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機能性農産物で作る「NARO Style® おむすび弁当」 農研機構と(株)イワイが開発

公開日:2019.10.3

農研機構は、機能性成分を多く含む農産物を使用した「NAROスタイル® 弁当」を開発しました。12週間、平日の昼間に「NARO Style® 弁当」を継続して食べることで、内臓脂肪面積が減少することが認められています。
今回、農研機構と(株)イワイは、「NARO Style® 弁当」にも使用された大麦「キラリモチ」を用いた「NARO Style® おむすび弁当」を開発しました。この弁当は、9月24日(火)~12月13日(金)までの12週間、おむすび権兵衛 農林水産省店において一般販売します。それにさきがけ、9月19日(木)農林水産省にておむすび弁当の説明・試食会が開催されました。機能性に特化した新しいスタイルの弁当開発に関する講演をご紹介します。

「NARO Style® おむすび弁当」

農研機構が開発した「NARO Style®弁当」等について

農研機構 企画戦略本部 研究管理役 山本(前田)万里 氏

食品表示法に定められる保健機能食品には、①特定保健用食品(トクホ)、②栄養機能食品、③機能性表示食品があります。なかでも機能性表示食品は、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品に機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です。トクホのように、食品ごとに安全性や有効性に係るヒト介入試験は必要なく、文献評価(システマティック・レビュー)が認められています。健常人や未病者の健康維持・増進に関わる部位表現も範囲となるのがトクホとの大きな違いです。さらに生鮮食品の表示を認める海外に例のない制度として、注目が高まっています。

農研機構 利用できる公開研究レビュー

http://www.naro.affrc.go.jp/project/f_foodpro/2016/063236.html

農研機構 山本(前田)万里氏

機能性表示農産物とは

2019年9月18日現在、機能性表示食品の生鮮食品で届出受理された食品は、ミカン(β-クリプトキサンチン)、メロン(GABA)、ホウレンソウ(ルテイン)など37食品あります。

静岡県の「三ヶ日みかん」は、β-クリプトキサンチンが骨の健康に役立つとして、三ヶ日町農協が提出。青森県はリンゴ「プライムアップル!(ふじ)」に内臓脂肪を減らす機能があるとしています。もうひとつ、静岡県の「クラウンメロン」があります。メロンに含まれるGABAにストレス緩和機能があるとしていますが、このような高級メロンをいただいたら、食べる前にストレスが緩和される気もしますね(笑)。

野菜・果物以外でも、三重県の「伊勢の卵」は、EPA、DHAが中性脂肪値を下げる機能があるということで届出受理されています。また、生鮮食品に近い届出品目では、緑茶「べにふうき」(メチル化カテキン)、大麦(大麦β-グルカン)などが受理されています。「べにふうき」緑茶は、メチル化カテキンが含まれ、ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減することが報告されています。

農研機構では、機能性農産物品種の開発に取り組んでいます。大麦「キラリモチ」、「ダイシモチ」(β-グルカン)、カンキツ「温州ミカン」(β-クリプトキサンチン)、茶「べにふうき」(メチル化カテキン)や他にも米や野菜全般についても研究を進めています。品目によってはヒト介入試験を行っているものもあります。

ヒト介入試験を行っている品種のなかから、大麦「キラリモチ」(β-グルカン)単体の試験結果をご紹介しますと、内臓脂肪面積100cm2以上の人で、高β-グルカン大麦キラリモチを摂取(キラリモチ50%、白米50%)したグループのほうが、高β-グルカン不含大麦を摂取したグループに比べて、内臓脂肪面積が低下しました。体重、BMI、腹囲も減少したという結果が得られました(Aoe et al., Nutrition 42:1-6(2017))。

機能性農産物を組み合わせたレシピ開発

単品の農産物の機能性解明が進んできましたので、農研機構は次のステップとして、農産物を複合的に組み合わせることによる健康維持・増進効果について検討することにしました。ヒト介入試験結果を基に、機能性農産物を組み合わせた「機能性弁当」の開発に取り組みました。

