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水葉と気中葉

公開日:2020.2.13 更新日: 2019.12.18

植物体の全体、あるいは一部が水中にあって生育する植物を水生植物、または水草と言う。水草の葉には水中に展開する水生型の水葉と、空気中に展開する陸生型の気中葉とがある。水葉は水中にあって、表皮のクチクラ層は発達せず、葉肉細胞も数層しかなく、繊細で薄く、また気孔も分化していない。これは表皮細胞を通じた水中でのガス交換を容易にし、弱光を効率よく利用するための適応である。気中葉は水面または大気中に出ている葉であり、陸上の中生植物の葉と同じ形状を示し、表皮にクチクラ層と気孔を分化させて水分の保持とガス交換の役割を持たせている。葉の内部には柵状組織と海綿状組織を分化する。

水草は水面と植物体の位置との関係から、抽水植物、浮水植物、沈水植物に分類し、生育環境に応じた抽水葉、浮葉、沈水葉の三様の葉を形成する。抽水葉と浮葉は気中葉に属し、沈水葉が水葉である。抽水葉は水面から突き出ている葉を言う。その例にはコウホネ、ハス、オモダカ、ガマなどがある。浮葉は水面に浮く葉のことで浮水葉とも言う。浮葉の下面は水と、上面は空気と接しており、それにともない気孔が葉の表面に集中している。その例にはデンジソウ、ヒツジグサ、ジュンサイ、ヒシ、アサザ、ヒルムシロなどがある。沈水葉は葉のすべてが水中にあって活動する葉を言う。その例にはマツモ、タヌキモ、クロモ、アマモなどがある。

水草のなかには水葉と気中葉の両方を分化できる種があり、葉が展開する環境が水中か空気中かによって、その分化を切り替える。生育する環境によって、同一個体内で葉が形や生理的特徴を変える現象を異形葉と言う。異形葉を分化する水草の例としては、キクモ、タチモ、スギナモなどがあり、これらの水葉は羽状や線状に細裂している。

水葉と気中葉の形態形成を調べた例では、長日条件で成育すると陸生型に、短日条件では水生型を生じる傾向があると言う。この異形葉形成には植物体内で生産される植物ホルモンのアブシジン酸とエチレンが関係している。水草ニードルリーフを用いた解析では、水没条件下の水草では、植物体内にエチレンが蓄積し、このエチレンが内生アブシジン酸濃度を低下させ、この濃度低下が水葉の形成を誘導するという。

なお、園芸やアクアリウムで水生植物と言う場合には、そのなかに湿生植物をも含めている。湿生植物は湿潤な土地である湿地に生える植物群を言う。植物が生育する土地の水条件を基にして、植物を生態的に分類するとき、乾生植物、中生植物、湿生植物、水生植物の四群に分けている。

 

『農耕と園藝』2014年4月号より転載

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