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一歳植物

公開日:2020.1.16 更新日: 2019.11.11

樹木を実生から育てると、種子発芽から開花するまでにはかなりの年数を要するのが普通だが、わずかな年数で開花する早期開花の変わりものの個体が出現することがあり、この早期開花の現象は幼樹開花と言われる。この幼樹開花の性質が開花の翌年以降も継続して発現する場合に、この形質を持つ木本植物を一歳植物あるいは一歳物と呼ぶ。園芸商品で一歳物として扱っているもののなかには、本来の一歳植物以外に植物体のわい小なもの、普通型に比べると開花結実が早いもの、あるいは四季咲き性であるものなどを含めている場合が多い。

一歳植物の代表的樹種にはザクロ、サルスベリ、フジ、カイドウ、カラタチ、ネムノキ、モモなどがあり、種名の頭に一歳(一才)の字を付けて変種として分類している。一才ネムノキや一才フジは花芽をつけるまでに実生で4〜5年を要するが、普通型が20年くらいを要するのに比べると明らかに早い。一才バラはノイバラの変種、一才ザクロはヒメザクロでありザクロの変種、一才サルスベリはオオバナサルスベリの変種と想定されている。一才ザクラの品種ワカキノサクラはヤマザクラの幼樹開花した変種である。

観賞を目的とする家庭園芸用果樹や花木においては、一歳性は早期に観賞目的をかなえ、樹木の大きさが一般に小型であるので、盆栽や庭園樹として有用で好ましい形質として選ばれてきた。果樹では幼樹開花が認められても、開花結実は1年限りでその後は普通種と同じように数年の幼若期が存在する例が多く、また種子繁殖では親と同じ形質の果実生産ができないなどの理由から、果実生産用の一歳性果樹は選ばれていない。果樹の幼樹開花は、品種改良における世代促進として利用価値がある。カンキツの台木に用いるカラタチは、その実生に一歳性を示すものが現れるので、これを利用した品種改良が考えられている。

幼樹開花が起こる原因は未解明であるが、花芽形成制御に関する遺伝子の働きが関係すると考えられ、開花抑制機能を持つ遺伝子の発現が抑えられるか、開花促進機能を持つ遺伝子の発現が促進されることなどが想定される。

なお、種子を播いて樹木を育て、その樹木に果実を成らせるまでには長年かかる例として、「モモクリ3年、カキ8年。ユズは9年でなりさがる。ナシの大馬鹿18年」という表現があり、これはことわざとして、物事に取り組んだ時には、地道な努力が大切であることを意味する場合に使われている。実際の果樹栽培では同一品種の果実をならせるためには、種子から育てた実生苗ではなく、接木や挿し木で栄養繁殖した苗を植えているので、数年で果実をならせている。

 

『農耕と園藝』2013年12月号より転載

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