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寒締め栽培

公開日:2020.2.6 更新日: 2019.11.11

秋冬季に栽培しているホウレンソウやコマツナなどの野菜を、収穫前の1〜2週間に冬季の寒さに積極的に当てることを「寒締め」あるいは「寒曝し」と言う。この処理によって野菜の内容成分である糖やビタミン類などを多くして、食味や品質を高める効果を図る栽培を、特に寒締め栽培と言う。

この寒締め効果は越冬栽培が可能な多くの葉根菜類で認められ、その効果の発現には冷気に曝すだけでなく、地温が10℃以下になることが重要である。寒締め栽培で収穫された野菜は、寒締めホウレンソウや寒締めコマツナなどのように寒締めの呼び名を頭につけ、さらに糖度の高い収穫物に限定して寒締め品の名称を与えて流通させている。寒締め栽培では葉は地面をはうように成育し、ちぢんで葉面が縮緬状のしわになる。

寒締め野菜の葉で認められるしわは、葉脈の間を埋める葉身、すなわち脈間葉肉が面積を拡張し、小高く盛り上がった結果である。この葉面の凹凸は、織物の縮や縮緬において、しぼと呼ぶ布の表面に現した細かい凹凸に似ており、縮緬の風合いに似た特徴を持つところから、縮緬状の葉と呼ばれている。

この縮緬葉は正常形の遺伝子に欠損が生じることによっても現れる。この遺伝的な原因によるちぢみ葉は変種や品種として扱われる。その例として、チリメンキャベツ(サボイキャベツ)、チリメンジソ、三池ちりめん高菜、チリメンハカラシナなどが挙げられる。ホウレンソウにも縮緬系があって、寒締めの効果が強く現れる系統が作出されており、寒締め品だけでなくチヂミホウレンソウの名で秋冬季の高品質野菜として流通している。

また、食品の縮緬じゃこはイワシ類の仔稚魚を食塩水で煮た後、干してシラスとしたものであるが、仔魚を平らに広げて干した様子が、細かなしわを持つ絹織物のちりめん(縮緬)を広げたように見えることに由来する。

寒締め野菜が糖などを蓄積する理由は、凍結から身を守るための防御作用に基づくとみられている。植物を低温条件下で成育させると、一般に細胞内に糖などを蓄積して細胞内液の濃度が上がるので、凍結しにくくなる。さらに気温が氷点下になると細胞の外に氷ができるが、細胞を壊さない程度の氷であれば、この氷晶形成に細胞内の水分が使われるので、細胞内液の濃度が上昇して、細胞内はさらに凍りにくくなる。しかし、この細胞外で凍結が起こると細胞内が脱水状態になる。この時に蓄積されていた糖がタンパク質や核酸や様々な生体膜に結合して、脱水によりこれらの物質や膜が変性するのを保護する役目も果たしている。

 

『農耕と園藝』2014年3月号より転載

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