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「平成を振り返る! 令和の時代に向けて」 〜 業界外のトレンド、花のトレンド・サイクル 〜 セミナーリポート その3 一般社団法人 日本フローラルマーケティング協会

公開日:2019.8.5

パネルディスカッション『平成を振り返る! 令和の時代に向けて』

<コーディネーター>
法政大学経営大学院教授 日本フローラルマーケティング協会会長 小川孔輔さん
<パネラー>
マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹さん
株式会社大田花き花の生活研究所 内藤 育子さん
JA会津よつば 菅家 博昭さん

 

これまで2回にわたりお届けしてきたセミナー「平成を振り返る! 令和の時代に向けて」。最後は、辻中俊樹さん、内藤育子さん、そしてJA会津よつばでカスミソウ栽培を手がける生産者の菅家博昭さんが加わってのパネルディスカッション。それぞれの立場から見る花のトレンドについて語られました。

 

小川 菅家さんは、福島県昭和村で長くカスミソウを生産されていて、最近はユーカリなどの草花も栽培されています。日本フローラルマーケティング協会の発足当時から参加していただいています。自己紹介をお願いできますか。

菅家 福島県会津地方の雪国で切り花生産をしております。花の栽培の他に、多くの産地の生産者さんのインタビューをして、その土地での暮らしや何百年にも渡ってどのように生計を立ててきたのかなどを調査しており、今日は辻中さんと内藤さんのお話をうかがって納得することがいろいろありました。
内藤さんのお話の中で、草花がトレンドになっているとお聞きしましたが、トレンドの花は儲からないというのが一般的で、少数の生産者しか栽培していないのですが、それが平均の販売数より上位にあるというのはやはり衝撃でした。その背景には、この20 年の間に日本フローラルマーケティング協会が鮮度保証プロジェクトやバケット流通、低温流通などのインフラを整え、お花屋さんが草花を扱えるようになったことがあると思います。しかし、畑で花を採って出荷する際の水揚げの技術がほとんどなく、ユーカリの頭がしおれたりすることもあります。品質管理のプロジェクトを3年間やっていますが、まだ課題がありますね。でも、課題がある業界というのは伸びる要素があるということだと考えています。

小川 トレンドが草花になっている傾向は、世界的に見てどうでしょうか?

内藤 世界的なトレンドだと思っています。私はインスタグラムなどのSNSでいろいろな国のフラワーデザイナーさんをフォローしているのですが、イギリスやロシアなどで流行ったものが同時多発的に日本でも共有されています。画像を見ただけではどこの国のデザイナーさんなのかわからないほどです。

菅家 2014年の1月に日本フローラルマーケティング協会のヨーロッパツアーでドイツのIPMを視察した際、パリのいちばん古いフローリストと量販店、その両方でイスラエル産のタラスピ(ナズナ)を扱っていたんですね。こんな雑草まで売るようになったのかとその時は思いましたが、日本でも輸入していますし、種苗会社の方々も積極的に販売されているのを見ると、内藤さんと同じように世界のトレンドだなという気がします。

小川 辻中さんもシニアの方が草花に出会っているというお話をされていましたが、日本だけのことなのか、グローバルな標準なのか、いかがでしょうか?

辻中 僕が感じ取っているところでいうと、私や小川先生の世代では、草花は幼き頃から視線に入っている慣れ親しんだもので、原風景に近いものだと思います。シニアは、自然の中を自由に歩く時間ができるので草花を再認していて、60年以上たっても変わらないものだと感じています。また、こういうことも考えられます。私の子どもは30〜40代で、孫は6〜7歳ですが、孫たちにとってはナズナもダリアも初見です。見たことがないものをどのチャンスでどういうふうに見るかで、彼らの原風景になります。そして私の子どもたちは、どのチャンスで再認し、初見するか。わかりやすくいうと、これは3世代の世代間でいろいろなものが流通していくという経路の開き方です。シニアには再認であり原風景であるものが、孫には初見だったり。また、シニアには原風景でないものが30〜40代には原風景だったり。これは要するに、3世代が交流することによって初見したり再認したりするということなんです。例えば、最近はモッコウバラがあちこちで咲いていますが、これは、うちの娘たちは良く見てきた原風景なんですね。でも、孫たちにとっては初見です。そして僕たちは「最近良くモッコウバラを見るよね」と感じている。こうしたことが、世代間のコミュニケーションと日常的な流通として普遍化していくと考えています。内藤さんの講演のなかで、アーリーアダプターのお話がありましたね。一般的には若い世代がアーリーアダプターになるといわれていますが、僕はそうではないと思います。例えば、ブライダルブーケにナズナやカスミソウが使われるということは、若い世代にとっては新鮮な驚きのある花なのだと思います。シニアは、そこらへんに生えている草じゃないのと思いながらも、意外とこういう使い方をするとかわいいね、と共感します。標準世帯が減ってシニアが増えるというのは、このように異質な価値と異質な原風景が3世代にまたがることで、規模感をもったトレンドとして生まれてくるのだろうと思います。日本に限らず、こうしたことはグローバルなものではないでしょうか。

