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「平成を振り返る! 令和の時代に向けて」 〜 業界外のトレンド、花のトレンド・サイクル 〜 セミナーリポート その2  一般社団法人 日本フローラルマーケティング協会

公開日:2019.7.30

『花のトレンドはなぜ巡ってくるのか』

株式会社大田花き花の生活研究所 内藤育子さん

一般社団法人日本フローラルマーケティング協会で開催された「平成を振り返る! 令和の時代に向けて」と題した定例セミナーのレポート第2弾をお届けします(2019年6月18日開催)。トレンドはどうやって作られていくのかを大田花き花の生活研究所・内藤育子さんが解き明かします。

平成のトレンドの移り変わり

昭和から続いた“モノ消費”は、平成のバブル景気崩壊で終わりました。1997年頃から日本のGDPが伸びなくなり“コト消費”に切り替わったといわれています。さらに、今は“トキ消費”になりました。今この時にしか買えないもの、オリンピックのチケットなどがいい例ですね。また、東日本大震災をきっかけに“絆消費”に変わってきているとも思います。

この経済環境を受けて、1世帯当たりの切り花の支出金額は1997年をピークに下降していきます。切り花の全国生産量も2018年にはピーク時から22億本減少。1年で1億本ずつ減った計算になります。こういったデータから花業界が下降したことばかり取り上げられますが、私はそれがすべてだとは思っていません。種苗、生産、流通といった業界全体がこの状況を問題視して活動が盛んになりました。日本フローラルマーケティング協会や花の国日本協議会も誕生しています。

もう1つ、平成での大きなチェンジは、一般の人がどこで花を買っているか、ということです。1994年には、70%が生花専門店で買っていて、スーパーでの購入は3%でした。ところが、この後のデータによると、生花専門店での購入率よりスーパーでの購入率が上がり、2019年まさに今年、スーパーと生花専門店が逆転することが試算されています。また、一般の生活者はどこに花が欲しいと思っているかというアンケートを取った結果、自宅が圧倒的多数でした。こうしたトレンドに合わせて商品を供給していかなくてはいけないのですが、花の生産は農業であって、農業は新しい品種を誕生させてからマーケットに出すまでに時間がかかりますよね。そうなると、トレンドを先読みしていかなくてはなりません。トレンドの推移を読み解くには“感性工学”がキーとなります。人々の好き嫌いや感性を予想してサービスや商品の提案に活かすという学問です。今日は、これを元にお話させていただきます。

デジタル期とアナログ期

トレンドの源は何かというと、“飽きる”という脳の性質です。飽きることにはいいイメージはありませんが、最近の研究では、飽きるのは疲労のサインで、飽きることでその作業をやめて過労を未然に防ぎ、人の生存の可能性を増やす脳の特別な機能といわれています。こうした個人個人の“飽きる”意識が集まって生活者全体の意識傾向になり、そこから生み出される商品や社会現象を“流行”と呼んでいます。この流行は二極化されていて真逆のところを行ったり来たりします。例えば、女性的なものを好んだら次は男性的なものを好む、都会的なものを好んだら次は自然的なものを好む、といった形です。この相対する二極をアナログ期とデジタル期という言葉で表現していきますね。

行ったり来たりの繰り返しにはマジカルナンバーがあります。それは“7”です。例えば、曜日の数や、「なくて七癖」「七つの海を征服」といった使われ方をするように、7は「ひととおり」「1周した感」を思わせ、無意識のうちに、飽きたから次にいこうと思わせるナンバーなのです。

流行のサイクルであるデジタル期とアナログ期には、それぞれ黎明期、成長期、展開期、終焉期の4つのブロックがあるとされ、このブロックは7年と考えられています。1つのサイクルは4ブロックで28年、デジタル期とアナログ期の2サイクルで56年、これで1周と考えます。1971年から1999年はデジタル期でした。1999年で切り替わり2027年までがアナログ期となります。

