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国産パインアップルを求め、沖縄へGO!

公開日:2019.7.1 更新日: 2019.6.24
沖縄県東村特産のパインアップル「ゴールドバレル」

強酸性土壌を好む不思議な果実

5月13日、羽田から那覇経由で石垣島へ飛びました。

目的は、沖繩産のパインアップル。あいにくの雨模様でしたが、赤土の大地にパインアップル畑が広がっていました。なぜか黒いネットがかかっていて、中の様子が見えません。地元の方にお願いして、ネットを外してもらうと……。

中から現れたのは、立派なパインアップル。
剣のような葉が何枚も重なっている株の中央に、ドンと果実が鎮座しています。果実の上に、逆立つ髪の毛のようについている葉の集合体は、「冠芽(かんが)」と呼ばれる部位です。

「冠芽がギザギザ尖っているのはボゴール。通称スナックパインの印です」
と教えられました。

5月13日、石垣島のパイン畑。収穫間近のボゴールは、日焼け防止のネットの中で生長していた。

パインアップルは、実に個性的な作物で、他県で栽培されている、野菜や果物の中に類似の作物が見当たりません。

その特徴は…
・果実の上の「冠芽」や、脇から出る「吸芽」「えい芽」を、苗として植え付ける。
・苗の定植から収穫まで、1年半〜2年を要する。
・強酸性の土壌を好み、有機質に乏しい土壌でも栽培でき、乾燥にも強い。

つまり、赤土でpH4〜5の強酸性土壌でなければ栽培できないのです。酸性土壌をアルカリに変えるには、石灰を散布するなどの方法がありますが、逆に中性や弱酸性の土を強酸性に変えるのは、難しいそうです。

ですから、パインアップルは沖縄県ならどこでも栽培できるわけではなく、石垣島や沖縄本島北部地域、西表島など、強酸性土壌の土地に限られているのです。

やせた土壌にがっちり根付き、葉面で光合成を行いながら、水分や養分を取り込み、じっくり時間をかけて生長し、花を咲かせ、果実を成熟させる。それが「パインアップル」です。

沖縄県内でも限られた産地の中で、南に位置し、栽培面積も大きく、早くから収穫できるのが、八重山諸島の石垣島。私たちが訪れた日は、集荷場で、以下の3品種を見ることができました。

石垣島産のボゴール、ソフトタッチ、ゴールドバレル。

ボゴール(右)/通称スナックパイン。台湾で育成された歴史ある品種。手でちぎり、スナック感覚で食べられることでお馴染み。果肉は濃い黄色で糖度も高い。果実重約800g。

ソフトタッチ(中)/通称ピーチパイン。(スムースカイエン種ハワイ系×I-43-880)。1999年品種登録。桃と同じ芳香成分「ラクトン」を含有し、「桃のような香りのするパイン」として知られる。糖度16.3°酸度0.66% 果実重約850g。

ゴールドバレル(左)/(クリームパイン×McGregor ST-1)2009年品種登録。果実が大きく、果肉は淡黄色。糖酸比が高く、肉質が柔らかい。糖度16.5°酸度0.52% 約1400g。

石垣島産のパインアップルが、最もおいしい時期は6月。果実は、パインは追熟しない果実なので、収穫直後の品質がもっと高く、その後は劣化していきます。ですから果肉が変質しやすく、完熟果の日持ちは3〜4日と短いので、そこを逃さず味わいましょう。

「パイン日本一の村」へ

続いて訪れたのは沖縄本島北部、山原(やんばる)に位置する東村(ひがしそん)へ。同村は、「日本一のパイン村」として知られています。取材には、村役場の職員手作りの「パインマン」も取材に同席してくれました。

東村のゆるキャラパインマン。施設の壁に堂々と「日本一のパイン村」を表明。
(左から)東村農林水産課の又吉一樹さん、仲嶺真文さん、営農アドバイサーの宮城実さん。

かつて、沖縄県で栽培されるパインアップルは、「N67-10」という缶詰加工向けの品種が主力でした。これはハワイから導入されたパインの中から、「1967年に具志川や今帰仁から選抜してきた優良15系統の中から67-10という系統を名護で選抜した」ことを意味していて、長い間沖縄パインの主力。

東村では、今でも栽培されていて、「ハワイ種」の名で親しまれています。甘味だけでなく酸味も強いのが特徴。取材に訪れた5月中旬、地元の直売所ではハウス栽培のものが並んでいました。

 

直売所の売り場には、ハウス栽培の「N67-10」が並んでいた。

かつて沖縄県のパイン産業は、缶詰加工用が中心。県内に22の缶詰工場がありました。昭和生まれの人たちが「子どもの頃、最初に食べたパイナップルは缶詰」という人も多いのはそのためです。

