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一次皮層の剥離と根の肥大

公開日:2019.10.24

双子葉植物と裸子植物は生長にともなって根も肥大生長し、その根に栄養を貯蔵する。肥大の著しい根を貯蔵根といい、その肥大した形状は円錐状(ダイコン、ニンジン、サトウダイコン)、カブラ状(カブ、テーブルビート)、紡錘状(サツマイモ、ダリア)を示し、紡錘状の貯蔵根は特に塊根という。ニンジン、ダイコン、カブ、ゴボウの貯蔵根は直根(主根)が肥大し、その肥大が胚軸やその上の茎にまで及ぶ。カブ、ハツカダイコン、テーブルビートでは、根ではなく胚軸や茎の部分が著しく肥大する。サツマイモやダリアの塊根はすべてが根である。

ダイコンの根やカブの胚軸が肥大を開始すると、肥大部位にある幼苗時に形成された一次皮層が表皮とともに剥離する現象が起こる。これは肥大にともなう内部組織の形態的変化に対応できなくなったために起こる現象であり、一次皮層の剥離あるいは剥脱ないし脱離と呼ぶ。この剥離は普通葉が4~6枚展開時以降に発生する。根が肥大する場合には皮層脱離は根の上部に始まり、上下に拡大する。胚軸では子葉節を結ぶ横断面と直交する方向の下部で亀裂が始まり、皮層脱離は胚軸の下部から始まる。なお、双子葉植物において根が肥大するものは、その様式に差はあっても、すべて生育の初期に一次皮層の剥離が起こる。

根を横断面でみると、外側の表皮、中央部の中心柱、表皮と中心柱の間の皮層と呼ぶ3つの基本的組織が認められる。表皮は一般には一層であり、根の加齢とともに脱落する。中心柱は、水やその他の物質の通り道である維管束が分布する。皮層は表皮のすぐ内側の細胞層から内皮と呼ぶ中心柱のすぐ外側にある細胞層までをいい、柔細胞で構成されている。

肥大する根では一次木部の分化が完了した頃に、一次木部と一次師部との間に維管束形成層(単に形成層ともいう)が分化して肥大が始まる。中心柱が発達するのにともない、分裂や生長を行わなくなっている一次皮層内部の細胞は、圧迫されてひずみ、裂け目を生じ、破生細胞間隙が生じる。この間隙はやがて中心柱周囲全面に広がり、ついに一次皮層は表皮とともに脱離する。

一次組織とは根やシュートの頂端分裂組織から作り出された細胞によって構成された組織をいう。側部分裂組織からの細胞で構成される組織は二次組織という。側部分裂組織である維管束形成層は二次の維管束組織を作り、コルク形成層は主に根や茎の最も外側を保護するコルク組織を作る。コルク形成層とコルク形成層が作る部分はまとめて周皮と呼ばれる。周皮は表皮に代わって植物体の表面を覆う組織になる。したがって、一次皮層と表皮が剝がれた貯蔵根の表面は周皮で覆われる。

『農耕と園藝』2017年10月号より転載

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