では、デジタル期とアナログ期がどういう時代だったかを見ていきましょう。デジタル期(1971年から1999年)は、人々の思考・マインドが合理的で都会的になりました。男性脳になり、スピードや効率を重視して、働くモード。経済も成長しバブル好景気となりました。デザインは、直線的で幾何学的なものを好みます。ファッションでいえばワンレン・ボディコンですね。自動車も、四角いフォルムのものが人気となります。こうしたデジタル期は“直線期”という言い方もできます。流行語は「24時間戦えますか」(ドリンク剤「リゲイン」のキャッチコピー)でしたね。エリート志向が高まり「3高(高学歴・高収入・高身長)」の男性がもてはやされました。

一方、1999年からは真逆のモードのアナログ期になります。思考・マインドは女性的、自然志向になり、競争をやめて休みましょうという意識になります。経済環境も後退し、日本は失われた20年といわれ失業率もアップ。デザインは曲線的・不規則で自然な感じを好むようになります。自動車も、動物や昆虫を思わせる曲線を多用したデザインになり、ファッションも、デコラティブ・装飾的なものやふんわりした立体的なものに変化していきました。芸能人の構成も、デジタル期には山口百恵さんや松田聖子さんのように手の届かないアイドルをプロデュースすると売れたわけですが、アナログ期には、クラスで10番目にかわいい女の子をコンセプトにしたAKB48が誕生し、手が届く等身大アイドルが人気となりました。マインドが自然志向、内面重視になるので、売上だけを考えるのではなく環境や地域のことも考えましょうというモードになります。ヒットソング「世界にひとつだけの花」が生まれ、理想の男性像が「3高」から「3低(低依存・低姿勢・低リスク)」になり、ドリンク剤「リゲイン」も「その疲れにリゲインを」「たまった疲れに」「疲れに効くにはわけがある」という休むためのキャッチコピーに変わりました。こうしたアナログ期は、デジタル期を“直線期”と呼ぶのに対して、“曲線期”と呼んでいます。

では、今は何期なのかというと、アナログ期の中の展開期となります。チェンジの時は2013年で、これまでのお休みモードから、そろそろ立ち上がって何かやろうよという気運に変わりました。2013年以降に何があったかというと、経済環境が完全に良くなったわけではありませんが日経平均株価が回復基調になり、女性のファッションもふんわりやさしい印象のものからタイトスカートやおじ靴といった男性的なものを取り入れるようになりました。テレビドラマでは、会社に立ち向かっていく主人公が活躍する「半沢直樹」が2013年にヒット。クイズ番組では、それまでおバカキャラのタレントさんが活躍していたのが2013年を過ぎてからインテリ系が出演するようになりました。こうしたアナログ期の変化(転調)が見られる展開期は2020年までなので、そろそろ終わりになり、2027年にはアナログ期自体が終了します。

花のトレンドはどう変化したか?

ここからは花のトレンドの移り変わりを見ていきましょう。デジタル期には、花のデザインも規則的、直線的、人工的、幾何学的でした。カーネーションやバラを規則的に配置して周りをふんわりと埋めて大きく見せるデザインが中心で、花をいかに定位置に挿すかが技量の評価にもなりました。雑誌では、カスミソウやブプレリウムなど空間を埋めてアレンジを大きく見せる花が紹介され、縦のラインを作る花としてグラジオラス、デンファレ、フリージアなどもたくさん掲載されていました。ボリュームを出せるカスミソウはデジタル期のヒットアイテムの1つでもありました。

1999年のアナログ期を迎える頃から花の業界も変わっていきました。ヨーロッパのフラワーデザインが上陸し、国内でも参考にするようになりました。クリスチャン・トルチュさんや、ジェーン・パッカーさんがご活躍された頃ですね。若手のフラワーデザイナーさんもヨーロッパに修行に行き、西洋風のラウンドスタイルが広がっていきます。曲線期ですから、こんもりと丸く、生け花のように表と裏を作るのではなく360度どこから見ても美しい形に仕上げます。上から見ることが基本なので、面を確保する花径の大きな花、たとえばアジサイやダリアなどが多用されました。不景気で花材費も節約しなくてはならないのでバラを10本入れるより、アジサイを1本ポンと入れたほうがアクセントになりますし、場合によっては仕入れコストも下がり、何より仕事が早いですよね。2006年から2013年までの成長期には、ボリュームあるデザイン傾向がさらに加速していきます。グリーンは少なめにして同系色でまとめるデザインが多用され、キーワードはフェイスが大きい、立体的でドーム型、八重であること、アンティークカラーなど。人気の花は、八重のトルコギキョウ、大輪のラナンキュラス、シャクヤク、カップ咲きのバラなどでした。

