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ちょっと訳ありですが、味は絶品! マンゴーの巻

公開日:2019.6.7

こんにちは! KILO810です。毎度おなじみ青果店『むさしや』さん。市場や町内会の祭りも終わり、店内は日常の静けさを取り戻しています。お祭りのために気合を入れたツーブロックのヘアスタイルも、長い髪の部分が乱れていて、飯島さん、なんだかお疲れよね。そんな、けだるい午後5時半の夕暮れ時に、ふらっとお店に伺った訳であります。

「飯島さーん、笑顔になっちゃうフルーツ、ありませんか?」
「あるある、マンゴー、宮崎産とかタイ産のマンゴーがあるよ」

でも、お高いんでしょう。13年超の車、2台分の自動車税で財布が空っぽなので、ちょっとなぁ。

「訳アリマンゴーだから、安いよ。一つ850円だよ」
「へっ!? 宮崎のマンゴーが1000円切ってるの」

ということで、マンゴーの話のはじまりはじまり。

ダンシングマンゴータイムの前に
厳しい選果基準について、考えてみました

KILOは、一応、農学部出身でして、なんとか卒業単位を取得できた不良学生でした。ただ、頭を使うよりも体を使うほうが得意でしたので、実習だけはまじめに出席していました。2回生の時に、山形県東根市にあるリンゴ農家で夏の一週間、農業研修に参加しました。リンゴ生産の夏場の仕事の一つとして、果実の陰になる葉の詰み取りの作業があり、研修では連日、葉詰み作業でした。いまでこそ『葉とらずリンゴ』などの呼称で一部が流通されているようですが、30数年前は(現在もですね)、リンゴの肩の部分が葉の陰になり、赤く色着かず、選果ではランクを下げられる要因となっていました。

研修先の農園主は、学生の私に、「味は変わらないんだ。なのに、ちょっと色着きが悪いだけで、はじかれるなんて。大切に育てたのに、やるせないだろ」とおっしゃってました。差し出されたリンゴを袖でみがき、色着き不良のリンゴをがぶりとやると、味は他のものと変わらず。ただ見かけだけがちょっと悪いリンゴでした。農園主のやるせない気持ちとは裏腹に、雲一つない真っ青な夏空が東根市に広がっていたのをよく覚えています。

お題のマンゴーでも、どうしても色着きの悪い(とされている)もの、形の悪い(とされている)ものが、一定量、できてしまいます。

宮崎のマンゴーは、ブランドです。聞いただけで「高い!」って思います。ブランド戦略としては成功ですよね。もらったマンゴーが宮崎産だったら、値札が付いてなくても「あぁ、高価なものを頂いた」って感じます。

飯島さんの話では、宮崎のマンゴーについては、色着き、形などの選果基準が厳しく、買い付けるほうは、そこまでしなくてもと感じるほどだそうです。選果基準を厳しくする理由は、前述したブランド戦略の他に、輸送のためや、セリの効率化など、私が知らないような理由で設定されていることもあるでしょうが、おおよそ市場の要望に応えている結果だと、私は思います。そう、消費者であるわれわれが、選果基準を厳しくしているのではないでしょうか。

これ、安い!! 買う買う!
宮崎県産の訳ありマンゴー

左が訳あり宮崎産マンゴー、右がタイ産マンゴー。

話を『むさしや』さんに戻します。むさしやさんでは、訳ありの宮崎県産マンゴーを850円で販売しています。ちょっと色ムラがあり形の悪いものを格安で提供しています。

「だまされたと思って食べてみて―!! 味はしっかり宮崎産アーウィン種のマンゴーなのよ」

選果が厳しければ厳しいほど、はじかれるマンゴーもそれなりの量が出るそうです。はじかれたマンゴーは加工用に回される場合が多いそうですが、一部市場にも流通して、こうやって店頭にならびます。量販店やスーパーでは難しいでしょうね。お客さんと飯島さんの間に信頼関係があるから、見栄えが悪くても、味は飯島さんが保証してくれるから、食べてみようか、となるのです。

赤い色が全体に綺麗に回っているマンゴー。形もよい。贈答用か特別の日用かな。たしかに価格なりの佇まいをしている。ボーナスでたら買ってみようかな。
奥にいた飯島さんのお母さんが笑顔で一言。「シール代よ」。いやいや、それだけの価値はあるマンゴーです。味を想像しただけで、よだれが。

他方、産地の方は、訳あり品を安く売ることに関して、良い印象を持たないのではないかと推測します。ごめんなさい。けれども、真っ赤で形の良いマンゴーは、確かに数千円だしても買いたいですし、贈答用でしたら、もちろん、訳アリを送ることはしません。だから、普段使いの場合、信頼できる小売店がおススメする場合は、安売りを許してもらいたいです。せっかく丹精込めて作ってくださった果物です。おいしく頂きます! ということでマンゴーナイト、スタート!

