き始めのオレンジ色の花弁にはカロテノイド系色素が含まれ、開花の進行にともなってアントシアニンの生合成が進んで濃い赤色に変わる。
ランタナ(和名は「七変化」)では黄色からオレンジ色に、そして赤色へ変わる。
ニオイバンマツリでは紫から白色へ変わり、開花盛期には2色咲きのようになる。
つる性低木のツルハナナスでは、薄紫の花色から白色に、ホタルカズラでは、紫から青へ変化する。
クレオメは白または桃の花色が濃淡に変化し、つぼみと咲き始めは濃色であり、夕方には薄くなり、花序を見ると咲き分けしているように見える。
ハコネウツギは開花の進行とともに白色から桃色へ、そして赤色になる。
ニシキウツギ(二色空木)では開花始めの花色は淡黄白色で、後に紅色に変わる。
スイカズラの花色は白から黄色になるので、金銀花の呼び名もある。
トベラの花色は白から黄色に変わる。

ボケでは開花した時の花の色が数日で変わる品種や、1週間以上かけて徐々に変わる品種などがあり、これらを「色変化品種群」と分類している。

観賞用作物で花色が変わる品種は、スイフヨウやスイヒレンのように独自の名前を持つものの他は、変化咲き品種、色変わり品種、複色品種などに分類している。

花色変化した後の花においては、送粉者の餌となる蜜や花粉の生産を終えているので、受粉できない古い花を維持するのは何らかの生態的役割を持っていると考えられている。
その1つが、花が多数あることで花全体を大きく目立たせ、送粉者たちを呼び寄せるのに役立っているとされる。
また、受粉に適した時期の花とそうでない花を、花色の違いによって花粉媒介者に教えることで、送粉者を未受粉の花に誘導する効果があることなどが挙げられている。

『農耕と園藝』2018年11月号より転載

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