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カルチべ取材班 現場参上

「ばらフェスタ2019 世界をめぐるローズショー」を歩く

公開日:2019.5.29

みなさまこんにちは!

今回のカルチベ取材班は横浜・大さん橋ホールに現場参上しました。

5月15~19日の4日間にわたって横浜・大さん橋ホールにて開催されたバラの花の祭典、「ばらフェスタ2019 世界をめぐるローズショー」の会場の様子をお届けします!

会場はバラとゆかりのある地、神奈川県・横浜市。みなとみらいに程近いこの場所で、今回初めての開催となります。

平日の大さん橋。この日はバラの花を見ようと、老若男女問わずたくさんの人が訪れていました。
入口で人々を出迎えるのは、美しいウェルカムローズガーデン。

内容は、さまざまなアーティストによる展示やトークショー、ワークショップ、スイーツ&カクテルの提供、バラモチーフのグッズを取り扱い、ショッピングまで楽しめるというまさにバラ尽くしのイベント。

また、会場を飾るバラにはフランス・リヨンにゆかりのあるバラナーサリーのメイアン社、アラン・メイアン自慢のバラも。横浜市とリヨン市は1959年4月7日姉妹都市提携を結び、2019年は両市の姉妹都市提携から60年を迎えました。

この「横浜・リヨン姉妹都市提携60周年記念」をお祝いして送られた会場のバラ、ムッシュー・メイアンのサロン・ドゥ・ローズにも注目です。

会場の様子をご紹介するその前に、バラと横浜の関係性についてもう少しだけお話しましょう。

写真は「アイスフォーゲル」。(タンタウ/京成バラ園)

バラと横浜の歴史

「バラ」と「横浜」の関係性、そもそもの始まりは横浜開港と共に西洋のバラが横浜に上陸したこと。明治時代、バラは外国人住宅を飾る、まさに高嶺の花でした。明治の終わりになると、横浜の園芸商、横浜植木株式会社はバラの新品種の輸入や育種を手がけるようになりました。

特別公開!100年前のバラのカタログ、「園芸植物図譜」(大正3年 横浜植木株式会社編)。人々のバラへの強い関心と愛着が伝わってきます。

その後も、アメリカのシアトル市から、関東大震災の復興支援を受けた横浜市は、桜の苗木などの御礼の品を贈呈。その返礼にフラウ・カール・ドルシュキなどの200品種ものバラの苗が届けられたこともありました。バラは市民の間に瞬く間に広がり、昭和10年からは「バラ祭り」が開かれ、バラで装飾された馬車や自動車によるパレードも行われました。

昭和24年にはバラの展覧会も開催されました。サンフランシスコ市からピースなどの生花が空輸され、「空飛ぶバラ」と評判を浴びました。戦後もバラが日米親善大使の役割を果たしたのですね。そしてついに平成元年には、横浜市民の投票の結果、市の花としてバラが制定されることに。

横浜ゆかりのバラには、「はまみらい」、「シティー・オブ・ヨコハマ」、「メサージュ・ドゥ・ヨコハマ」、「セント・オブ・ヨコハマ」、「ル・ボール・ロマンティーク」、「ローズ・ヨコハマ」などがあります。横浜のバラは時代と共に街と人とのつながりを育んできたのですね。

横浜薔薇ものがたり

冒頭でご紹介したように横浜は開港当時からバラと深いかかわりがありました。写真は昔の横浜、そして今の横浜、ふたつの横浜をイメージしたローズガーデンです。

ローズガーデンを制作したのは、2018年の世界バラ会議において「優秀庭園賞」を受賞した「横浜イングリッシュガーデン」の造園チーム。
バラを中心としたイングリッシュガーデンを参考にしようと、展示の様子をカメラに収める人の姿も見られました。

モロッコ 魔法のバラ

中東とヨーロッパの文化が迷路のように入り組み、洗練された極上の文化が生まれたモロッコ。

「木が植えられた庭」や「邸宅」の意味があるリヤドを表現した今回の展示。リヤドは、噴水や木々のある中庭を取り囲むように部屋が配置されている邸宅を改築したモロッコ特有の宿泊施設です。まるで小さな美術館のようなリヤドは、モロッコを訪れる人たちを魅了しています。

会場では、建物に囲まれた中庭でバラの香りに包まれながら穏やかな時の流れを感じられました。

デザインは「世界らん展」、「国際バラとガーデニングショウなど名だたるフラワーショウでパフォーマンスを行うフラワーデザイナー、曽我部 翔さんが手掛けました。
幻想的なモロッコ風の展示。

決定!2019バラ切り花日本一 第62回日本ばら切花品評会

豪華なウェルカムローズコレクションを進み、目に入るのは極彩色のバラの数々。こちらは全国の生産者から寄せられた2019ローズコレクションが並ぶエリア。自慢のバラが幾多にも飾られ、芳香と共に訪れた人々の心を和ませていました。

