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カルチべ取材班 現場参上

愛され続ける伝統野菜 「のらぼう菜」が広げる地域の和!

公開日:2019.4.3

本日のカルチベ取材班は、神奈川県・明治大学生田キャンパスに参上いたしました!

今回は、川崎市の伝統野菜である“のらぼう菜”の生産を活発化する目的で開かれた「未来へ紡ぐ のらぼう菜」というワークショップの様子をお届けします!

まずは、キャンパス内の圃場見学会を含めた「のらぼう菜」の普及セミナーに参加。のらぼう菜の知識を身につけた後は、毎年3月にのらぼう菜づくしの料理が提供されるアジアンダイニング「Café&Dining Bar ムビリンゴ」にて、実際にのらぼう菜料理を試食しました。

春を告げる野菜「のらぼう菜」って?

今回の主役である“のらぼう菜”とは、主に川崎市北部菅地区で長い間栽培されていた伝統野菜。周辺住民や関係者の方々には「のらぼう」と呼ばれ親しまれています。他に埼玉県、東京都西部、神奈川県などでも栽培されているそうです。川崎市では、2001年より多摩区と菅地区で栽培。「菅のらぼう菜保存委員会」と協力して、市内ののらぼう菜など20系統の生態について調査をしています。

のらぼう菜は世代を越えて、さまざまな人から愛されている野菜です。昨年には、これまでの共同研究の歩みをまとめた「のらぼう菜栽培マニュアル」を発表。すでに多くの方々が手に取るなど、注目を集めています。

かわさき“のらぼう”プロジェクトのみなさんが作成したのらぼう菜のパンフレット(左)とレシピ集(右)。表紙に描かれた人物は、のらぼう菜を作り続けて70年の髙橋孝次さん。デザインや魅せ方にも愛情とこだわりを感じます。
「かわさき“のらぼう”プロジェクト」のメンバー、清水まゆみさん。 熱いのらぼう愛を形にしながら、活動を続けています。

のらぼう菜の栽培

そんな地域に支えられているのらぼう菜。一体どのようにして栽培するのでしょうか?

まず、のらぼう菜の栽培は9月に種子を播くところから始まります。寒さに強いアブラナ科で、3月の収穫時期、農産直売所にのらぼう菜が並ぶと春の訪れを感じるという人も多いのだとか。

そもそもアブラナ科とは、種子から油をとることが出できる植物だそうで、なかでものらぼう菜はアブラナ科アブラナ属で、西洋菜種の仲間です。他にアブラナ科アブラナ属というと、ハクサイやカブ、コマツナなどが良く知られています。キャベツやブロッコリーなども含まれるので、そう考えると少し身近なイメージが湧いてきますよね。

のらぼう菜に関する座学の様子。講師を務めるのは、明治大学農学部農学科野菜園芸学研究室の柘植一希さん。のらぼう菜の研究論文を執筆している世界でたった一人の研究者です。

では、のらぼう菜のルーツは一体どこにあるのでしょう。

諸説ありますが、のらぼう菜は元来、地中海沿岸の涼しいトルコ高原で生まれ、シベリアや中国、朝鮮半島などを経て日本へ来たといわれています。

明治大学生田キャンパスがある川崎・菅で生まれ菅で育った高橋孝次さん(菅のらぼう菜保存会会長)は、のらぼう菜が寒さに強いのはこのふるさとの気候に由来しているからではないかと考えているそう。ともすれば、種子は遣唐使が日本に持ち帰ったのでしょうか?

菅では古くより、のらぼう菜を栽培していましたが、種子がやってきて、いつ栽培が始まったのか、確かな文献は見つかっておらず、実際のところはわかっていません。

しかし、種子がやってきた時代については、鎌倉時代に源の頼朝の妻である北条政子の妹、元子が稲毛荘(現在の川崎市北部)に嫁いだ時代に嫁入り道具の一つとして持参していたのではないかという言い伝えがあります。古くより日本人に親しまれてきた野菜だったのでしょう。

圃場見学会でも、誰よりものらぼう菜の栽培技術の向上、産地拡大に対する情熱が溢れる様子が伺えた柘植さん。

味と食感が命、のらぼう菜の食味と栄養成分

さて、それでは実際にのらぼう菜はどのような味わいなのでしょうか? その栽培方法から味をイメージすることができます。

のらぼう菜は、「わき芽」を収穫し、「茎の甘さ」を楽しむ野菜。ナバナのような苦味が少なく、茎がとても甘いため、子どもたちにも大人気です。食感の良さから生でポリポリと食べるのが好き、という人がいることも頷けます。

また、栄養も豊富で、カゼ予防や美肌効果も期待できるビタミンC、カルシウムや食物繊維、ビタミンAなどを摂取することができ、糖やアミノ酸の量はナバナよりも多いといわれている野菜なのです。

川崎市では2月末から4月末までがのらぼう菜の収穫時期。生長した側枝を順次収穫していくので、時期によって味や含まれる成分が変わっていくのもユニークな点。分類すると、下記のような味わいの違いを楽しむことができます。

[初期~中期]
糖・アミノ酸ともに多分に含み、非常に濃くしっかりとした味。

[終期]
アミノ酸などの成分は減りますが、より甘みを感じることができる時期。

クセがなく食べやすいのらぼう菜はどんな料理にも馴染むので、和食や洋食、スイーツにもぴったり。ピリ辛の味付けや生食も可、アレンジはまさに自由自在。家庭料理の強い味方になってくれること間違いなしです。

いざ、のらぼう菜実食!

