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自根苗と接ぎ木苗

公開日:2019.8.15 更新日: 2021.4.27

自根

園芸植物の種子を発芽させて根とシュートを発達させ、苗として流通させる時、これを実生苗という。
挿し木、取り木、接ぎ木、株分けなどを行って発根と出芽をさせて苗にしたものは、用いた栄養繁殖体に苗あるいは苗木の言葉を付して、挿し木苗接ぎ木苗木などと呼ぶ。
実生では胚軸の両極が生長してシュート系と根系になるので、胚軸に連なる自前の根であり、接ぎ木苗を除いた繁殖体由来の根はシュートから発生している自前の根であるので、これらを自根と呼ぶ。幼根に由来する定根であるか、シュートから発生した不定根であるかは関係なく、ともに自根である。

自根の木本植物自根樹ともいう。接ぎ木苗の根は台木の根であって、生長している穂木のシュートに由来しないので、他根苗あるいは他根樹と呼ぶべきであるが、この呼び名は用いられていない。

自根苗に対応する用語としては接ぎ木苗が使われている。接ぎ木では自根で生育している個体を台木にして、そのシュートを穂木という他の個体に取り替えるので、台木自身は自根苗といえる。
しかし、フジやボタンなどの根接ぎ苗は、台木は他個体の根であってシュート部位は存在しないので自根苗的な要素はない。

定根と不定根

植物の種子には幼根が形成されており、発芽して種皮の外に出てくると初生根といい、さらに発達すると主根あるいは直根と呼び、主根内部に起源する側根が発達するようになる。
この幼根に由来する根のグループ種子根あるいは定根と呼ぶ。

一方、幼根以外から発生する根不定根といい、茎や葉などから内生的に発生する。
この根は茎の節から発生することが多く、節根と呼ぶ。
単子葉植物では種子根は短命であって、節根が発達してひげ根状になる。シダ植物は茎から不定根だけを発生する。

果樹の接ぎ木苗

主要果樹の苗木は接ぎ木で供給される。台木が実生苗であれば、根系は直根と側根からなる定根で構成された接ぎ木苗になる。
この種には
モモ(台木は野生モモか栽培種の実生)、
ナシ(ホクシヤマナシかニホンナシ)、
カキ(栽培種かマメガキ)、
クリ(栽培種かシバグリ)、
カンキツ(カラタチ)、
ビワ(栽培種) などがある。

台木が挿し木苗か取り木苗であれば、不定根で根系が形成される。
この種には
リンゴ(台木はマルバカイドウわい性台)、
ブドウ(フィロキセラ抵抗性台) などがある。

実生と挿し木苗がともに台木に使われる種には、
スモモ(モモ、野生モモ)、
ウメ(野梅)、
オウトウ(マザート実生、マザクラ挿し木) がある。

しかし、主要果樹でも高濃度炭酸ガスと好適な光条件下の組織培養によって挿し木苗が生産できるので、挿し木増殖した栽培品種の自根苗木の生産も考えられている。

『農耕と園藝』2016年11月号より転載

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