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アブラムシ(アリマキ)

公開日:2019.7.25 更新日: 2021.5.12

アブラムシは植食性の害虫であり、アリマキ(蟻巻)とも言い、アリが取り巻いていることに由来する別名を持つ。
体型は卵形で、大きさは数㎜である。針状の口を植物組織に突き刺し、師管を探り当てて師管液を吸う。師管液は植物の光合成同化産物の輸送液であり、砂糖水である。

アブラムシが作物に被害をもたらす原因は、
強大な繁殖力を持ち個体数を爆発的に増やすので、吸汁量が増大して植物を萎縮させる、
②植物ウイルスを媒介するので寄主植物に植物ウイルス病を発病させる、
③甘露と呼ぶ虫の排泄物は糖分が多いので、これが付着した部位にすす病と呼ぶ黒色のカビを発生させ、外観を損なわせて品質低下や生長阻害を起こすこと、などにある。

この繁殖力を栄養的に支えているのは、アブラムシの体内で共生系を維持している大腸菌に近縁なブフネラであり、この菌が必須アミノ酸や一部のビタミンなどを合成してアブラムシに提供している。

爆発的な繁殖を行う時は、その繁殖方法が胎生単為生殖であって、雌虫が幼虫を直接に産む。
雌雄の交尾による配偶子の受精を介さずに、雌が未受精卵から単独で新個体を生ずる単為生殖ができ、また卵胎生であるので母体中で卵を孵化発育させて幼虫にして産む。この雌虫を胎生雌虫と呼ぶ。

アブラムシの生活環には、有性生殖を行って産卵する世代から始まって、いろいろな生活型を経て卵で完結する完全生活環をとるものと、胎生単為生殖を継続する胎生雌虫の世代だけで完結する不完全生活環をとるものとがある。
幼虫は4回脱皮して成虫になり、蛹の世代がない不完全変態を行う。

完全生活環型

越冬した受精卵から春にふ化した個体は、すべて雌虫となって胎生単為生殖する。
この孵化した最初の雌虫は幹母と呼ばれ、1世代限りの生活型である。幹母から生まれる幼虫はすべて雌であり、成虫になると胎生単為生殖する。この胎生雌虫が夏の間に爆発的な繁殖を繰り返す。
秋には卵を産む雌(卵生雌虫)と雄虫が出現し、卵生雌虫は交尾して受精卵を作り、寄主植物に産卵して卵で越冬する。

不完全生活環型

両性個体は出現しないで胎生雌虫のままで越冬する。
アブラムシは完全生活環が一般的であるが、生息に好適な環境下や地域では、同じ種類であっても不完全な生活環を営む種が多い。

アブラムシの単為生殖世代では、主に翅のない無翅型が増殖するが、個体数が増えすぎて生息環境が悪化すると、翅の生えた有翅型が生じ、飛行して新たな寄主に移動し、そこで単為生殖を再開する。
雄虫は有翅型であるものが多く、卵生雌虫は無翅型が普通である。

『農耕と園藝』2016年8月号より転載

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