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カルチべ取材班 現場参上

カルチベ取材班、野菜・花き種苗改善審査会へゆく② 「キンギョソウの部」を知りたい!

公開日:2019.6.19

みなさま、こんにちは!

本日のカルチベ取材班は、本誌『農耕と園藝』でもおなじみ、東京都種苗会主催、「野菜・花き種苗改善審査会」に参加するため、東京都農林総合研究センターに現場参上しました!

今回も、前回(「カルチベ取材班、野菜・花き種苗改善審査会へゆく① 「冬まきコマツナの部」を知りたい!」)に引き続き、今年で第61回を迎える歴史ある会の模様をお伝えするべく、審査の様子や取り組みなどを中心にお届けしたいと思います!

東京都種苗会主催の野菜・花き種苗改善審査会とは?

前回のおさらいですが、野菜・花き種苗改善審査会は、毎年東京都農業総合研究センター立川本場および江戸川分場で開催されていて、会場選びは審査対象となる品種の地域性や産地との関わりなどで振り分けられています。

そして、今回そんな審査会の対象品目となるのは「キンギョソウ」です。

キンギョソウはふわりと風に揺れる可憐な姿が人気の花。さまざまな寄せ植えで活躍してくれることから、「名脇役」としても名高い品目ですよね。

キンギョソウの生育経過

さて、そんな今回の審査対象品目であるキンギョソウの出品点数は、15点(内参考出品4点)。

詳しい栽培概要は、以下の通りです。

[栽培概要]

鉢上げは、平成3月14日に、各社から送られてきた種子を、セル培土(TM2)を重填した406穴セルトレイに播種し、覆土しました。

その後、同年4月19日に3.5号黒ポリポットへ1本鉢上げしました。鉢上げ用土は赤土:腐葉土:ピートモス=5:3:2(容積比)の混合用土とし、基肥は用土100ℓあたり、被覆複合肥料14-12-14(エコロング424-100タイプ)=300g、化成肥料6-40-6(マグアンプK中粒)=200g、過リン酸石灰0-17-0=250gを予め施用。栽培はハウスで行いました。

ハウス内は、3月14日から4月19日までは発芽促進のため23℃で管理を行い、以降は無加温による管理(5℃で自動喚気)をしました。

次に潅水方法ですが、5月13日まではハスロにて行い、以降は徒長しないよう、控え気味に底面にて行いました。

追肥は、5月13日に固形肥料(商品名:オスモコート エグザクト、成分:N-P-K=16-9-12)を各鉢1gずつ、5月20日に液肥肥料(商品名:ハイポネックス、成分:N-P-K=20-20-20)2, 000倍を各鉢100mlずつ施用しました。

病害虫防除は、4月19日にアルバリン粒材を各鉢1gずつ施用しました。その後、5月23日、審査会用配置(5列×8鉢×区 2区制)に整列し、審査に臨みました。

栽培期間中の天候・生育概要

天候概要としては、栽培期間を通して高気圧に覆われ、晴れの日が多くなりました。4月から5月の上旬にかけては気温の低い日もありましたが、全体として平年と比べ高く推移しました。月間日照時間は、平年並みか平年よりやや長い期間で推移しました。

生育の概要は、苗の生育は概ね揃っており、期間を通して順調に生育しました。開花については、一部で早期からの開花が見られました。

発芽試験ですが、温度20℃、光量2000ルクスの環境下で行いました。吸水紙の上に種子を置き、適宜潅水を行いながら、播種から12日後の発芽率について調べました。全てで9割以上の発芽が確認されました。

ハウス一杯に咲くキンギョソウを前に、慎重に審査が行われます。
こんなにもたくさんのキンギョソウが咲いている場面に立ち会えることはなかなかありませんよね。花弁の大きさや草姿のまとまり、カラーバリエーションなども多岐に渡り、一つひとつの品種に見惚れてしまいます。
審査は1区と2区に分けられ、それぞれで生育状況などが確認されました。若干、全体的に咲き進んでいる様子も見受けられましたが、配点などには問題なく、各審査員によって静粛な判断が行われました。

また、審査結果の集計を行う間に開かれた講話では「ブバルディア」の鉢物用品種の開発に関するお話を伺うことができました。

ブバルディアとは、中南米原産のアカネ科の花木。切り花や鉢物として活用することができます。

東京のブバルディアは、伊豆大島において切り花の基幹品目に、そのほか福島県糸島市で栽培が行われるなど徐々にその知名度が認められ始めています。品種のほとんどは海外育成のハイブリット系品種で、オランダの一社のみから産出されています。

