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新規就農ガンバリズム

農家で連携してB級品を生かしたい! 加工用農産物のネットワークを繋いでいます

公開日:2019.5.15

本日の「新規就農ガンバリズム」では、業務用加工原料としてダイコンを栽培する佐々木さんのもとを訪ねる。前編・後編でお届けしている後半の今回は、佐々木さんの取り組みと他の農家さんとの連携に着目する。

作業は究極の筋トレ!?

佐々木望都さんは、中古車販売会社からサンフィールド株式会社へ転職。熱血漢な社長の桑原拓三さんの指揮の下、業務用加工原料としてのダイコンの大規模栽培に取り組んでいる。同社は、兵庫県の休耕田や遊休農地を借り受け、畜産堆肥を大量に投入。農薬や化学肥料は使用せずに栽培している。佐々木さんもまた85馬力のトラクタ「ジョンディア」を操り3t積みのマニュアスプレッダを牽引したり、プラウを使って深耕したり。大型機械での農作業にも果敢に取り組んでいる。元々車が好きで、中古車販売会社で働いていた経験が生きている。

「いつもマニュアル車に乗っていたので、ギアチェンジの必要な農業機械の操作は問題ありません。前職では、大型免許を取得して、マイクロバスや積載車も運転していたので、大型のトラクタも抵抗ありません」

と、実に頼もしい。それでもダイコンの収穫は手作業なので、機械は使えない。漬物などの加工原料に厳密な規格はないので、できたものを順に抜いてコンテナへ詰めていく。作業にあたるのは、基本的に桑原さんと2人。「3時間で1000本」抜くこともある。ハードな農作業で、腰を痛めたり、ダウンすることはないのだろうか?

「うーん、パワーリフティングの練習より楽です。トレーニングだと思えば楽しいですね」

パワーリフティングとは、足を鍛えるスクワット、上半身のベンチプレス、背中と腰のデッドリフトの3種目から成り立つ競技で、「筋トレの基本」といわれている。

佐々木さんは、そのジムを経営している元ボクサーの知人に「絶対にダイエットできる」と勧められ、農業を始める1年前からトレーニングに励んでいた。バーベルを担いで屈伸したり、仰向けの姿勢で持ち上げたり、「地上で最も筋力を必要とするスポーツ」でもある。

それは常に体を鍛えるアスリートだけでなく、年齢や体力に応じて誰でもできるので、女性の佐々木さんも無理なく始められた。そしてハマった。それはまた、農作業での体の使い方に、大いに役立っている。

「ダイコンを抜く時、こうすれば軽く感じるなとか。コンテナを持ち上げる時に、軽く感じるやり方や、腰痛にならない工夫、そんなところに共通点はあると思います」ジムでトレーニングするように、体のことを気にかけて作業している。また、作業を続けると筋肉がついて、自分の体が変わっていくのがわかる。

「それが楽しい。筋トレバカです(笑)」

ある意味人間の身体は、最も身近で一番大事な農業機械でもある。無理をして壊してしまったら元も子もないが、鍛え方しだいで生産性は上がる。社長の桑原さんが、男性を20人以上面接しても「使い物にならんかった」のに、女性の佐々木さんが折れずにずっと仕事を続けているのは、筋トレを通して身につけた体の使い方が生きているからかもしれない。

納品先の加工場は、衛生や品質管理のプロである西村章さんが経営。
ユズやダイコンの加工品。ダイコンは「甘酢の浸透が早い」と好評。
ダイコンを2人で1000本抜くことも。筋トレ感覚で負担の少ないやり方を工夫している。

壊れた機械は自分で直せ!

佐々木さんは、身体を鍛えつつ、決して壊れないようにメンテナンスしているように、作業中トラクタや機械が壊れたら、自分で直すように心がけている。

「トラクタが壊れて必要な部品があれば、分解図を見て、必要な部品を選び出し、発注したりしています」

それができるのは、中古車を販売していた前職の経験が大きい。勤めていたのは総勢4人の小さな会社で、車の整備は専門の整備士が担当していたが、佐々木さんも買いつけた車の点検や、部品の発注も担当していた。車の故障部分について説明する機会も多かったので、わからないことは整備士に教わったり、調べたりしていた。

サンフィールドには、小型トラクタから85馬力のジョンディアまで、大小合わせて8台のトラクタがあり、作業別に使い分けている。なかには「ジャンク」と呼ばれる中古品を改造したり、昭和44年製の年代物もメンテを重ねて現役で作動中。壊れるたびに修理に出していたら、コストが嵩んでしまう。

