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ブランド+貯蔵性+機能性が自慢! 三ヶ日は青島ミカンで勝負!!

公開日:2019.6.18

静岡県浜名湖の北岸、浜松市三ヶ日地区は、古くからミカンの産地として知られている。12月下旬、後藤健太郎さんの圃場では、最後の収穫作業が進められていた。

三ヶ日町柑橘出荷組合青年部の部長も務める後藤健太郎さん。山を切り開き、園地の規模拡大を進めている。

三ヶ日地区では、11月に収穫が始まる早生温州と、12月に収穫される晩生の青島温州を栽培している。

「これが青島。三ヶ日を代表するミカンです」

収穫も終盤を迎え、果実が残された樹の枝には濃い橙色のミカンがなっていて、重そうに枝を支柱が支えていた。

12月末の「青島温州」の樹。果実の重みを支柱が支えている。

思わぬ不作の年も潅水で被害を防ぐ

後藤さんは、三ヶ日に続くミカン農家の三代目。東京農大に進学するまでは、家業を継ぐかどうか決めあぐねていた。が、一度東京へ出て、改めて地元の素晴らしさに気がついた。

なだらかな傾斜地が続き、彼方には浜名湖が望める。気候も温暖でミカン栽培に適している。

「東京から帰ってくると、穏やかな空気が流れている。ここに住み続けたい」と、卒業後に就農。栽培を始めて12年。現在はJAみっかびの「三ヶ日町柑橘出荷組合」の青年部を務めている。組合員は790人。うち40歳以下の青年部は22人。先進的な産地を見学したり、店舗に赴いて「三ヶ日みかん」のキャンペーンにも努めているが、今年は全国的にカンキツ類の生産量が少なく、三ヶ日も例外ではなかった。

「僕自身、こんなに少ない年は初めて。40 年作っている人も、こんなことは初めてだと言っていました」

原因は、花の時期の高温と乾燥により生理落下して結実が激減したため。後藤さんの圃場のなかでも潅水チューブを設置している場所は、直ちに潅水を行って被害を最小限に食い止めた。

潅水チューブを巡らし、夏の乾燥や、収穫後の樹勢回復に活用。

石だらけの土で育つ高糖度の青島ミカン

青島温州は、早生温州に比べて外果皮が厚く表面が粗い。それでも、「肌の粗いミカンの方が、味にコクがあります。もしかすると中晩柑に近いのかもしれません」

そんな青島温州は、他の品種に比べ、栽培が難しい。晩生で収穫が12月下旬の低温期まで続くため、樹にかかる負担が大きく、早生品種に比べ翌年花がつきにくくなる。後藤さんは、これを挽回するために収穫を終えた畑に潅水を行い、気温が10 ℃以上の晴れた日には、スピードスプレイヤーを使って、尿素を葉面散布して樹勢の回復を促している。

三ヶ日は肉牛の産地としても知られ、近くに銘柄牛の生産農家があるので、後藤さんは、その堆肥をミカンの樹の周囲に置き肥している。地面を掘り返すと、養分を求めてミカンの細根が地表近くまで伸びているのがわかる。

その根の先には、石垣が積まれていて土の流亡を抑えているが、圃場の土を掘り返すと、今でもゴロゴロと岩石が現れる。三ヶ日特有の蛇紋岩だ。

「三ヶ日の土は石ばかりですが、水はけがよくて糖度が上がりやすい地形です。根っこが石にぶつかるとそれを壊そうと細根が出ます。石があるほうが強い根が育つ。人間と同じで甘やかしてはダメです」

味が濃い「青島温州」。

土蔵で水分を飛ばし長期間出荷可能に

そんな青島温州のもう1つの特徴に、貯蔵性の高さがある。後藤さんは、収穫した青島温州を自宅の倉庫へ入れて保存。「貯蔵予措(よそ)」を行う。これは果実が8分まで色づいた時点で収穫した後、1~2週間、風を当てて3~5% の水分を奪い、貯蔵性を高める技術だ。

貯蔵予措を行った後、ミカンを「ロジ箱」と呼ばれる底の浅い木箱に並べ、土蔵のなかで休眠させる。こうすることで、果実の酸は分解され、糖度が上がり、コクのある味わいが生まれるのだ。

後藤さんは3月、三ヶ日地区全体では4月まで各農家が自宅の倉庫でミカンを貯蔵し、農協の柑橘出荷組合出荷場へ送り出している。

「他の品種では無理ですが、青島だからここまで貯蔵できるんです」

と後藤さん。各農家がミカンを貯蔵できる倉庫を保有して、農協へ露地栽培の温州ミカンでありながら長期間出荷が可能なのは、品種の特性と地元で受け継がれてきた貯蔵技術があってこそ。それもまた三ヶ日の青島温州の利点である。

機能性表示食品生鮮食品第1号に

そんな三ヶ日のミカンは、2015年9月、消費者庁による「機能性表示食品」として認められた。生鮮食品としては日本初の快挙。なぜ全国の産地に先駆けて、三ヶ日がいち早く表示を認められたのだろう?