ところが、1961年の生果パイン自由化、71年冷凍パイン自由化、そして90年の缶詰自由化となり、安価な輸入パインが席巻。県内の生産量は急激に減少していきます[図1]。

[図1]輸入自由化の波に押され、缶詰用パインの生産量は激減。生食用へのシフトが進んでいる。(沖縄総合事務局の統計データより)

そこで、沖縄県は、パインアップルの育種方針を、価格的に有利な「生食用」へ転換。

糖度が高く、酸度が低い。果重は1000〜1500gで、日持ちがよく、病害虫に強く、栽培しやすい。そんな目標を掲げて育種を行い、生食用の新品種が誕生。東村ではその中でも「黄金色の樽」を意味する「ゴールドバレル」のブランド化に力を注いでいます。

贈答用のゴールドバレル。

 

東村は、2011年、村営の「チャレンジ農場」を設立しました。面積は約2.7ha。ここで種苗の育成や、有害鳥獣対策の実証栽培や、新品種の試験栽培を行っています。

チャレンジ農園を訪ねると、畑の一角で紫色のパインの花が咲いていました。花の根元の子房と花托が融合。徐々に肥大して成熟すると、甘味と酸味、そして独特の芳香を放つパインアップルになるのです。

東村の「チャレンジ農場」では、種苗の増殖や新品種の試験栽培が行われている。
紫色の小さな花の集合体が、充実すると果実に。

圃場で使用されているのは、生分解性の黒マルチ。赤土の流出を防ぐだけでなく、圃場から剥がしたり、処分する手間もなく分解されるので、省力化や環境保全の効果も。村ではこれをパイン農家に配布しているそうです。

マルチを張った畝の間には、熱帯性のイネ科の多年草「ベチベル」を敷き詰め、乾燥や雑草を防ぐ草マルチや、緑肥としても活用しています。

生食用パインの苗も、ここで採取して農家へ配布。他県から移住してきた新規就農者の研修施設でもあります。2年間の研修を経て、ここから2人の生産者が独立。パイン農家を目指して現在研修中の若手も働いています。

脇芽のような「えい芽」や「吸芽」が、苗になる。
栽培には生分解性マルチを使用。畝間には「ベチベル」を敷き詰めている。

こうした村をあげての取り組みが少しずつ実を結び、ずっと減少傾向で、2014年に1,000tを切った村の生産量は、17年には約1,500tに。盛り返しを見せています。

沖縄生まれの新品種、続々登場!

続いて「沖縄県農業研究センター名護支所」へ。ここでパインアップルの育種を担当している、果樹班主任研究員の竹内誠人さんにお話を伺いました。

1998年に入所され、2006年からゴールドバレルやそれに続く品種の育成を手がけておられます。

沖縄農業研究センター、名護支所で、パインアップルの育種を手がける竹内誠人さん。

ここでは、沖縄パインの食べ比べを行いました。これまで見てきた、ボゴール、ソフトタッチ、ゴールドバレルに加え、新たに誕生した新品種も試食させていただきました。

「名護支所では、ハウス栽培も行っているので、5月にこれだけの品種を食べ比べられるのは、おそらくここだけでしょう」
と竹内さん。
ゴールドバレルに続き、さらに新しい品種がここで誕生しています。

ゴールドバレル
ジュリオスター
沖農P17号

ジュリオスター/(「N67-10 」×「クリームパイン」)
2009年品種登録。本島の北部地域では、7月下旬に収穫できる。果肉は黄白色。糖度16°酸度0.62% 約1200g

沖農P17/商標「サンドルチェ」。果肉は硬いが、高糖度で台風にも強い。糖度19°、酸度0.64%、果実重約1000g 露地で6〜10月まで収穫できる可能性も。現在試験栽培中。

同時に味わうと、品種によって果肉の色、甘味や酸味の強さ、そして香りが微妙に異なっているのがわかります。

今、日本で出回っているパインの大部分がフィリピン等の輸入品です。みなさんは、輸入品と国産の違いを意識したこと、ありますか?

同じ国産でも、産地や品種の違いを意識して食べたことはありますか?

漫然と「パインだ」と思って食べていませんか?

「アメリカ産と国産の違いが明確で、高価でも喜ばれるサクランボのような果実になれば……」と、竹内さん。

国産パインの旬は、石垣島産なら6〜7月、本島産なら7〜8月。1年で最も美味しいシーズンを迎えます。沖縄で生まれた、沖縄でしか栽培されていない、個性豊かなパインアップルたち。その違いを楽しみながら、完熟の美味しい時期を、逃さずに味わいましょう!

取材協力/沖縄県農業研究センター 竹内誠人
文・写真/三好かやの
図版/プラスアルファ

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