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ダイコンの魅力に迫る!! 「だいこんサミット2019」

公開日:2019.12.16

去る11月29日、宇都宮大学峰ヶ丘講堂において「だいこんサミット」が開催された。宇都宮大学農学部、だいこんサミット2019実行委員会が主催する本イベントでは、興味深い講演と注目品種の情報を求め、今年も業界関係者が多く参加し、意義のあるサミットとなった。3人による演者の講演主旨と、各種苗会社の注目品種を中心に、当日の様子をリポートする。

会場となったのは、1924年に宇都宮大学の前身・宇都宮高等農林学校の講堂として建設、文化庁から登録有形文化財に指定されている同大の峰ヶ丘講堂。
多くの業界関係者が集った会場内。

講演1 青森県の農業情勢と小売店のダイコンへの取り組み

株式会社 パセリー菜 常務取締役 小原一夫氏

当社は1914年(大正3年)に創業し、今年で106年目を迎えました。100年続いた会社はあと100年続く、というのでこの先100年も順調でしょう(笑)。青森県南部地域において種苗店、フラワーショップを11店舗経営しており、ダイコンを中心とした野菜や花など、約1300種類の種子や苗、ビニルハウスや肥料といった農業資材まで幅広く手がけ、プロの方から家庭菜園の方まで様々な顧客層に対応しています。

熱く語る小原氏。高級魚のkg価格と自身の体重を同じ基準で価格にたとえるなど、時折、冗談を交えて会場を沸かせた。

青森県の誇る農産物に、2015年の発売開始以来、県初めてとなる特Aを獲得し続けている米である「青天の霹靂」、全国一の生産量をキープし続けているニンニクやゴボウ、そして全国生産量の半分を占めているリンゴなどがあります。ダイコンにおいては、2017年の統計によれば、その産出額が81億円、産出額の約10%になります。また、2014年の統計によれば作付面積は2917haで、県内では一番大きな面積を誇る品目です。ダイコンの出荷量の多い他の都道府県と比較した場合、千葉県、北海道に続く3位の12万6,800tになります。多くの都道府県が作付面積に大きな減少が見られるなか、当県は微減に止まっています。最近、新規若手の農業生産法人のスタートアップ増加が見られることもそうした要因のひとつとなっているようで、県内でのダイコン栽培の重要性は変わることはありません。

さて、当社のような小売業がダイコンの品種を導入するようになった経緯について説明したいと思います。

県内でのダイコン栽培で最も特徴的なのは、播種・収穫期間が長期にわたることです。播種は3月中旬〜9月上旬、収穫は5月下旬〜11月上旬でおよそ8ヵ月となります。3月中旬〜4月上旬での播種ではトンネル、4月上旬〜5月上旬においてはべたがけ、5月上旬〜下旬ではマルチ、と時期によって変化します。おのおのが保温性と費用の両方を熟慮した方法で、その後の5月下旬〜9月上旬での播種においては資材を一切使用しない露地栽培が多くなります。しかし、こうした県内独自の栽培方法がダイコンの新品種導入の妨げになっているのです。ダイコン育種を手がけるメーカーの多くが、関東・関西地方に育種拠点としています。気候の差があるため、メーカーから送られてきた新品種を育ててもうまくいかないことが多く、当県では何度も苦い思いを重ねてきました。具体的に挙げると、メーカーの説明とは違い、「根の長さが短い」、「抽苔が甘い」、「内部障害や横縞症に弱い」などといった問題が多く発生したのです。そこで1994年、当社はおいらせ町に研究農場を配置、県内での栽培に見合った品種を選定し、試作を開始しました。そして幾度にもわたる試作の結果、農家での試作、販売までを行えるようになったのです。そんな試作の成果を結実させたものとして、各栽培方法に適した品種と作型をまとめた「だいこん栽培体系表」を作成し、当社のカタログに掲載、農家に幅広く周知してもらえるように心がけています。同じようにゴボウやネギ、タマネギなども試験をしており、適正品種の推奨だけでなく、害虫対策などにも積極的に取り組み、農家へ還元できるようにしています。播種時期により、品種特性は異なってきます。メーカーには引き続き、青森県に合った、より良い品種を育成していただけるよう、お願いしたいです。理想としては、全作型にあった品種があるといいなあと思います。

統計によれば、ダイコンは一人当たりの野菜消費量では減少傾向で、若い世代で消費が減ってきています。ダイコンだけではなく、野菜全般にそういえるようです。消費が増加しなければ生産を増やすことも難しいと思います。消費拡大のため、切り干し大根の他、大根そばや味噌大根など、青森県でポピュラーなダイコンのおいしい食べ方などを全国的に周知してもらうなど、当社も努力を続けていきたいと考えています。

講演2  地域自慢の農産物 塩原高原大根で、お客様をおもてなし

塩原温泉うんまいもんプロジェクト委員長 君島理恵氏

私の本業は旅館「彩(あや)つむぎ」の女将ですが、日々、地域振興のために邁進しています。今日は2011年(平成23年)に発足された「塩原うんまいもんプロジェクト」についてお話しします。

普段は那須塩原の旅館「彩つむぎ」の女将である君島氏。当日は「ダイコンカラー」の着物で華やかに、そして気合十分!

