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カルチべ取材班 現場参上

香りと味が引き立つそばにこだわる!「ふくいそばを食す会」で出逢った在来種の魅力

公開日:2019.3.20 更新日: 2019.3.27

本日のカルチベ取材班は、隠れたそば処を全国にご紹介するべく、東京都内・神楽坂にある「九頭龍蕎麦 本店」にて開催されたとあるイベントに参上しました!

今回、みなさまに知っていただきたいそばの名産地は、福井県。

「香り高く味わい深い福井のそば」の背景や、実際の風味を堪能するため、福井そばルネッサンス推進実行委員会・食環境ジャーナリストの金丸弘美さんご協力の元、在来種にこだわる「福井県」のそばをご紹介したいと思います!

■「ふくいそば」の歴史

福井県の総面積は4,190k㎡、人口は約79万人で、日本海沿岸のほぼ中央に位置しています。

夏は気温が高く、冬は降雪が多いため日本海側気候に属します。

また、雪解け水の恩恵として、古くより、米作りが盛んに行われています。地域性にも恵まれており、福井、長野、茨城県などのそば産地が並び、良質のそばがとれるエリアと言われています。

もともと、そば栽培の歴史は空いた農地で小規模に作付される程度でしたが、国の主導によって徐々に広がっていきました。

そして、米の生産調整が開始されてからというもの、そばは転作作物として面積を増やし、地域の特産品として認知されるようになりました。

「ふくいそば」の概要について語って下さった(有)斉藤製粉所の斉藤稔さん。

粒揃いの在来種

では、そもそも福井県の在来種にはどのような種類があるのでしょうか。

古くから地域に引き継がれ、福井県を代表する産地には下記の4種があります。

その4つの土地で育てられた福井県ならではの在来種をご紹介します。

<粒揃いの在来4種>

「大野在来(おおのざいらい)」 小粒で風味が強く、香りも良い優れもの

「丸岡在来(まるおかざいらい)」 粘りが良く、薄青緑がかった甘皮が特徴

「今庄在来(いまじょうざいらい)」 昼夜の気温差が激しい風土で育った極小粒系

「美山 南宮地在来(みやま みなみみやじざいらい)」 育ちが早く、粒も大きく、極めて高い香りを持つ

 

 

福井そばは、改良品種よりも希少であり、香りや味に深みがあるのが特徴です。

確固たる信念に裏打ちされた自信と、福井の誇りを持って育てられた在来種は、腰よく艶よく、芳醇な香りを楽しむのに最適といわれています。

収穫したそばの実は、昔ながらの石臼挽きでそば粉にし、ゆっくりと粉を練りながら石臼で挽きます。

これは「挽きぐるみ」と呼ばれる製法で、福井県ならでは。そばの味と香りを逃がしません。

現代では石臼をつくる職人も数が減っていて、おいしいそばづくりの鍵を握る製法を維持するための努力も一筋縄ではいかないそう。

しかし、このこだわりが昔から続くおいしさを守り続けているのです。

福井そばルネッサンス推進実行委員会会長である宝山栄一さんは、「福井のそばはワインに例えるならブルゴーニュ、コーヒーで言えばキリマンジャロだと思っている」と語ってくれました。

会場は都内神楽坂の駅から程近い「九頭龍蕎麦本店」。
この店のオーナーである原崎衛さんは、店の名前である「九頭龍」は福井県にある川の名前が由来しているということを教えてくれました。

福井そばを五感で感じる

さて、今回は在来種の風味をたっぷり堪能するために、ざるそばだけでなく越前おろしそばもいただけるとのこと。

また、実際にそばを試食する前に、在来種本来の旨みを実感するべく、そばがきの試食及びそばがきづくりを体験させていただきました!

職人がつくった在来種のそばがき。香りが非常に良く、まずは何もつけずにいただきます。

 

