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園藝探偵の本棚

第15回 竹を活けるとき、水揚げはどうする?

公開日:2019.5.29

『竹の世界』

[著者]室井綽(むろいひろし)
[発行]地人書館
[入手の難易度]易

「園藝探偵」ができるようになったのは、IT環境の充実と、ネットオークションのおかげと言っていいと思う。学術論文を読んだり、資料を探して手に入れることへのハードルが飛躍的に下がって、誰もが、ちょっと努力して勉強しようと思えば、それができるようになったのだ。

今回は、ネットオークションで入手した「竹」に関する本を2冊紹介する。実際には、竹に関する資料や写真集8冊がまとめて出品されていて、それを送料込みで七千円ほどでセリ落とすことができた。「有用竹類図説」「竹類語彙」(いずれも著者は室井綽)が欲しかったのだが、ほかの本もついてきた。「園藝探偵」というのは、ことさらに余談が多くなるのが特徴だけど、今回も、この「まとめて入手」ということについてちょっと書いておきたい。いわるゆる「蔵書処分」の問題だ。

「蔵書」のゆくえ

 他人事ではないのだが、「蔵書」というのは、単に「古い本がたくさんある状態」というのではなく、「持ち主が、一定の方向性を持って集めた(編集した)情報の集合体」というようなもので、重要なことは、それらを「バラバラにしたら価値がなくなる」というような価値を持っているということなんだ。20世紀までは、こうした蔵書を大学や研究機関、公共図書館などで、まとめて引き取り保管し、公開するといったことができた。著名な人物の場合、蔵書の中の線引や、ページに記された走り書きのメモのようなものまでが研究されている。しかし現在では、それがまったくできなくなっている。例えば、さまざまな分野の世界的な研究者として知られる大学教授でも退官、あるいは亡くなったときに、蔵書の行き場がないのだという。市井の研究者の場合は、なおさら救いようがない。そのため、こうしている間にも、ものすごい量の本が処分され、バラバラになって古書店に流れるようになった。この問題は、まったく解決のめどが立っていない。

ぼくが手に入れた「竹」に関する8冊も、誰かが竹について勉強したものに違いない。そんなふうに、「本」という資料自身が持っている物語を心にしまって、勉強を進めよう。

竹を活けるときに、葉の水揚げをどうするのか?

花屋に勤め始めると、誰もがまず最初に「水揚げ」を学ぶ。これが花屋の永遠の課題だから覚えろ、と教わるだろう。「から切り」「水切り」「水折り」「割り」「叩き」「湯あげ」「焼きあげ」などと植物によっていろんなやり方があった。現在は、いろいろな「水揚げ促進剤」も登場してきて、薬品を効果的に使って「湯あげ」「焼きあげ」をしないですむようになっている。

ぼくも30年、花の仕事をしてきて、切り花の水揚げ作業の技術革新に歩みを合わせて、ずっと勉強をし続けてきた気がする。「水揚げのコツ」が書かれた本やネットの記事には必ず目を通し、判断をする。

この10年ほどで、画期的な方法だと思ったのは、次の3つ。1つ目は、エルフバケットなどによる「湿式輸送」だ。水揚げが必要なくなるのだから、花屋としては、労力削減で生産者にコスト削減分の費用を支払ってもいいくらいだと思う(実際には、すべて生産者がコストを負担している)。

2つ目は「全漬け」。リキュウソウやアイビーのような葉ものやラン類を水槽のような場所で全体を水中に漬けて水揚げする方法。水分を吸収する場所は茎の維管束だけではないのだ。

3つ目は、「50洗い」という野菜の鮮度(見た目の品質)を回復する方法。料理研究家の平山一政が提唱した方法だが、非常に興味深い方法だと思う。日本農業新聞に載っていた栽培技術のアイデアに、アブラムシを減らすのに50のお湯をスプレーするという面白い方法もあって、話題になっていた。50の湯に手を漬けると熱くてとてもじっと漬けてはいられないが、植物は大丈夫だ。

それでも、切り花の水揚げにはそのときどきの品質や環境でうまくいかないこともある。大輪ダリアやアジサイ、シャクヤク、コチョウランなどは高価だし、誰でも気を使うものだろう。

余談はこのへんにして、竹だ。竹や笹は、萩やススキの葉とともに、古くからいけばなの花材として取り上げられながら、水揚げの難しいものとして知られる。いけばなでは、各流派の秘伝になっていたりしていたらしい。明治期の水揚げの教科書をいくつか読んだことがあるが、意外と薬品を、しかもかなりの劇薬(塩酸とか)をさまざまな草花に使っていて意外に感じたことがある。この本では、竹の水揚げはシンプルに水だけを使う。以下、要点を箇条書きにしてみたい。

《水揚げで大切なことは、やはり十分にタケを観察し、よく知ることである。まず、大事なことは、竹の種類というか、系統を知ること、水の吸収面を知ることである》

①バンブー系の竹を使うという考え方
1番水の揚がりやすい系統は、バンブー類(たとえば、キンメイチク、ホウライチクなどがある)。バンブーは、地下茎がなく、稈が株立ちになり、夏から秋に出筍するグループ。《一枚の葉を取って電球、または太陽光線の方向に透かしてみると、平行脈内に支脈をつなぐ細脈がないので、水が揚がりやすい(竹や笹の葉には細脈がある)》。