さて、そんなのらぼう菜の味わいを確かめるべく、取材班はのらぼう菜づくしの料理を提供して下さっているアジアンダイニング「Café&Dining Bar ムビリンゴ」さんを直撃!

早速お店に到着すると、百聞は一見にしかずどころか、のらぼう菜の良さを五感で堪能するかの如く、店内はとても良い香りが漂っています……。

のらぼう菜料理を長年研究・提供し続けている大橋ゆりさん。
多彩で美味しいのらぼう菜のレシピを考案し続けています。
前菜のサラダはシャキシャキとした新タマネギの甘みと組み合わさり、まろやかな味わい。ペースト状になったのらぼう菜はラスクとともに。クリームチーズの酸味が、のらぼう菜の甘みと香りを引き立てます。
ほくほくのジャガイモとのらぼう菜がたっぷり入った塩味のコロッケ。初めて食べたのに、どこか懐かしさを感じるほど素材の味が口いっぱいに広がります。
極めつけはのらぼう菜を使ったピザ。茎や葉の刻み方によってさまざまな表情を見せてくれる野菜であることを熟知した、大橋さんのレシピのなかでも最たる逸品。

のらぼう菜の魅力を知るには実際に食べてみるのが一番! ということで、口にしたカルチベ取材班。想像以上の甘みと風味、料理によって姿形を変え続けるバリエーションの豊富さ、なんといってもクセのない食べやすさから、あっという間にのらぼう菜の虜になったのでした。

そして、その味を知ったが最後、「自分でも栽培したい!」という強い気持ちがますます湧き上がってきましたが……。鉢に植えて家庭菜園をするにしても、圃場で一から栽培するにしても、のらぼう菜の栽培方法には何か特別なポイントがあるのでしょうか?

お店の前には「のらぼう菜」の文字を掲げる旗が!かわさき“のらぼう”プロジェクトのメンバーであり、カラーコーディネーターでもある田中龍平さんが手掛けたそうです。

栽培の最大のポイントは「深摘心」と「切り戻し」

「のらぼう菜を栽培するにあたって、やはり最大のポイントは“深摘心”と“切り戻し”です」と柘植さん。

この、「深摘心」と「切り戻し」ですが、まず本葉を10枚ほど握って包丁を節間に食い込ませ、カットするのが深摘心。

さらに、側枝を収穫するときは必要な長さで切り取って終えるのではなく、主枝に接続している側枝の下の部分を折り取る切り戻しを行うことで、株の過繁茂や花茎の大量発生を抑えることができます。こうすることで、太くしっかりとしたのらぼう菜を安定的に収穫することが可能になります。

のらぼう菜 深摘心

株の中央、本場10枚前後をつかみ、包丁で節間をカットします。
切り口は直径25~30mmに。大胆に深くカットすることで、太い花茎の発生を促します。

のらぼう菜 切り戻し

出荷サイズの30cm前後をカットしたら……
主枝に接続している側枝の下の部分もカット。株の過繁茂を抑えます。

今回のワークショップでは、実際に深摘心と切り戻しを試された新規就農の農家さんが、その効果について柘植さんに報告していました。そして、昨年度に続き、今年度も更なるご質問を投げかけられている意欲的な姿がとても印象的でした。

圃場見学会でのらぼう菜の栽培技術を学ぶ様子。みなさんとても熱心で、昨年に引き続き開催を楽しみに通う農家さんもいるほど……! 取材班も研究室の学生さんから、いろいろと丁寧に教えていただきました。

のらぼう菜の今後の展望は「系統×栽培=品質」に在り

その存在を知らないという方もまだまだたくさんいますが、その分、未知の可能性に溢れているのらぼう菜。栽培方法や食味もさることながら、地元の方々からの人気と支持は絶大なもの。今後、もっともっと多くの人に知ってほしい野菜として注目が集まりますが、現状の課題はやはり世間への認知を広めることと、そのための手段です。

のらぼう菜は伝統野菜であるからこそ、産地によってさまざまな荷姿になります。しかし、細かなバラつきも栽培技術によって丁寧に統一していくことで、安定した揃いののらぼう菜を出荷できます。そういった一つひとつのステップを着実に乗り越えていくことで、一般消費者へ拡がりとの購入に繋がるのではないでしょうか。

柘植さんをはじめとしたプロジェクトメンバーのみなさんは、これからもより高い品質を求め、系統と栽培を探求し続けていきます。

冷めやらぬ、のらぼう愛

たくさんの人々に愛され続けるのらぼう菜。

今よりさらに研究が進むことによって、出荷の揃いや品種の種類なども改良・改善され、さらにおいしく、育てやすくなっていく未来が見えます。

春の定番野菜として、八百屋やスーパーで見かける日もそう遠くはないかもしれませんね。

のらぼう菜が、そしてひたむきに研究を進めてきた関係者の方々の今後が、この先もどんどん拓けていくことを願い、私たちも引き続き応援していきたいと思います!

 

それでは、次回のカルチベ取材班 現場参上もお楽しみに~!

 

「農耕と園藝」2018年6月号より一部転載
取材協力/かわさき“のらぼう”プロジェクト
明治大学農学部農学科野菜園芸学研究室
取材・文/編集部

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