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東京2020大会を夏花で彩る

第5回 どんな環境でも元気に育つイチオシの夏花「ペンタス」

公開日:2020.1.23

小さな星型の花が人気のペンタス

都内の公園や緑化スペース花壇の施工・管理会社に、夏におススメの花を聞いて、必ず挙がるのが今回ご紹介するペンタス。ペンタスは別名クサンダンカ(草山丹花)とも言われ、沖縄でよく見かけるサンタンカと同じ仲間のアカネ科の多年草低木です(耐寒性が強くないので1・2年草として取り扱われています)。

5枚の花弁で星型となった小さな花が先端でまとまって咲き、その見た目から中国では五星花と呼ばれています。原産地は、アフリカ東部の亜熱帯地域からアラビア半島南部にかけてで、園芸品種においても原種と同じ高温・乾燥に強い性質は引き継いでいます。

花色は白、ピンク、赤、赤紫のみ(‘オーシャンブルー’という青色系の品種もあるがあまり市場に出回りません)。最近は、F1種を中心に分枝数が多く揃い良く、耐暑性に優れる品種が各種苗メーカーにより多く扱われています。

東京都農林総合研究センターでは種苗メーカーと協同して、花壇苗の種苗コンクールを毎年開催しています。2018年度にペンタス22品種のコンクールを行いました。ここでは、その時に評価の高かった品種を中心に特徴や露地の適応性について解説していきます。

種苗コンクール審査の様子

【栽培概要】

2018 年2月22日に市販播種用土(商品名:TM-2)を充填した 288 穴セレトレイに22品種を播種し、展開葉が4枚時に3.5号黒ポリ鉢へ1本植えで鉢上げしました。定植用土は標準用土(赤土:腐葉土:ピートモス=5:3:2)とし、基肥は用土100Lあたり成分量でN=54g、P2O5=158g、K2O=54gを施用しました。

露地への定植は7月2日に、株間30cm、条間45cmで行いました。露地には、基肥として10aあたり、みのり堆肥2t、苦土石灰200kg、化成8号100kg、ロング(100 日タイプ)70kg を施用しました。ポット審査は6月19日に実施しました。

露地適応性は、定植時(7月上旬)、7月下旬、8月下旬の3回、面積あたり花がどれだけ被覆するのかを調査することで判断しました。露地適応性が高いものは、期間中継続して20%程度の被覆率を維持していました。

その結果がこちら・・・

1位 ‘ビーブライト レッド’(シンジェンタジャパン㈱)

第1花が開花した時の草丈が20cmよりも小さく、花首も伸びにくく、コンパクトな草姿。株張は30cm弱で他の品種よりも横にも広がり、圧倒的なボリューム感。花色も目を引く鮮やかな濃赤色。露地適応性も高く、連続開花性に優れます。特に8月後半に開花量が増えます。8月終わりの草丈は40cm。

2位 ‘ラッキースター ピンク’(㈱ミヨシグループ)

‘ビーブライト レッド’同様、コンパクトで草丈がコンクールの中で最も低くなりました。花色は明るいピンクで花弁に厚みがあり、しっかりした花を咲かせます。露地適応性も高く夏の間中咲き続けます。8月終わりの草丈は36cm。

3位‘ハニークラスター ディープローズ’(シンジェンタジャパン㈱)

出荷時の草丈は20cmをやや超えますが、この品種もコンパクトでボリューム感のある株に仕上がります。花色は他にはない鮮やかなビビットピンク。露地適応性が高く、7月後半に花を多くつけます。8月終わりの草丈は40cm。

イチオシの品種 ‘ギャラクシー パープルスター’

覆輪が特徴の‘ギャラクシー パープルスター’

今回のコンクールでは残念ながら6位でしたが、特徴的な花色を持ち、2017-2018ジャパンフラワーセレクションにおいてベスト・フラワー(優秀賞)にも輝きました。露地適応性はやや低いのですが、紫色の線が花弁の外側に沿って入るのは他の品種にはない特徴があります。まだ品種としての色は1種類だけですが、新色の追加も予定しているとのこと。期待が高まります。

ペンタス作りに挑戦してみよう!

ペンタスの種子はとても微細なため、1粒ずつ播くことは困難です。自家採種した種子の場合、ピートバンや播種用土を充填した箱にバラまきします。一方、販売されている種子は種苗メーカーが播きやすいようにきちんとコーティングされています。生産者はこのコーティング種子を播種機で一斉に播いたり、丁寧に一粒ずつ手で播きます。

種子が小さいため播種後は基本的には覆土をせず、覆土するとしても薄くかぶせる程度にします。苗転びを防ぐため、芽が伸びだしたのち細かいバーミキュライトで覆土することも有効です。セルトレイを利用することで、生育が均一化し、鉢上げ作業も楽になるため、生産栽培する場合はセル苗育苗が主流となっています。最近は、苗の品質も安定し価格も安くなってきており、セル苗を購入する生産者が増えています。

ペンタスの種子(矢印が種子、球状のコーティングを割ると種子が出てくる)

播種時期は、基本的に2~3月ですが、温度さえ確保できれば周年播くことが可能です。一般家庭で育てる場合は暖かくなってからの方が無難です。発芽に必要な温度は23℃前後で、播いてから芽が出るまで3日程度を要します。電熱マット等を利用すると温度を確保できます。発芽以降の生育初期は最低15℃で管理します。

