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リンゴのカラムナータイプ

公開日:2019.11.7 更新日: 2019.11.8

果樹や花木などの樹木では、花や果実あるいは樹の成育特性などの形質が異なる枝が発生することがあり、これは遺伝的に変異した体細胞で構成された芽に由来するもので、芽条突然変異あるいは枝変わりという。果実の形質が有用な果樹の枝変わりは、接木繁殖して品種として成立している。樹形の変異も枝変りで発生するが、果実ではないので有用な形質とは評価されにくい。

リンゴのカラムナータイプと呼ばれる円筒形の樹形を示す変異は、側枝や節間の長さが極めて短く、枝が横に広がらずに、極細円筒形のいわゆる棒状の樹形に生長する。側枝の発生が少ないので、花芽を分化する短果枝の多くは主幹に直接に形成され、果実が実ると主幹についているように見える。

カラムナータイプは他の樹種で存在するほうき性の樹形と同類である。ほうき性を構成する側枝が極端に短くなり節間も短縮し、箒の幅が狭まった円筒形状の樹形といえる。この変異はマッキントッシュ(McIntosh、日本での品種名「旭」)の枝変わりとしてカナダで発見され、品種名をウィジック・マッキントッシュ(Wijcik McIntosh)と登録され、ウィジックあるいはワイジャックの愛称で呼ばれている。

リンゴのわい性台木を開発したイギリスのイーストモーリング研究所がこの品種を親にして品種改良に取り組み、1980年代に登録品種として「メイポール」、「テラモン」、「トラジャン」、「タスカン」を世に出した。これらのカラムナータイプの品種群はバレリーナの名称をつけて呼ぶことにして、この名称を商標登録した。さらにメイポール以外の品種にも商標名をつけたので、同じものが2つの名前で流通している。すなわちテラモン(ワルツ)、トラジャン(ポルカ)、タスカン(ボレロ)であり、かっこ内が商標名である。

この3品種は生食用品種とワイジャックの間の交雑種であるが、メイポールはクラブ・アプル(姫リンゴ)との交雑種である。この性質は、後代に遺伝する単一の優性遺伝子によって支配されていることがわかり、品種登録で保護される育成者権の期限が切れて、各地でカラムナータイプの品種育成が試みられている。わが国ではメイポールと「つがる」および「ふじ」との交雑から、赤肉系でカラムナータイプの品種として「カラムナールージュ」、「レッドセンセーション」が、自然交配から「メイちゃんの瞳」が登録された。

カラムナータイプは樹体構造が単純なため、剪定や収穫作業が極めて容易になり、管理作業の機械化と組み合わせた省力栽培が可能になると期待されている。リンゴではわい性台木に接ぎ木して樹形を細型紡錘形にして、密に列植する垣根仕立て栽培が行われるようになり、この栽培に適した樹形として円筒形やほうき性が注目されるようになった。

『農耕と園藝』2017年12月号より転載

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