今回、第62回日本ばら切花品評会で農林水産大臣賞を受賞したのは、生産者、黒子忠則さんの「エンジェルキス+」。

細かに波打つ花弁と淡い濃淡が可憐な花々に、一目見た瞬間、顔がほころんでしまいます。

毎年、日本ばら切花品評会には各都道府県から自慢のバラが揃います。
農林水産大臣賞を受賞した「エンジェルキス+」(黒子忠則/茨城県)

禅と薔薇の一期一会

禅僧で庭園デザイナーでもある増野俊明さんは、国内外で数多くの「禅の庭」を手がけ、日本の文化・美意識を広めてきました。

今回の展示では、白砂と3石の景石を配した枯山水にバラの盆栽を取り入れ、「禅と薔薇の一期一会」をテーマにした、今までにない庭園デザインを見事に表現しました。

禅と薔薇の一期一会の文字が光ります。
作庭をした増野俊明さんは、横浜市にある曹洞宗建功寺の18世住職。
付近にはミニ盆栽も多数展示され、外国人観光客などバラと盆栽について語らう人の姿も見られました。

バラのある暮らし「パリジャンのバカンス」

日常をパリで暮らし、週末やバカンスを田舎で過ごす生活スタイルのパリジャンたち。自然豊かな田舎で過ごすことは人生を楽しませ、より豊かにしてくれます。

そして、パリに戻ることでよりいっそうパリのよさを再発見します。日常に自分のために飾るバラ、週末におもてなしのために飾るバラ。いろいろな暮らしの中に浮かぶバラのある風景を見ることができました。

展示デザインは、フラワーデザイナーのローラン・ボーニッシュさん。
フランスで100年近く続く花店の四代目として花と向き合ってきた、彼らしいこだわりが感じられます。
シャンペトル風で、洗練されたバカンス。アプローズ(喝采)と名付けられた青いバラが目を引きます。

バラのある暮らし「バラとキャンドルのアトリエ」

火を灯したくないキャンドルNo.1。キャンドル作家・有瀧聡美さんの作品はバラや植物をモチーフにした独創的で華麗なキャンドルで、火を灯すことをためらってしまうような繊細さが魅力です。

アンティークの小物や家具をDIYでアレンジした有瀧さんのアトリエでは、この繊細なレリーフキャンドルが次々と生まれ、キャンドルに命が吹き込まれているそう。

アンティーク家具やヴィンテージ小物とバラとの相性は抜群。
儚げなバラモチーフのキャンドルは火を灯し難いほど美しく、見惚れます。

サントリー ブルーローズ アプローズ

アプローズ(喝采)と名付けられたこのバラは「青いバラ」を求め、長い年月と多くの人の熱い想いに支えられて、文字通り花開いた、青色色素を持つ世界初のバラです。

花言葉は「夢かなう」。幾多の夢をかなえた青いバラを手にしたとき、夢をあきらめない素晴らしさを感じられそうです。

月刊「フローリスト」や弊社カレンダーなどでも大活躍されているローラン・ボーニッシュさん。美しいバラの花束と共にポーズを決めてくれました。
青い花弁を持つバラの花束のコーディネートが斬新な印象。

妖精が棲む庭 ~シシリー・メアリー・パーカーの世界~

ガーデニング発祥の地イギリスでは、ガーデンには妖精が棲んでいると言い伝えられています。シシリー・メアリー・パーカーは、そんな“花の妖精”を描き続けました。精密に描かれた草花と愛くるしい妖精の姿は、世界中で愛され、日本では1970年代、チョコレートのおまけにも採用されました。

「妖精が棲む庭」は、彼女の大ファンであるガーデンデザイナー、阿部容子さんが担当。彼女が描く作品に登場する、草花が溢れるイングリッシュスタイルが広がります。

“花の妖精”を描いた挿絵画家、シシリー・メアリー・パーカーは、1895年、イギリス州西部のクロイドンで生まれました。13歳で地元の美術協会に所属。16歳で最年少の終身会員に選ばれた頃には、最初の作品が出版。以降、画業に専念しました。

これらの展示のほかにも、ステージ&ワークショップや、スイーツ&カクテル、ショッピングフロアなどが設けられ、会場は終日人々で賑わっていました。

講演会では、各会で早々と席が埋まっていきます。
ワークショップではオリジナルの花束を自作する、楽しそうな人々の笑顔も。
物販にて可愛らしいガーデンベアグッズを発見!(過去ブログ「カーネーションとガーデンショウ」参照)。

横浜とバラの密接なかかわり、そして人々を魅了してやまないバラの美しさを改めて実感した今回の「ばらフェスタ2019」。イベントが次の100年へと、末永く続いてくれることを祈りました。

季節はバラの最盛期。

みなさまも、ぜひ各地のバラスポットを訪れてみてくださいね!

それでは、次回のカルチベ取材班 現場参上もお楽しみに!

 

 

 

取材・文/編集部

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