2013年に、アナログ期の成長期から展開期に変わりました。人気の花にも変化が見られます。それまでの“盛る”感じに飽きたのでしょう、野の花や草花を使ったデザインが主流になっていきました。2014年、2015年頃にトレンドセッターのある生花店さんに流行のブーケをお願いしたところ、シャンペトルのブーケを作ってくださいました。シャンペトルとはフランス語で「田舎風の」という意味です。草花を無造作に束ねた感じがシャンペトルで、メインとなる大輪の花や脇役の花という概念のない、野趣味あふれた印象です。雑誌「フローリスト」でも2013年にシャンペトルの作り方のCDを付けて販売されていましたし、この頃にトレンドが変わったと考えています。人気の花のキーワードも、大輪から中小輪へ、野趣味あふれる雰囲気、八重より一重か花弁の少ないもの、柔らかなカーブを描くものに変わっていきました。

飛躍したナズナとカスミソウの人気

このようなトレンドの変化によって新たにヒットしたものがたくさんあります。1つはナズナです。以前は、市場に出しても商品価値が低いとされていましたが、2013年以降はナズナで作ったリースやウエディングブーケが登場しました。ナズナだけを束ねてリビングに飾ることもあります。もう1つはカスミソウです。かつてのカスミソウブームが終わってからは店頭に置かない生花店もありました。しかし、最近は品質が良くなり、積年の生産者さんや種苗会社さんたちのご尽力により、ひと昔前のカスミソウを知らない若い世代がカスミソウの新しい魅力を楽しんでいます。カスミソウだけのウェディングをしたり、雑貨店で染めのカスミソウが使われていたり、AKB48の卒業式で使われたりしています。

改めて2013年以降のアナログ展開期のキーワードをご紹介すると、なんといってもナチュラルが中心にきます。その他に、ドライ、アンティークカラー、シャビーシック、マルチカラーがあります。人気の花を2014年から2018年の大田花きトレンドマップにまとめると、2012年までと比べ、品目によって取引の伸び率が大きく変化していることがわかります。草花の人気が世の中に広がる時代が到来したわけですね。

イノベーター理論の活用

このように、トレンドは7年単位で変わっていくわけですが、この変化をどのように取り入れていくとよいか、ご提案させていただきます。マーケット全体を三角形だとすると、トレンド変化の影響を受けやすいのは三角形の頂点ですが、最初に流行を取り入れるのはリスクがありますよね。そこで、“イノベーター理論”を使ってはいかがでしょうか。

イノベーター理論では、トレンドに敏感でトレンドを作っていくイノベーターと呼ばれる人はマーケット全体の2.5%で、次にトレンドに敏感なのはアーリーアダプターと呼ばれる13.5%の人だといわれています。この割合を、これから販売するものや生産にチャレンジしようと思っているものに活用するのです。ハンドルの遊びといいますか、ちょっとやってみようと思うものは、全体数の2.5%から16%くらいにおさめてみるのです。また、トレンドに関係なく自分の好みのものを作ってみたいという方も、2.5%から16%におさめて、残りの80%くらいは社会に求められている商品や定番商品を作る、という考え方です。

次のトレンドに向けて2027年までにやること

現在のアナログ期から次のデジタル期に切り替わるのは2027年です。その時のトレンドを見据えて今やるべきことは、かつてうまく販売できなかった一重、小輪、シャビー系、縦ラインのもの、草花系、野趣味あふれるものを出荷してみることです。そして、街が変わってきた、テレビ番組が変わってきたと感じたら花のトレンドも新しいものが生まれているかもしれません。トレンドセッターとなる生花店を訪問して観察してみましょう。また、仮説を持つことも大切です。大輪が復活することもあるでしょう。その時のために大輪の種苗はとっておくといいかもしれませんね。そして、何を売るかということと同時に、どう売るかも重要になってきます。そのためにも社会の動向はしっかり見ていくとよいのではないでしょうか。

参考文献「なぜ、人は7年で飽きるのか」
黒川伊保子・岡田耕一/著

取材協力/一般社団法人 日本フローラルマーケティング協会
取材・文/高山玲子

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