香り高さが求められるそばがきですが、実は手早く混ぜ合わせることがコツ。

素早い手付きで練り合わせる技術が必要です。

カルチベ取材班も果敢に挑戦しましたが、簡単そうに見えて実に難しく、なかなか粘りが出ません! 熟練のそば職人のそれには到底適わないと感じたのでした。

さて、そばがきづくりを体験したあとは、いよいよざるそばと越前おろしそばの試食です。

まずはざるそば。そのままの味わいを感じたかったので、一口目は何もつけずに口へ運びます。

途端に各席から「おいしい!」「これは旨いね~!」と絶賛の嵐。

はっとするような鼻に抜ける香ばしさと共に、ほのかな甘みが口いっぱいに広がります。

細めに切ったざる蕎麦の麺はのど越しが良く、さっぱりとした味わい。日本酒にも良く合う。

次に、県内で最もポピュラーな食べ方の越前おろしそば。「ダイコンおろし」「ネギ」「鰹節」を乗せ、そばつゆをかけます。

そばつゆには、サバやウルメイワシ、カツオ節などが多く、他に昆布やシイタケを使う店もあるといいます。

「飲み干せるおいしさにこだわったつゆ」であることが重要なのです。

辛味のあるダイコンと一緒に食べることで、在来種の深い味わいが引き立ち、だしの風味を活かしためんつゆや薬味の鰹節との相性は抜群です。

福井県の方々は口を揃えて「もっと辛味の強いダイコンおろしを使ったおいしいそばもたくさんありますよ」と教えてくれました。

越前おろしそばはネギや鰹節、辛味の強いダイコンおろしでさっぱりといただくのが福井流。
昔から生産量の多かった組み合わせということもポイントです。

また、今回はそばを堪能すると共に、福井名産のお料理もご紹介いただきました。

写真は、左上から甘みが強く堅さと粘りが特徴の「サトイモの煮つけ」、玄そばの殻を外した抜き実入りの「まぐろの山かけ」、塩と米酢だけで楽しめる「小鯛の笹漬け」、冬の味覚の王者である「越前ガニの握り寿司」です。

悪天候にも負けない在来種栽培方法の確立は?

さて、そんな福井そばですが、元来、そば自体が繊細で育てるのに根気の要る作物。

福井の在来種も、播種直後の強い雨や生育期間の長雨などによって湿害を受けることがたびたびあるとのこと。

しかし、雨風に強い品種の栽培が求められるものの、現在育種は行われていないそう。

長年改良には着手せず、伝統的品種を守り続けるためには、どのように栽培が進められているのでしょうか。

また、今後も方針を変えることはないのでしょうか。

「福井の人間は頑固なので、私らのやり方で、やりたいようにやって行きたいのです」

そう教えてくれた高山さん。これまで、そばを栽培する上で気候変動や自然災害に備えた品種改良は行っておらず、それはこの先も変わらないとのこと。

ただひたすらに県の名産を守りぬくことを何よりも大切にしているようでした。

「では、栽培環境への対策は?」との質問に、「収穫期に台風が来た2017年度は栽培環境に影響されて、販売価格も高騰しました。」

と語ってくれたのは、福井県福井米戦略課の山影祐也さん。ここ最近の大型台風や、度重なるゲリラ豪雨への対策などをより詳しく訊いてみました。

昨今の自然災害に対しては、国の助成金などによって畝の整備や排水溝を増設する、転作で6条麦を栽培し乾燥した土壌をそばの育成に使用するなど、栽培環境を整え、対応しているようです。

また、多くの農家さんを困らせている実情を何とかしようと福井県農業試験場が播種機メーカーと共同して開発したのが、「小畦立て播種技術」です。

小畦立て播種技術は、種子の周囲排水溝を作り、通常より種子を高い位置に播種することにより、種子が長時間水没するリスクを低減し、播種直後の湿害を回避軽減することができます。これらの対策により、2018年度は前年の低収量を乗り越え、倍近くの収量が見込めています。

さらに装置は既存の播種機のアタッチメントを取り替えるだけで手軽に導入することができるという優れもの。

これによって、初期成育の向上と立ち枯れ性病害の低減が適い、収量の改善、特に排水の悪い圃場、収量水準が低い圃場などでは効果が出ているとのことでした。

福井そばに携わる方々の在来種との向き合い方とは、「自分たちにとって重要なことは一体何なのかを悟り、知恵を持って在来種の栽培・保全への取り組みを極める」こと。

カルチベ取材班の目に映ったそれはまるで、福井県の銘酒「一本義」そのものに思えました。

「九頭龍蕎麦 本店」の店内に並ぶ福井県のオススメ地酒。 そばとも相性の良い銘酒が豊富に取り揃えられています。

福井そばのこれからの展望

今回、改めて福井そばの歴史について学び、味わいを自らの舌で確かめ、さまざまなお話を伺って、福井県の方々が持つ強い「在来種愛」を身に沁みて感じました。

「おいしさを育てる」という姿勢には、改良を重ねて品種の良さを引き出すというアプローチもありますが、変わらぬ原種の味わいを守り続けることや、そのための周辺環境を保持することも含まれるのだと思います。

福井そばは他県と比べて、幅広い知名度を持っているわけではありません。

しかし、福井の方々の愛情を一身に受けて育った、香り高いそばの味わいが、もっともっと多くの人の元へと届いていくことを希わずにはいられませんでした。

福井そばルネッサンス推進実行委員会がまとめた、 『「ふくいそば」の話』と『県産そばPRリーフレット』。

「香り高く味わい深いおいしいそば」を追求するべく、ふくいそばへの熱い思いはさまざまな人の手によって、この先も脈々と受け継がれていきます。

それでは次回の「カルチベ取材班 現場参上」もぜひご覧くださいませ!

 

 

協力/福井そばルネッサンス推進実行委員会
福井県農林水産部福井米戦略課
九頭龍蕎麦本店 (有)斉藤製粉所
食環境ジャーナリスト金丸弘美
  取材・文/編集部

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