この機能性弁当「NARO Style® 弁当」は、あらかじめ20日分のレシピを作成し、これを3回繰り返して60日間摂取します。機能性農産物は、米飯・おかず・茶を柱とします。米飯は、週5日のうち3日は、白米にβ-グルカン高含有大豆を50%を入れた「50%大麦パックご飯180g」、2日は「表面加工玄米パックご飯180g」。おかずは、主菜、副菜1、副菜2からなり、機能性農産物を使用した日替わりの献立となります。お茶は、高カテキン緑茶である「べにふうき」を摂取しました。

「NARO Style® 弁当」(写真提供/農研機構)

「NARO Style® 弁当」の取り組みは、神奈川県の159人が参加し、平日5日間の昼食用のお弁当として12週間にわたり摂取。試験開始前後の内臓脂肪面積、血糖値などを比較しました。

こういった健康食といったものは「お腹がすく」というイメージがありますが、「NARO Style® 弁当」はカロリー(約680~700Kcal)もしっかり摂れるように設計されているため、継続して食べやすいように作られています。

結果は、内脂肪面積は、すべての群の平均で6週間、および12週間で10cm2(約7%)減少しました。今回の試験では性差がみられ、女性が機能性米飯を摂取すると、他の機能性農産物より顕著に内臓脂肪が低下した、という結果が得られました。

この結果を見ますと、将来的に、例えば企業内での健康管理システムの提供、用途別機能性食品・弁当・健康管理サービスといったビジネスの可能性を見出すことができるでしょう。

「NARO Style® おむすび弁当」一般販売

5月から「NARO Style® 弁当」の12週間チャレンジを行い、次なるチャレンジは、今回ご紹介する「NARO Style® おむすび弁当」です。さきほどの「NARO Style® 弁当」にも使用された大麦品種「キラリモチ」を使ったおむすび弁当になります。べにふうき茶とあわせて摂取することで、「NARO Style® 弁当」と同様の効果が期待されます。「NARO Style® おむずび弁当」のおかずは、機能性成分を多く含む農産物ではなく、一般の食材を使います。

この「NARO Style® おむすび弁当」は、9月24日(火)~12月13日(金)までの12週間、おむすび権兵衛  農林水産省店において一般販売されます。(1日10食限定)

また、一般販売とは別に、農林水産技術会議事務職等の幹部職員を含む15名の職員が、12週間の平日に「NARO Style® おむすび弁当」を食べ、期間前後と中間に体脂肪率等を計測する「12週間チャレンジ」を実施します。今回は、その取り組みにさきがけて、「NARO Style® おむすび弁当」の試食をご用意しました。

素材にこだわったおむすびを提供

株式会社イワイ 岩井隆成 氏

おむすび権兵衛は、日本一おいしいおむすびを提供したい

株式会社イワイは「日本人にもっとたくさんお米を食べてほしい」という思いから、おむすび権兵衛を起業しました。現在、全国の46店舗を展開しているおむすび専門のチェーン店です。おむすびの販売を通じて、日本の農業に貢献することを目指し、環境保全型農業の推進、日本の食料自給率の向上に取り組んでいます。

(株)イワイ 岩井隆成氏

品質にこだわり、米の産地ごとに、環境保全型農業を推進する生産者とのネットワークを広げています。栽培方法だけでなく、品種にもこだわっています。現在使用している主な米の品種は「コシヒカリ」「あきたこまち」「ゆめぴりか」「ゆきむすめ」「つや姫」などです。

おむすびでβ-グルカンを摂取する「NARO Style® おむすび弁当」

「NARO Style® おむすび弁当」は健康効果が期待できる「キラリモチ」を使用し、あわせる米はできるだけ農薬を使わずに環境に配慮して栽培された福島県産「コシヒカリ」です。「キラリモチ」30%を混ぜて炊き上げた「キラリモチご飯」を260g食べることで、β-グルカンを約2.2g摂取することができます。

弊社のおむすびは1個130gです。130gのおむすび1個ですと「キラリモチ」を約50%を使用しなければ、1日に必要なβ-グルカンの摂取量2gにはなりません。ところが、「キラリモチ」50%だとむすびにくい。そこで、おむすびを2個、ご飯を260gとすることで2g摂取できるようにしました。