マンゴーの三枚おろし、いっちょ上がり!
意外ときれいにフルーツカットできたぞ

「マンゴーのタネは平べったいので、三枚におろすといいよ」と、飯島さんにアドバイスをもらいました。三枚おろしのコツですが、ヘタの部分をうえにして、実の膨らんでいるほうを手のひらにもち、タテに平べったい種子があるのをイメージして包丁を入れます。

飯島さんにカットの仕方を教わりました。膨らんでいるほうを下にして持ち、指で差している部分に包丁を入れ、三枚おろしにする、んだそうです。できるかな。
包丁を入れてみました。訳ありだけど、意外と綺麗です。
三枚におろせました。えっと、実は、武田鉄矢さんのラジオ番組『今朝の三枚おろし』のファンです。「旧石器ねつ造事件」のネタが好きです。

おお、できた。三枚おろし。そして、タネのない果実部分は、包丁で縦横の切れ目を入れて皮の方から押し出すと、おお、おいしそうじゃないですか。

包丁をたてに入れる。
包丁をよこに入れる。
おお、綺麗にフルーツカットできました。さらに、美味しそうになりました。マンゴーナイト、盛り上がってます!

中三の息子に実食させたところ「甘い、濃い甘さでガツンとくる」だそうです。色着きが悪くても、中三男子を満足させることに成功しました。半身を私が食べましたが、トロピカルをイメージさせる独特の風味と、濃厚な甘みをまとった果肉が、つるんと舌先からほぐれつつ喉を通っていきます。おもわず「うめぇぇぇぇ」とうなってしまいました。

実食中の中三柔道部の長男。試験前日以外は、ほとんどゲームをしています。だれか叱ってやってください。

可食率はどうでしょう、食べる前が440g、皮と種子が95gでしたので、可食率は78.4%です。前回のビワより良いですね。

マンゴーナイトはまだ続く
つぎは、炭疽病で訳ありのタイ産マンゴー

マハチャノ種のタイ産マンゴー。小ぶりで、家庭用で食べるには、こちらのほうがサイズ的には良いかも。

タイ産マンゴーはマハチャノという品種で、形は比較的細身で、色は黄色~クリーム色です。むさしやさんでは1個450円ほどで販売しています。が、このとき、むさしやさんのタイ産マンゴーに炭疽病がでていました。黒く斑点状になっているのがみてとれるでしょう。これだと見た目が悪く、半値をつけて売るしかなくなるそうです。タイ産に関しては、買い付けた時点では炭疽病が出ていませんが、店着後、発症するそうで、仕入れもとにクレームを入れるそうですが、最終的には店で損失を被るしかないそうです。

黒い斑点が出てしまっている。見栄えが悪く、本来は売り物にはならない。今回は特別に譲ってもらった。

炭疽病の原因は、タイ現地で、収穫時、土を触った手で果実に触ったことで、表面に炭疽病の菌がついてしまうからだそうです。発症していないので検疫にも引っかからずに、市場に持ち込まれ、小売店店頭で発症してはじめてわかるんだそうです。現地に行って衛生教育すれば、すぐに改善できそうなもんですけどね。

炭疽病の発症がみられるマンゴーも、味は保証すると飯島さん。信じて実食します。

三枚おろしにしました。マハチャノ種の方が、タネが細いので下ろしやすいですね。
実はアーウィン種よりも黄色が強いけど、これはこれでおいしそう。
ひらべったい種子。これ植えたら、発芽するのだろうか。やってみようかな。

中三の長男に食べさせたところ「俺は宮崎さんの方が好き。味が薄い」ということでした。酸味がほのかにあり、マンゴーフレーバーもマイルドで、量をたべるんだったら、私はタイ産かなとおもいました。

タイ産マンゴーの可食率を図ってみました。実は225g、皮とタネが69gでしたので、可食率は69.3%でした。実が小さいと可食率が小さくなる傾向にありますね。

マンゴーナイトは、家族を笑顔にしてくれました。ありがとう訳ありマンゴー達よ! また、マンゴーナイトをしたいな。訳ありマンゴー大好き。

というわけで、日本の選果基準について、規格外の野菜や果物について、また、価格調整のための食糧の大量廃棄とその問題点・改善案について調べてみるのも、夏休みの自由研究としてよいのではないでしょうか。

それではまた、違うネタで。

追伸

シャインマスカットが非常によく売れているそうです。むさしやさんでは1パック3780円。ちょっと手が出ません。いつかレビューしたいっすねぇ。だま編集長、経費で何とかならんですか(笑。糖度計も欲しいです。

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