②若竹を用いる
花材としては、年齢の若いものほど水揚げがいい。一年生のものは稈の緑が濃厚。年齢を増すごとに、稈の色は黄ばんでいく。

③伐採する時間帯は早朝、日の出前
早朝、日の出前に切ること。さらに雨後であるとなおよい。もしも乾燥続きのときは、前日に十分かん水しておくこと。晴天より曇天のほうが水揚がりもいい。

④根元の固定
竹の稈をつかんでゆさぶってみる。株元のしっかりしていないものは水揚げが好ましくない。株がゆらぐのは常に水分が不足している証拠。

⑤枝の整理
竹を切ったら必要な節を残して稈を切断し、また、すぐに枝を整理して蒸散を抑える。

⑥太棹の花材(モウソウチクの水揚げ1)
《枝のつく最下の節をおいて、上部の節を抜き、水を充たすことである。節の隔壁に穴をあける位置は、隔壁の中央で、鉛筆ほどの太さの穴をあける。この穴は細いことがのぞましいが、あまり細いと水が入りにくい。この隔壁は、下部から上ってくる維管束が、この中に入り、中央部近くで反転し、稈中にかえって、さらに向きを変えて上昇するため隔壁を多くこわすことは、維管束という水道を断って水が上がらなくなることである。》
一番てっぺんの穴は新聞紙などでふたをして、水の蒸発を防ぐ。水の補充は一節間に15~20CC内外で行うといい。

図は挿入図を参考に、筆者が作図。

⑦一節ごとに注水する方法(モウソウチクの水揚げ2)
節の中央の隔壁を打ち抜く方法のほかに、面倒だが、葉のついている節ごとに横穴をあけて水を入れる方法がある。
《各節の上部に小さい穴を横に2個並べてあける。そして、毎日水の減った量を早朝に補充する。》
水を入れるのは、葉のついている節だけ。穴を2個あけるのは空気穴をつくって水を入れやすくするため。水を入れたら竹ひごやテープで閉じておく。⑥の方法より面倒だが、長期間、飾るときには有効(著者は、写真を示し、「半年から1年ももつ」、と書いている)。

⑧最下の節間の処置
稈の大小にかかわらず、稈の最下の節間の上部の側面にドリルなどで小さな穴をあけ、水が入るようにし、最下の節間に空気を入れないようにする(空間をつくらない)。最下の節に空気が入っていると隔壁が乾くので水が揚がらない。(上図のA)

⑨竹を活けたものを飾る場所
飾る場所は、冷暖房のきつい部屋はNG。できれば日陰の低温多湿な部屋がいい。

⑩水盤の水
水道水よりも、井戸水や河原の水を1日ほど汲みおいたものがいい。2〜3日で交換する。

⑪葉水
室内に活けた竹は、霧吹きなどで葉水をする。葉の表だけでなく裏面にもかける。回数を増やし、スプレーの圧が高いほうが効果的。

⑫葉水の添加剤
竹の葉からの蒸散を抑えるための一方法として、葉水の中に黒砂糖の薄い液をスプレーでかけるというものがある。

⑬稈中の塩水
⑤、⑥のように、稈のなかに水を入れる場合、真水ではなく塩水を入れるという人もいる。濃厚なものはよくない。0.2~0.3%の薄いものを用いることで、吸収のための刺激剤とする。

⑭笹類の水揚げ
笹類の水揚げは難しい。稈が細いもの、またクマザサのように隈取ったものは葉が巻きにくい。前記の①、②の条件は笹も同じ。花展などで活けるときは、同形、同大のものを二本一組に用意しておき、交代して利用する。予備のほうは、水の中にすっぽりと漬けておき、2〜3時間で交代する。クマザサなどは、海水中に漬けたものを活けることもよい。

以上が竹を活けるときに注意すべきことだが、ほんとうに驚くような知識だ。

著者は、タケ・ササ類の牧野富太郎とでも呼びたくなるような幅広い学識を持ち、図鑑や読み物をたくさん残した植物学者だ。富士竹類植物園の初代園長。今回紹介した本には、竹の表と裏(短い枝の出る方が表で長い方が裏)。正月の門松、七夕の竹、生け花などに用いる飾り竹のことなど興味深い話がたくさん載っている。

参考
『有用竹類図説 : 特に形態及び利用 』 室井綽  1962年  六月社
『竹類語彙自然科学から民俗学まで』 室井綽  1968年  農業図書
『坪井竹類図譜』 坪井伊助 1916年 河田貞次郎による再販 岐阜県立書館のデジタル資料 カラーの図版が見られます。

https://www.library.pref.gifu.lg.jp/mapdata/kyoudo/tsuboi/top.html

 

園藝探偵的 検索ワード

#竹 #笹 #富士竹類植物園 #水揚げ

プロフィール

松山誠(まつやま・まこと)
1962年鹿児島県出身。国立科学博物館で勤務後、花の世界へ。生産者、仲卸、花店などで勤務。後に輸入会社にてニュースレターなどを配信した。現在、花業界の生きた歴史を調査する「花のクロノジスト」として活動中。

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