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マツのみどり摘みと葉束

公開日:2019.7.18

マツの新芽を「みどり」と呼び、このマツの新芽を摘み取ることを「みどり摘み」と言う。マツ以外の草木の新芽を摘む時は「芽摘み」と言う。新芽がやわらかいうちに指先で芽の部分を摘むことにより、生長を揃え、枝分かれを促す。特に盆栽での芽摘みは春の重要な手入れである。芽摘みの時期が遅れて、葉が展開するようになって茎先端を摘む時は、手で摘むのが困難になり、ハサミで切るようになる。このような場合は「芽切り」と言う。松ではみどり摘みが4月なら、芽切りは6月に行う。芽切りしたのちに発芽する芽は2番芽と言い、芽の伸びが小さいので樹姿をまとめるに好まれる。しかしゴヨウマツは2番芽ができない。

マツのみどりをそのままに生長させると節間が伸長した長枝となる。この枝には葉緑素のない鱗片葉があり、その鱗片葉の節間が伸長する。長枝基部の鱗片葉には腋芽が分化しないが、それ以外の鱗片葉には腋芽が発達して、普通葉を分化して短枝になる。普通葉は展葉すると針葉となり、アカマツでは2針葉の松葉となる。短枝は10個程度の鱗片葉を分化して、最後に2針葉を分化すると活動を停止する。短枝は2針葉しか展開しないので、この針状葉の1組が1本の枝であるとは直観的には理解されにくく、短枝の全体は長枝につく普通葉と誤解される。短枝を構成する針葉数からマツ類を分ける場合があり、2葉松にアカマツ、クロマツがあり、3葉松にダイオウマツ、テーダマツ、5葉松にゴヨウマツ(ヒメコマツ)、ストローブマツがある。マツ科の短枝は葉束とも呼ばれる。

マツ類では主軸の長枝の頂芽優勢が極めて強いので、腋芽の茎頂の活動が抑えられて、2葉の針状葉を伸ばした後は活動を停止して極めて短い短枝となる。若いうちに長枝の主軸が切り取られると主軸の茎頂からの生理的影響を受けなくなるので、束縛を解かれた短枝は長枝へと発達する能力を持つ。すなわち、マツはせん定などによって頂芽優勢が打破されると、二葉の付け根に存在する短枝の茎頂から萌芽枝が誘導される。短枝の茎頂に植物ホルモンの一種であるサイトカイニンを投与しても頂芽優勢の束縛から解除されるので、6月にせん定を行うと同時に葉束に合成サイトカイニンの溶液を噴霧して、それぞれの短枝の茎頂から萌芽枝を発生させることができる。

マツ類は挿し木が困難かつ、挿し穂に短枝を使うと、そのままでは芽が伸びないので挿し穂から成体を得ることが難しい。挿し穂に短枝を使う場合には、合成サイトカイニンを投与してマツの短枝の芽を活性化させて、芽出し葉束にして挿し木を行う。この方法はマツノザイセンチュウ病抵抗性を示す系統の挿し木苗生産に使われている。

『農耕と園藝』2016年7月号より転載

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