このプロジェクトには、塩原の旅館・飲食店経営者、調理の仕事に就いている者、そして生産者が参加しています。お互いの交流により、それぞれの仕事や立場の理解を深め、塩原温泉全体で一丸となって取り組むことでメディアにも積極的にアピールしていくことを狙いとしています。地産地消の普及拡大、塩原温泉の知名度を上げてお客様を呼び込む、地元野菜のブランディングと農家の収入増を主な目標として掲げています。参加者に生産者も含めているところが特徴的だと思います。

塩原には高原野菜として有名な3つの野菜があります。どれも塩原の冷涼な気候、火山灰による豊かな土が育んだ自慢の野菜です。その3つは、「塩原かぶ」、「高原ほうれんそう」、そして今回ご紹介する「那須塩原大根」です。このダイコンを使ったレシピを旅館や飲食店で考案し、お客様に提供しておもてなしをしています。お客様が「おいしい!」となれば、産直所などで購入していただけるようおすすめでき、農家の方々の収益にもつながるのです。また、ダイコンの旬はちょうど紅葉シーズンとも重なるため、そこを狙って大根鍋を観光客にふるまうなどしてアピールしています。そして町の橋の欄干や街灯などにダイコンをぶら下げるディスプレイをしてビジュアルで目をひいたり、年末には干したダイコンをたくあんに加工して年越しでふるまうなどもしています。

では、旅館や飲食店で今までに創作したダイコン料理を紹介します。メインはもちろん、デザートまで考えてみました。まず紹介したいのは、町のカフェレストラン「洋燈(ランプ)」での定番メニューとなっている「大根パスタ」。ピーラーでむいたダイコンをフェットチーネのようなパスタにしてトマトソースで召し上がっていただきます。また、加賀の郷土料理として有名な治部煮に仕立てた「大根と五目野菜の鳥治部煮」もあります。厚切りにしたダイコンを使用した「大根のペッパーステーキ」や、「大根のクリームチーズ」、「大根と梨のゼリー」などのデザートもあるんですよ。ナシの甘みがダイコンととても相性がよく、好評でした。また、どうしても私が旅館の女将ということから、ダイコンは和食、というイメージが強かったのですが、このプロジェクトを通して洋食にも十分おいしく活用できるということを知る機会になりました。また、「ダイコンはメインにはならないよ」といったネガティブな意見も最初はありましたが、今ではダイコンは十分メインになると自信を持っていえます。

定番メニューとなった大根パスタ。(写真提供:彩つむぎ 君島氏)
考案したレシピの一例。低温で蒸した那須塩原大根と地元でとれるヤシオマス。こちらも栃木県産の「にっこり梨」のドレッシングでいただく。他にも、湯葉など、地元・栃木を意識した食材を多くレシピに取り入れている。(写真提供:彩つむぎ 君島氏)

毎年、このように考案したメニューはキャンペーン中に各旅館やお店のウェブサイトで紹介してアピールしています。そのため写真で見てもおいしく見えるよう、写真のクオリティも重要ということで、料理の撮影を専門とする写真家の方を招いて講習を開催して学ぶ場を作るなど、みんなで努力しています。

今回はダイコンがテーマなのでダイコンについて触れてきましたが、塩原は新緑の時期もすごく素敵です。その時期はカブが旬となっており、その時には「ウェルカム新緑! ウェルかぶ塩原♩キャンペーン」を開催しておもてなしをしています。ダイコンのおいしい時期だけでなく、カブのおいしい新緑の時期にもぜひ、塩原温泉にいらしてくださいね!

試食タイムでは君島さんとともに参加した観光協会の担当者が那須塩原大根をアピール。筆者もいただいたが、その大きさの見事さ、従来のダイコンとは違った甘みに驚き!

講演3 画像解析を用いたダイコンの根形を特徴付ける形質による根形の多様性評価

神戸大学大学院農学研究科附属 食資源教育研究センター 吉田康子氏

難しいテーマを画像を交えて丁寧に説明する吉田氏。

ダイコンにおいて、わが国ではこれまでに100品種以上が世に出ており、その根形はまさに多岐にわたります。同じように多様な形を持つトマトでは実の形に関係する遺伝子がいくつか同定されています。そこで私は、ダイコンもトマトと同様にいくつかの「根形の特徴に関わる形質の遺伝子」の組み合わせにより、多様な根形が生み出されているのでは、というひとつの仮定を立ててみました。例えば、円筒型のダイコンは「全体が縦長」、「先端が平坦」、「曲がりにくい」といった遺伝子を持っており、曲がった根形が特徴の「方領」のようなダイコンには「全体が縦長」、「先端は鋭角」、「曲がりやすい」といった遺伝子があるのでは、ということです。この仮説を実証できれば、根形の特徴に関係する遺伝子を意図的に組み合わせ、かなりの確率で希望どおりの根形を作り出すことができるのではと考えました。