鉢物用品種は少なく、一重系が中心に育てられており、今後さらなる育種の取り組みが行われることで、種苗メーカーや生産者との共同研究によるオリジナル品種の開発・シリーズ化などが期待できます。

「ブバルディア」の鉢物用品種の開発を進めているのは、東京都農林総合研究センター 園芸技術科 花き研究チーム 植物バイテクチームの宮下千枝子 主任研究員。

東京都農林総合研究センターでは、現在、国内外からの遺伝資源を収集することで、原種や大島在来品種、海外育成品種などの稔性を調査し、育種素材と成りえるものを明らかにしました。

そして、効率的な交配や採取法、発芽条件、早期選抜法などを確立することで切り花・鉢物に向く系統の選抜を行っています。

今後の周年栽培を可能とする栽培技術の確立のほか、新規性が高くニーズにあった品種の新提案が望まれます。そのためにも、各方面との連携によって更なる供給体制の構築が予想されるとのことでした。

熱帯の花というだけあって、比較的ビビッドな色味が多いブバルディア。しかし、近年は写真のような淡いカラーリングの育種にも力を入れているそう。日本人の感覚に好まれやすい品種を開発することで、さらに多くの購買者へと浸透していくことが期待されます。

スタンダードな一重咲きのほか、こちらのような八重咲きの品種も人気。ボリューム感がありながらも可憐で愛らしい佇まいは、今後さらに活躍の幅を広げ、キンギョソウ同様、寄せ植えなどにもフィットしていきそうです。まだまだ生産している農家も少ないブバルディア。引き続き、今後の展開からも目が離せませんね。

結果発表

さて、いよいよ気になるキンギョソウの部の審査結果が発表されました。今回はご覧のとおりの結果となりました。

[審査成績表]

Ⅰ等 1位 スナップショット レッドバイカラー    (株式会社 ミヨシグループ)

Ⅱ等 2位 スナップショット バーガンディバイカラー (株式会社 ミヨシグループ)

Ⅲ等 3位 スナップショット ローズ         (株式会社 ミヨシグループ)

見事、Ⅰ等1位に選ばれたキンギョソウ「スナップショット レッドバイカラー」(株式会社 ミヨシグループ)。

審査講評

東京都農林総合研究所 農業振興事務所 菊池正人 研究員

今回の審査会では、審査対象となった15点のいずれの品種も、気温上昇の影響を受け、咲き進んだ生育状態とはいえ、比較的良く整い、美しく揃った状態であったように思う。

1位のスナップショット バイカラーは、黄色と赤色の特色が美しく、双草もコンパクトで株の揃いも非常に良かった。また、2位のスナップショット バーガンディカラーは赤紫色と、花弁の黄色と白色とのコントラストが印象強く、特徴が良く出ていると感じた。

また、3位のスナップショット ローズは、濃いピンク色系統で審査会場となったハウス内でも、一際美しく、見た目にもインパクトがあった。まとまりのボリューム感も好印象であった。

その他に山野草のような姿のものも見られ、キンギョソウの今後の活躍について可能性を感じることができた。咲き進みを加味しても、今回出品された品種は、美しく整った素晴らしい15点であったように思う。

2020年の東京オリンピックを控え、緑化やおもてなしの花として夏の花の需要が高まる昨今。「良い脇役」としても人気を誇る花、キンギョソウの更なる広がりを期待したい。

脈々と引き継がれる栽培技術向上への取り組み

今回も、以上の結果と講評をもって、審査会は無事終了となりました。

各メーカーの方々が選りすぐりの品種を持ち寄り、行われる野菜・花き種苗改善審査会。毎年、こうして各品目の向上や栽培技術発展への手がかりとして、紡がれ続けています。歴史ある定期的な審査会が、地域の野菜や花を支えてくれているのですね。

また、第61回野菜・花き種苗改善審査会の様子は、今後もホウレンソウ、業務用コマツナにパンジーなど、続々とお届け予定です! 今年の秋冬も見逃せない品種がたくさん登場しますよ!

次回の“カルチベ取材班、野菜・花き種苗改善審査会へゆく③”では、「スイートコーンの部」の審査会の様子を6月26日(水)に配信予定です。お見逃しなく!

 

それでは、次回の「カルチベ取材班 現場参上」もぜひご覧くださいませ!

 

 

 

協力/東京都農業総合研究センター立川本場
取材・文/編集部

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