小川 日本には、そうした普遍的なものがあり、また、旬や名残りなどもあります。旬や名残りを感じる感性は、四季があるところとないところでは違うものなのでしょうか?

辻中 僕は同じだと思っています。日本は人工環境が整っていますが、それと相反することを行うということが完成されています。エアコンなどが完備され、四季を感じなくてもすむような暮らしをしていますが、なぜかそのなかに旬や名残りをビビッドにリズムに取り入れるライフスタイルがある。日本はそれがやや強く出ますが、日本だけにこだわる考え方ではないと思っています。

小川 世代間の対立軸の他に、もうひとつ、都会と地方というものがあります。都市と地方は違う発展をしてきたように見えるけれど、結局は同じだという議論もあります。菅家さんはどう思われますか?

菅家 東京は緑が多いなと思います。タクシーに乗った時に外を眺めて、「この植物を切ったら売れるな」と思うことも良くあります。一方、私が花の栽培をしているところは、春になると何もなかった山にブナの新芽が吹き、シナの木が銀色に見え、紅葉のような色で葉が出たりと、1週間くらいで急に視界が変わり、その時はみんな山を見ます。ところが、水田や畑の作業に入ると、地面だけを見て暮らし、雨が降れば天を見上げることもあっても中間の森林は目に入らなくなってしまいます。そういう山の中と東京を行き来していると、東京は本当に緑が多いなと思います。
世代間の対立についてのことですが、農業でいうと、例えば私の父は、長年作り続けているカスミソウを私が栽培すると大変喜びます。しかし、ユーカリやダウカスなど他の品目をやると、余計なことをやらずにお金になるものだけをやれ、といいます。このように、日本の生産者は小規模家族経営が多いのに、単品生産だけをしているんですね。それが社会と合わなくなっているのですが、今までやってきたものだけをやるという価値観を変えることができないんですね。そこに気付いてもらいたくて、昨年はセミナーのなかで、複合的に多品目にしていかないと売れませんよとお話しましたが、なかなか通じません。単品目でやっていきますという若い生産者さんもいて、高度成長期のような方法で就農している人が多いな、時代と逆行しているのではないかなと感じています。

小川 花とは違う業界のことでいうと、平成30年間の結論のひとつが、コンビニの問題ですね。5万6000店舗すべて同じものを売る、同じおにぎりを売るという世界がありましたが、働き方、供給の仕方も含めて限界にきている。でも、いいソリューションもないので変えることができない。花の業界でいうと、内藤さんの講演では、栽培技術が確立して作りやすくて、直線的で効率良く大量にさばけて、というものに飽き飽きしているという絵に見えたのですが、どうでしょうか?

内藤 そうだと思います。80年代に画一的に量産できた花の手法を引き継いで、1999年以降も人々のマインドに合わせたものを作ったけれど、2013年からそれが通用しなくなる大きなマインドチェンジがありました。都市化にも関係しているのかもしれません。実は、今後の花業界のキーワードとして「SCOUT(スカウト)」というものを提案しています。単語の頭文字を並べた言葉なのですが、「S」はシェアリングエコノミーやサブスクリプション。「CO」はコミュニケーション。これは、今はSNSが流行っていてもそのうちインスタ疲れなども出てくるでしょうし、face to faceでものを伝える時に花が使えるようになればということです。「U」はアーバニゼーション、都市化です。都市化が進むほど花の需要が増えていくのではと考えています。人はビルディングのなかだけでは生きていかれませんね。人類700万年を24時間にたとえると、23時間59分何秒かまでは森のなかで生きてきて、産業革命以降に都市に出て、知らず知らずのうちにすごいストレスを受けているわけです。だからこそ、都市化が進むほどに緑を求める気持ちは高まり、特に都市部では野趣味あふれるものが求められていくと思います。そして、最後の「T」はテクノロジーですね。