ペンタスはほかの花壇苗と比べ、初期生育が緩慢なのが特徴です。芽が出てから鉢上げ可能なサイズに成長するまでに通常50日以上かかります。

いよいよ本葉が4枚程度展開したら、3.5号黒ポリ鉢へ1本植えで鉢上げします。本葉2枚程度の若い段階での鉢上げはその後の生育が遅くなりますので、慌てないでしっかり大きくなってから植えましょう。ペンタスは過湿に弱い傾向にありますので、鉢上げ用土はなるべく水はけを良くするよう心がけます。

赤土(園芸店では赤玉土を購入可能)に腐葉土やパーライト、鹿沼土などをブレンドすると良いでしょう。基肥として肥料は緩効性肥料(ロング肥料など)と即効性肥料(化成肥料など)を鉢用土1Lあたりそれぞれ2g程度入れます。

生育温度は10℃以上を確保するように努め、追肥は液体肥料で適宜与えます。2月下旬播種で6月下旬には満開時期を迎えます。

栽培に約4か月はかかり慣れていない方には難易度は高いですが、ぜひ苗づくりにチャレンジしていただければと思います。

苗を準備したら花壇やプランターへ植え付けます

最近のF1品種のペンタスはわい性種が主流で、植え付け時の苗の大きさは20cm前後と小さいため、花壇の前面や寄せ植えでの利用に向きます。ただし、中高性種を利用する場合は立性で分枝数が多く、伸長しながら連続して開花するためやや広めに植えつけます。

公園や道路わきの長い花壇など広く植え付けられる場所では、面的に大きく見せるよう品種ごとにまとめて植える場合もありますが、狭い場所では色幅の多さを活かし、混植することもあります。

同じ品種の面的な植え付け:武蔵野中央公園(武蔵野市八幡町、2018年7月25日撮影)

鉢植えにする場合は、様々な色の品種を組み合わせカラフルに植え付けるとかわいらしく見えます。ペンタスの高さを活かし、草丈の低いほかの花と寄せ植えすると高低にメリハリが付けられます。

違う品種を組み合わせた鉢植え:イクスピアリ(浦安市舞浜、2018年7月19日撮影)

日照りが続いても乾燥に強く、梅雨時期の降雨にも比較的耐えますが、過湿で根腐れを起こすこともあります。水はけの良い土に植え付けるとともに、水のあげ過ぎに注意する必要があります。

ペンタスは次から次へと花があがり、生育も旺盛でメンテナンスフリーな花ですが、花がらを早めに摘むことで、株をさらにきれいに維持することができます。

草姿の伸びすぎを防ぎまとまりを良く、また樹勢を回復させるために、株が大きくなったら半分程度切り詰めることも有効です。寒さにも比較的強いため、上手に育てることができれば、都心では11月いっぱいまで咲かせることができます。

ハダニ、コガネムシ、灰色カビは大敵です!

ペンタスは基本的に病害虫には強い植物なのですが、乾燥が続くとハダニが、都心部の樹木が生い茂る場所の近くや街頭近くではコガネムシが、雨が続き、長期間高湿度条件が続くと灰色カビが発生しやすくなります。ここではそれぞれの特徴と防除方法について解説していきます。

ハダニ

葉の表面が点々と色が抜けるように黄化しはじめたら注意が必要です。葉の裏を見ると0.5mm程度の赤や黄色のハダニがいます。高温ほどハダニの発育期間は短く、ひどい場合には蜘蛛の巣のような糸が張り巡らされます。

そこまでの状態になった場合は手遅れで、農薬による防除が必要となりますが、水やりの時に意識的に葉裏にも水をかけるなどすれば発生をある程度抑えることができます。

コガネムシ

多くのところでは問題となりませんが、都市部ではドウガネブイブイなどコガネムシによる被害がみられます。葉が食害され、ひどい場合は株全体の生育が停滞してしまいます。

コガネムシが集まるような街頭の近くには植え付けないように心がけるとともに、成虫を見かけたら勇気をもって取り除きましょう。

灰色カビ病

雨が長く続くと、咲き終わった花がらに灰色のモワモワとしたカビが発生します。カビが発生した部分が葉に触れると病気が葉にも移ります。灰色カビは傷んだ葉にも寄生し部分的に枯らすこともありますが、基本的には咲き終わった花が発生源となるため、咲き終わった花は早めに取り除くようにしましょう。

また、密植に植え付け風抜けが悪いと多発します。ペンタスは旺盛に生育しますので、やや広めに植えるようにすると、病気の発生も少なくなります。

今回は夏花として有望な花のひとつ、ペンタスについて主な品種、栽培・管理方法を解説してきました。夏花の中には耐暑性が品種によって異なる場合もありますが、ペンタスは、品種によらず、いずれも乾燥や日陰にも強く植え付け場所を選びません。色合いも鮮やかで、明るい色の種類が豊富です。

2020年はいよいよオリンピック・パラリンピック大会の本番の年を迎えます。ペンタスの明るい色を取り入れた花壇が会場周辺や会場につながる道路など多くの場所で作られ、華やか大会になることを期待します。

プロフィール

岡澤立夫(おかざわ・たつお)
主任研究員(博士)。東京都で6年間普及指導員として現場指導にあたる。
平成17年からは花きの研究員として、屋上緑化資材「花マット」や地中熱ヒートポンプなどの省エネ技術ほか、花壇苗の屋内向け商品「花活布(はなかっぷ)」を開発。現在は、オリパラに向けた夏花の研究を中心に取り組んでいる。

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