旧三ヶ日町は、2003年度から浜松医大と農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点(静岡市清水区)と合で、町民1千人を対象に、10年間にわたる栄養疫学研究を開始した。05年度からさらに骨密度の調査を開始。その結果、ミカンに含まれる色素のβ- クリプトキサンチンには、強い抗酸化作用があり、骨粗鬆症予防に役立つとのデータが得られたのだ。

機能性表示食品として認められるには、消費者庁へ届出書類を提出しなければならないが、生鮮食品第1 号ということもありチェックが厳しく、届出後17回の修正を経て、ようやく受理された。こうして「三ヶ日みかん」の箱には、「機能性表示食品」であることが明記できることに。

10年以上前からデータを積み重ね、ミカンが骨の健康に役立つ成分を含んだ機能性食品であることを実証してきた研究が、実を結んだのだ。

後藤さん自身、消費者の前でミカンの販売促進を行うケースも増えているが、機能性表示食品であることを知っている消費者はまだ、ほとんどいないという。それでも、

「お台場のアンチエイジング・フェアのお客さんは、『ああ生鮮食品第1号なんだよね』と。美容や健康に関心の高い方たちは知っているんです」

そういう人たちが、三ヶ日のミカンを選ぶ動機になっている。それを起点にミカンが健康に役立つ食品であることが、さらに広まっていくことを願っている。

高速センサーを採用し生産者が最終チェック

続いてJAみっかびを訪れた。入口には酸糖度分析装置が並んでいて、時折生産者が持参したミカンの果汁を絞って糖度と酸度を測り、その値を確かめていく。

8月から農協で定期的に糖度と酸度をチェック。そのデータを元に出荷計画を立てる。

それは収穫期に限ったことではなく、果実が実り始める8月初旬から始まっていて、町内の組合員の平均値が貼り出されている。8月に9度前後だった糖度は、11月に10度を超え、逆に5度近かった酸度は、1度前後まで下がっている。

ミカンの味は、糖度だけでなく酸度とのバランスで決まる。生産者はこの時点から味のバランスと収穫量を見越して、その年の出荷量を決めている。

続いて柑橘選果場へ。2001年に光センサーを導入し、1時間70tを選果処理できる。ここへミカンを運ぶ出荷者は、オレンジと緑色のコンテナでミカンを運び、選果場へ着くと赤いカラーボールにデータを読み込ませ、ミカンと一緒にコンテナへ投入する。カラーボールのIDチップには、生産者が登録した園地情報を瞬時に読み込む機能がある。

選果場に入ると、カラーボールに園地の情報を読み込ませ、コンテナに投入。
高速のセンサーが、瞬時にミカンの形状や色を識別。

光センサーに通す前に、従業員が目視して腐敗果や生傷果を排除した後、選果ラインへ。ラインは全部で45本。光センサーで糖度とクエン酸、カラーグレーダーでは、大きさ、形状、外観を計測。1秒間に5個測る能力がある。

高速のラインを駆け抜けたミカンは、それぞれの大きさと等級に仕分けされ、箱詰めされるが箱に入れる直前には生産者が最終チェックを行っている。

45 本のラインの上を、高速でミカンが流れていく。
最終チェックは、生産者が交代で担当し、目視で行っている。
収穫を終えた「青島温州」は、木箱に入れられ貯蔵。4月まで出荷できる。
骨粗鬆症予防に効果のあるβ-クリプトキサンチンが含まれることを実証。段ボールには、生鮮食品としては初の「機能性表示食品」と明記している。

「収穫期と重なる忙しい時期ですが、農家さんに順番に来ていただいて、最終段階をチェックしてもらっています」

と、JAみっかびの営農柑橘部柑橘課の藤原康司さん。高速の光センサーと生産者自身の目でチェックを受けた三ヶ日みかんは、箱に堂々と「機能性表示食品」と明記され、市場へ送り出されていく。

規模拡大を推し進め 若手の雇用も歓迎

そんなJAみっかびは、05年に三ヶ日町が浜松市と合併した後も、単協として存続。

「三ヶ日みかん」のブランドを守り続けている。かつて1千人を超えた生産者は、800人弱になっているが、年間3万5千000という昭和50年代の生産量を維持。管内の栽培面積は1600haで、耕作放棄地も少ない。

1989年、品種の統一化を検討。「早生温州」と「青島温州」のみに一本化。晩生で長期貯蔵可能な「青島温州」を主力としてブランド力を高めてきた。町のいたる

ところにご当地キャラクターの「ミカちゃん」の姿があり、町全体にミカンを盛り上げる気運がみなぎっている。

後藤さんの栽培面積は、8.5ha。さらに山を切り開いて圃場を1ha拡大して、そこに苗木を植えつけている。

山を開墾して園地を造成し、苗木を育成。
「後継者だけでなく、若手の就農者も雇用して、元気な産地にしていきたい」と抱負を語る。

三ヶ日全体で年間3万5千tを維持するには、後継者のいる農家が積極的に規模を拡大する必要があるが、5年、10年後には、さらに高齢化が進んで、生産者が急激に減ることが予想されている。

「栽培を続けたくとも、できない人が増えていくなかで、後継者だけでは産地を守っていけません。新規雇用も歓迎したいですね。若い人がたくさん入って、元気のある産地であり続けたい」

と後藤さん。産地の若きリーダーとして、三ヶ日ブランドを盛り立てていく。

 

「農耕と園藝」2018年2月号より転載・一部改変
取材協力/JAみっかび 後藤健太郎
取材・文/三好かやの 写真/杉村秀樹

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