社長の桑原さんは、かつてトンネル掘削機のメーカーでメンテナンスを担当していたこともあり、「壊れたら、自分で直せ!」という主義。

佐々木さんは、刈払機のキャブレターを掃除したり、壊れた刈払機を分解して、故障の原因を突き止めたり……可能な限り自力で修理している。

農家が連携しB級品を生かす

サンフィールド株式会社では、自社で無農薬・無化学肥料で加工用の野菜を栽培するだけでなく、同様の方法で農産物栽培している農家に桑原社長が声をかけ、ネットワークを結び、流通や販売面でも連携・協力していく取り組みがスタートしている。

現在協力農家は15軒程。少量多品目型の農家から、1種類を町歩単位で栽培する大規模農家まで。種類は日常的な野菜から珍しい西洋野菜までと、多様な規模と作型の農家が集まっているが、共通点は農薬や化学肥料を極力抑えて栽培していること。作物に自信はあっても農協出荷が難しく、流通面で伸び悩んでいる生産者が多い。

「モモ、エダマメ、イチゴ、トマト、トウモロコシ……。みんなB級品の扱いに困っとるんです。これを加工品にしていこう」

そう考える桑原さんが、大規模に加工ダイコンを作り始めた背景には、食品衛生のプロである西村章さんとの出会いがある。兵庫県の工業技術試験場で技術指導員を務めたキャリアの持ち主。

現在は加西市に有限会社食品衛生デザインオフィスを立ち上げて、ユズジュースやドレッシングなどの品を製造している。桑原さんと佐々木さんが作るダイコンは、同社の加工所でカットされユズとともに甘酢漬けに加工されている。

桑原さんが食品メーカーに営業に行くと、「あんたとこ、ダイコンだけ? 他にないの?」と聞かれることが多い。生産者は同一の作物でグループや部会を作って、大量に販売するケースが多いが、実際のユーザーは多様な作物を必要としている。それならば、異なる作物の生産者が連携して、各自の販売先で「御用聞き」をして、他のメンバーの分まで注文を取ってくる。そんなことはできないだろうか?

「いろんな農家を集めて、栽培と同時に八百屋もやっちゃおう。それが実現したら面白いやろな。就農前からずっと考えていました」

と話す桑原さん。その第一弾として、今年6月には、提携農家のモモがゼリー等の加工品向けの一次原料となり、秋には丹波特産の「丹波篠山黒枝豆」が、冷凍エダマメの原料となる。いずれもこれまで捨てていたB級品を生かす形で始まる。

さらに飲食店のチェーンとも業務提携。市場や八百屋等、仲介業者を介さず、店舗で使用する野菜を、グループ内でとりまとめて納品する。そしてまた、顧客が店で食べた野菜を購入できる直売所も併設することに。店舗のニーズに合った作物を中心に調達できるよう、準備を進めている。

有機農家とネットワークを結び、加西市を拠点に、神戸、豊岡と県内を飛び回っている。
タイヤの直径が大きく車高の高いハイクリ仕様のトラクタ。アオネギやダイコンなど、作物が大きくなっても土寄せができる。

最近桑原さんと佐々木さんは、兵庫県北部の豊岡市でも栽培を始めた。地元で大規模に乳牛を飼育している株式会社藤井商店から、堆肥を導入したことからつながりが生まれ、「空いている農地に堆肥を入れて、大規模に循環型農業を展開しよ」と意気投合。新たな試みが始まっている。

栽培、他の農家からの集荷、顧客との打ち合わせと出荷、加工相談、豊岡での耕作……佐々木さんは日々忙しい。そもそも子供の頃の夢は、調理師になることだった。一時はそれを諦めて中古車販売店へ。そして今は、畑で料理の原材料を作っている。

畜産農家の出身で、機械関係のメンテナンスも手がけてきた桑原社長と佐々木さん。県内の農家と食品メーカーネットワークを結び。生産者主導型の新しい農業を展開していく。

「何かを作って、誰かにおいしく食べてほしい。昔の夢が、別の形で実現できました」

料理が好き。車の運転や修理も好き。筋トレにもハマっている。そんな佐々木さんの経験は、すべて今の仕事に生きている。

 

 

 

「農耕と園藝」2017年7月号より転載・一部修正
取材・文/三好かやの
撮影/岡本譲治
写真協力/JAみのり

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