小川 世界的に見ても都市化がどんどん進み、人口の都市集中度ももっと高まるといわれていますよね。ますます自然が必要になるということですね。

辻中 菅家さんの先程のお話の延長線上でいうと、東京よりもたぶん会津のほうが家庭の冷蔵庫の容量が大きいと思うんですよ。電子レンジも地方にいいものが流通しているし、車も2〜3台、エアコンも機能の高いものがあると思います。そういう普遍的な環境という意味では都市も地方もなく、当たり前に整っているんです。ただ、こうしたサイエンスとテクノロジーによって価値のある世界は作れても、限界があります。そこを埋めるのが、例えば、今日は夕陽がきれいだからこれを食べてみようとか、いい日本酒を飲んでみようとか、そうした自然のリズムとのシンクロです。これが人間を支えます。そういったことは、花業界が率先して担っていけるだろうと思いますね。菅家さんのお話のように、東京は確かに緑が多いですね。近所のおばさんとも良く会話をします、ユキヤナギがやっと咲いたね、ヤマブキもきれいね、と。季節の変化を見ていて、自然のリズムを作っているんですね。
もっとおもしろいのは、5月の晴れた日はおうち焼き肉のチャンスだということです。焼き肉は焼き肉屋さんに食べに行くけれど、車で行くとお酒が飲めない、でも夫婦2人で飲みたい、それなら家で焼き肉をしようと。でも、家で焼き肉をすると煙ってくさくなるのでいやですよね。そこで、5月は絶好のおうち焼き肉のチャンスなんです。寒くないから窓を全開にし、扇風機も出してあるから外に煙を飛ばせるんです。そして、夫婦2人がお酒をたくさん飲んでべろべろに酔っぱらうという、そういうシーンが5月にはあるんです。こういう感性って花にも通じることですよね。花は価値のある産業だし、小売店よりスーパーに売り場が変わっているのだったら、旧態依然としているスーパーではお客様に届かないかもしれませんね。

小川 モノ日に対応した売り方はしているけれど、日々のそういった変化に対応する売り方は、お花屋さんはあまりしていないのでしょうか?

菅家 かつて、ある花店の社長は、気温や、雨が降るか太陽が出るかによって売り場の花の置き場所を変えていました。同じ花をストックしているのですが、それを同じ場所に置くのではなくて、今日は春を感じるから後ろにあった花を前に出すというように切り替えていました。午前と午後に必ずそれをやるんです。そうすると、お客さんが店頭に来て、これがまさに欲しかった、となるわけですね。

内藤 辻中さんがおっしゃるとおりで、52週のマーチャンダイジングという意味では、花業界は食品業界より遅れているなと思っていました。52週のフェアをやる時に、なぜこの週にこの花を売るのかを考えると、旬だから、なんです。この花があるから売るというのはプロダクトアウトの考え方かな、と思っています。その手法より、この時期にこの花があるとこういう気持ちになる、それを消費者に楽しんでもらうという提案に変えられるといいなと思っています。弊社の「花のビジネス手帳」には、そうした52週のアイデアを載せています。

辻中 食品業界の52週のカレンダーに追随するのではなく、むしろ旬の花を軸に年間を当て込みながら、暮らしのなかにどういう価値が生まれるか、といった提案をされたほうがいいと思いますね。3世代が緩やかな対立と緩やかなコミュニケーションをしているのですから、世代間を越えたギフト、カジュアルな“あげたりもらったり”の提案です。その価値を支えるのは、自分が体験していいと思ったものをあげたりもらったりすることです。「うちにこの花があってすごく素敵だったから、あなたのうちにもあげるわ」とか、「うちのおばあちゃんはナデシコが好きだから、母の日でもないけどナデシコをあげよう」「おばあちゃんがランドセルのお金を半分出してくれたから、お返しにお花をプレゼント」など、そういった考え方で良いのではないでしょうか。

取材協力/一般社団法人 日本フローラルマーケティング協会
取材・文/高山玲子

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