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切り花の前処理と後処理

公開日:2019.5.16

花を花瓶に生けて観賞する時、その観賞価値が長続きすること、すなわち花の日持ち性が高いことが望ましい。生産者が切り花を出荷する際は、切り花の長さや大きさを揃える選花作業と、切り花に水を吸収させる水揚げの作業を行う。出荷した切り花は、市場を経て小売り花店に並び、消費者に届く。切り花の流通で生産者が取り扱う部分を前段階とすると、市場と小売店が扱う部分は中段階、消費者が扱う部分は後段階に分けられる。

切り花の日持ち性を高めるためには、流通の各段階において花の種類に応じた適切な品質保持剤の溶液を水揚げと生け水に使う。この処理は各流通段階での処理なので、流通段階の頭文字の前、中、後を付けて、前段階の例では前処理剤による前処理と呼ぶ。

切り花の前処理 生産者が出荷前に切り花品質の保持を目的に、品質保持剤で水揚げする時、この処理を前処理と言い、その処理剤を前処理剤と言う。花の落下や萎れがエチレンによって生じる品目では、エチレン作用を阻止する銀イオンを前もって植物に吸収させるために、STS剤(チオ亜硫酸銀)を主要成分とする品質保持剤が用いられる。また、吸水不良が主な原因で花が萎れ、老化が進む種類では、茎の腐敗や水の吸い上げ口の導管が詰まるなどの原因を防ぐために抗菌剤が加えられる。また、多くの小花を持つ花は、エチレン作用を抑えるだけでなく、つぼみが開くようにエネルギー源としての糖質も加える。

切り花の中処理 切り花の切り口を生け水に挿し込んだ状態で輸送する湿式輸送では、湿式輸送用の品質保持剤が使われ、小売り段階での生け水には小売用の品質保持剤が使われる。これら流通の中段階で使う品質保持剤を中処理剤と言い、その剤での処理を中処理と言う。中処理剤はブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの糖類と抗菌剤の組み合わせが主であり、さらには吸水促進を図るために界面活性剤を加える。

切り花の後処理 切り花流通の最終段階の消費者の下では、理想的には切り花の生け水は頻繁に換えられて、その度に品質保持溶液が新調される。この流通の後段階で用いる品質保持剤を後処理剤と言い、この処理を後処理と言う。後処理剤は糖質と抗菌剤で構成されている。

切り花の品質保持剤 切り花の品質を保持する目的で水揚げや生け水に使用される薬剤を品質保持剤または鮮度保持剤、延命剤、花持ち剤とも言う。切り花の品質保持に要求される項目は流通段階で異なるので、各段階に応じた組成の品質保持剤があり、各処理時期の名をつけて、前処理剤、中処理剤、後処理剤と呼んでいる。この品質保持剤の便宜的な名称に替えて、切り花栄養剤と呼ぶことが提唱されている。

『農耕と園藝』2015年10月号より転載

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