「NARO Style® おむすび弁当」

具材は紅サケの他に、海苔わさび、昆布、ツナ、高菜など日替わりで6パタンをご提供します。お惣菜は、昔ながらの家庭の味を思わせる常備菜3品(日替わり20パターン)、鶏の唐揚げ、ミニトマト、無添加たくわんです。本日ご用意したお惣菜は、ひじき煮、切り干し大根、煮豆です。こちらのお弁当を1つ560円で、おむすび権兵衛  農林水産省店にて期間・数量限定で販売します。

おむすび権兵衛 農林水産省店

 

「キラリモチ」と精麦について

永倉精麦株式会社 取締役社長 永倉英彦 氏

永倉精麦(株) 永倉英彦氏

「キラリモチ」は農研機構西日本農業研究センターで10年の育成期間を経て、2009年に品種登録されたもち性二条裸麦です。大きな特長として、①もち性大麦である、②精麦加工適正に優れている、③炊飯等加熱調理後も変色しにくい、④食味が良い、⑤機能性成分大麦β-グルテンが多く含まれる、ということです。

「キラリモチ」栽培のあゆみ

「キラリモチ」の生産のあゆみについてご紹介しますと、2009年、品種登録された年に茨城県で3haの規模で生産を開始しました。それからちょうど10年が経ち、今年は250haまで面積を拡大、約800tの収量を見込んでいます。ここまでの道のりは難しいこともあり、特に2011年、東日本大震災による原発事故の影響で、生産の継続が危ぶまれたこともありました。幸い農研機構をはじめ、茨城県、全農茨城県本部、JA北つくばといった関係各所のご尽力で、現在に至るまで生産を続けることができています。

収穫前の圃場の様子。(写真提供/永倉精麦株式会社)

麦は5月下旬~6月上旬に収穫期を迎えます。この時期、キラリモチの圃場は、麦秋を迎えた黄金色と田植えが終わった米の緑色、そして圃場の先にのぞむ筑波山の景色が大変美しいものです。

「キラリモチ」の特徴はβ-グルカン含有量

もち麦の精麦は、原料である大麦の籾殻、糠を取ります。それをついて丸くしたものが丸麦タイプと呼ばれるものです。籾殻、糠を取ったあと麦粒の黒条線に沿って左右にカットしてさらに米粒状についてから加水熱処理をしたものが米粒タイプです。米粒タイプは見た目もお米のような形で白いのが特長です。

もち麦・米粒タイプ(写真提供/永倉精麦株式会社)
もち麦・丸麦タイプ(写真提供/永倉精麦株式会社)
もち麦・米粒タイプごはん(写真提供/永倉精麦株式会社)
もち麦・丸麦タイプごはん(写真提供/永倉精麦株式会社)

注目の機能性成分は、大麦β-グルカンです。大麦β-グルカンは水溶性食物繊維の一種です。大麦は小麦など他の穀物と比べてβ-グルカンが非常に多く含まれています。しかも粒の中心部にいたるまで多く含まれているため、精白してもβ-グルカンの含有量が減らないというのが大きな特徴です。詳しくは、大麦食品推進協議会のHPに掲載されていますので、ご覧いただければと思います。

農研機構による「機能性をもつ農林水産物・食品開発プロジェクト」の研究成果に、「大麦由来β-グルカン1,055mg以上/日を含む食品の摂取は、疾患に罹患していない者(未成年者、妊産婦及び授乳婦は除く)の食後血糖値上昇抑制に示唆的な科学的根拠を有すると判断した」とあります。

これをふまえて弊社では、もち麦(米粒麦・丸麦)を食後血糖値上昇抑制する機能性表示食品として、消費者庁に届出・受理されました。お米1合にもち麦を50g入れて炊飯することで、お茶碗1杯で大麦β-グルカン1,055mg摂取でき、血糖値の上昇を穏やかにします。

大麦にあまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、最近では小分けのパッケージなどで購入できるようになってきていますので、ぜひ普段の食事に取り入れていただけたらと思います。

 

協力/農林水産省技術会議事務局「食と健康」実践検証プロジェクトチーム
取材・文/編集部

 

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