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カルチべ取材班 現場参上

多品目栽培&アイデアあふれる商品群で販路をつかめ!

公開日:2019.3.18 更新日: 2019.3.19

2017年秋に出版され、売上を伸ばし続けている書籍『多品目少量栽培で成功できる!! 小さな農業の稼ぎ方』(誠文堂新光社)。様々な品目・品種を細かく作付し、自社で加工・販売する営農スタイルに注目が集まっている。カルチべ取材班は、著者である中村敏樹さんの圃場へうかがい、多品目栽培で稼ぐ方法を取材した。

高松空港から車で10分。高松市郊外の住宅地に「コスモファーム」の農場がある。 香川は災害も少なく気候も温暖だが、47都道県で最も面積が狭い県でもある。

「農業を営むには、土地が少ないんです」

空港まで迎えに来てくれた(有)コスモファーム代表の中村敏樹さんは、車を走らせながらそう言った。実際、中村さんの農場も自宅を中心に、8~9aの圃場が9ヵ所点在するかたちだ。

しかしその「土地の狭さ」を逆手にとって、中村さんは徹底した「多品目少量生産」と「6次産業化」に着手。生産も加工も軌道に乗せている。

「多品目少量生産」最優先課題は販路の確保

中村さんが香川で農業を始めたのは、2010年。大阪の建築デザイン事務所に勤めていた息子の裕太郎さんが、就農を希望したのがきっかけだった。

コスモファーム代表・中村敏樹さん(右)と栽培に取り組む息子の裕太郎さん(左)。

長野の農家に生まれ、香川大学農学部を卒業した中村さんは、大学で知り合った郁子さんと結婚。香川で生活を始めた。

香川県内の花の栽培指導などを経て、全国規模で農産物の栽培指導を行うようになり、その後は食関連企業のコンサルタント、野菜ソムリエ講師など活躍の場を広げていく。香川と東京、さらには全国を飛び回る生活を30年続けている。

そんな中村さんだが、自社農場を持ちたいという夢はずっとあったという。過去に福島、千葉、三浦で、仕事仲間らと農場を持った経験はあるが、本格的な生産に乗り出すまでは至らなかった。しかし裕太郎さんが年間を通して実作業に携われるなら、夢を実現することができる。

この時中村さんは、「多品目少量生産」でいくと決めていた。裕太郎さんも異存はなかった。

しかし多品目でやる以上、JAや市場への流通は不可能になる。規格が揃っているものしか受け入れてもらえないからだ。多品目ではむしろ、大きさや形が不ぞろいの野菜をうまく利用することが求められる。

これも、中村さんにとっては望むところだった。市場を通さなければ、価格を自分で決めることができる。旬のものを生産できる。珍しい野菜を作るという未知の魅力がある。作業は大変になるし、勉強しなければならないことも増えるが、やり方次第で可能性は広がるはずだ。

課題は、「販路の確保」だった。その解決策として、加工=6次産業化が必要となる。これについては後ほど紹介しよう。

年間で15品目250品種多品目少量生産の底力

就農を希望したものの、農業経験のない裕太郎さん。中村さんが付ききりで指導してくれるわけでもなく、全国を飛び回る仕事ぶりは変わらない。その間、試行錯誤を繰り返しながらの農業が始まった。

それでも1年目から野菜100品種を扱ったというから努力の人である。7年目の現在は、年間を通して1516品目、250品種を扱うまでに成長した。

例えばナスなら「クララ」「リスタータデカンデリア」「ヒスイナス」「フェアリーテイル」「ヴィオレッタ」。カブなら「黄カブ」「アヤメユキ」「カナマチコカブ」「モモノスケ」。ダイコンなら「クロマル」「クロナガ」「紅芯」「紅しぐれ」「ビタミン」「紅くるり」など。珍しい品種も積極的に取り入れている。

ナスといっても様々な品種を栽培する。一般的なスーパーではあまり見かけないような海外の品種なども揃える。見た目も楽しく食味も比較でき、ファーマーズマーケットではすぐに完売する。

中村さんの自宅に到着したところで、車道路に面した5aの圃場に案内していただいた。土地も台形だが、畝が中央から左右に放射状に広がっていた。圃場自体が一枚の葉で、畝が葉脈のようにも見える。

扇状に畝が作られている圃場。ケール、黒キャベツ、スイスチャード、ブロッコリー、コールラビ、フェンネル、レッドポアロと多品目栽培。

3月に定植したのは7種類。ケール、黒キャベツ、スイスチャード、ブロッコリー、コールラビ、フェンネル、レッドポアロ。葉ものは株ではなくかき菜で収穫・出荷する。これに「トレビス」「トレビーゾ」「ロロロッサ」「アメリカンオークレタス」「モッズストーン」など色鮮やかな品種を組み合わせれば、鮮やかなレタスブーケの完成だ。百貨店などで人気商品となっている。

「多品目少量生産」では、基本「旬」の野菜しか作らない。そのため農薬はほとんど使っていないという。肥料は市販のものも使うが、最近は自社でも作り始めた。バーク材に牛ふん、もみ殻、燻炭を混ぜて寝かせたものを元肥に使用中だ。

多品目ならではのユニークな圃場

道路から奥に入ると8aの圃場がある。まず目につくのが、とう立ちしたカーボロネロ(黒キャベツ)の菜花だ。野菜をとう立ちさせるのはご法度というのが一般常識だが、「菜花にもそれぞれ特徴があって、調理法次第で美味しく食べられます」と中村さん。

黒キャベツもとう立ちしてきたが、焦って抜かずに「菜ばな」として出荷。長く収穫・出荷し続けるアイデアが大切。

カーボロネロの菜花は味が濃い。甘キャベツは菜花も甘い。ケールの菜花は意外とクセがないのだそう。野菜は基本廃棄せず、時期をずらしながら最後まで収穫する。畑を休ませてはもったいないので、収穫が終わったところから順番に定植をしていくのがコスモファームのやり方だ。

隣の圃場には、枯れたナスが並んでいる。そのナスを支柱代わりに、スナップ、キヌサヤ、サトウザヤなど豆類の枝が絡みついているのだ。多品目ならではのアイデアだろう。

春夏作のナスは10月末まで収穫するため、片付ける前に秋冬作のマメの作付けしなければならない。ナスを残したまま株間にマメを植え付け、ナスで使った支柱をそのまま利用する。
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