遺伝子を同定するためには、根形を特徴に関係する形質(根形を特徴づける形質)を決め、評価しなければなりません。カテゴリーにより質的に評価されることもありますが、詳細な違いでのカテゴリー分けは「先端近くふくれ」、「先端ふくれ」のように、見た人の主観が強く、客観的評価が得られにくくなってしまいます。根形は量的に評価すべきで見た人による誤差がない画像解析が望ましいとの結論に達しました。

農林水産省の審査基準などにある根形カテゴリーを参考にしながら、「円筒」(編集部注:首と根の幅がほぼ同じ幅のもの)、「丸」(編集部注:ほぼ円型)、「先流れ」(編集部注:先が緩く尖っているもの)といったダイコンの根形を網羅する10個のカテゴリーを設定し、2016〜2018年に当センター圃場にて栽培・収穫をした21品種をこの10個のカテゴリーに分けてみました。そして「長幅比」、「先端の形」、「膨らみの位置」、「膨らみの程度」、「幅の一定さ」、「曲がり」の6形質を「根形を特徴づける形質」としました。

これらの形質を画像解析で測定し、外観によって分類されたカテゴリーと画像解析の測定結果から分類されたカテゴリーを比較し、それらが同じカテゴリーに分類された個体数の割合を一致率としました。「三角」、「逆三角」、「縦楕円」、「先流れ」の4つのカテゴリーの一致率は100%、一番一致率が低かった「横楕円」でさえも88%という高めの一致率となったことから、6つの形質が根形を特徴づける形質として妥当であり、画像解析による測定方法も確率できたと思います。

また、同じ時期に当センターで栽培した45品種・系統についても6形質を測定したところ、全分散における品種間分散が48~89%を示し、そのうち長幅比が最も高く、遺伝的に強く制御されていることが分かりました。一方で品種間分散が最も低い曲がりは、環境による影響を最も受けやすい形質であることもわかりました。それぞれの個体の「曲がり」が品種の根形の特徴、つまり遺伝的なものであるのか、環境によるものなか区別できないため、「曲がり」を除いた5形質を用いて、45品種・系統がどのような特徴を持っているかを調べたところ、「横楕円」や「太ふくれ」は同じカテゴリー同士が比較的近くにプロットされ、「縦楕円」や「先流れ」は広範囲にわたりプロットされていました(下図参照)。これにより、同じカテゴリーでも膨らみの位置やその程度により、品種・系統の詳細な違いがあることがわりました。今回の形質と測定方法により、今までは判別できなかった根形の品種・系統の差を数値化でき、それらの特徴をより詳しく表すことができるのでは、と考えられます。

 

各種苗会社の出展からおすすめ品種紹介

会場では講演の他、日本を代表する5つの種苗会社がおすすめ品種を引っさげ出展。「すべてがおすすめ!」と口を揃える各社の、特にイチオシのダイコン品種を紹介する。

タキイ種苗株式会社

タキイ種苗株式会社のおすすめは、「冬神楽(ふゆかぐら)R®」。ダイコンの多くが青首だが、「冬神楽®」は首の周囲が薄いのが特徴。また、ダイコンは加工用がほとんどを占めるが、青果用はもちろん、加工用にも適した品種。曲がりにくく、じっくり肥大する。

耐病性が高く、生理障害の発生も少ない「冬神楽®」。

みかど協和 株式会社

実物は残念ながら当日実物はなかったものの、みかど協和株式会社がすすめるのは台風の影響からも回復が早く、肥大性に優れ、総太り形状になる「里誉(さとほまれ)」と、白首でツマやおでんなど、あらゆる加工に適応できる「蒼(あお)しらず」。さらに当日揃えた実物のなかからのおすすめは、「福誉(ふくほまれ)」と「徳誉(とくほまれ)」。毛穴が浅く肌がきれいで光沢があり、「福誉」は小葉で揃いが良い。

「福誉」(上)と「徳誉」(下)。両方とも毛穴が浅く美しい肌を呈する。

株式会社 サカタのタネ

「冬自慢」をイチオシするのは株式会社サカタのタネ。「鈍感力」が高いダイコンで、全国各地のいろいろな土壌にも適応し、悪天候でもしっかりと太るのが特徴。プロでも家庭菜園でも作りやすく、幅広く利用できる。

鈍感力」が強く、育てやすい「冬自慢」。直売所でも高評価を得ている。

カネコ種苗株式会社

カネコ種苗株式会社のイチオシは、耐病性が高く、揃いやすいのが特徴の「豊秋(とよあき)」。特に揃いの良さは、大産地での栽培に嬉しい特徴だ。甘みが強いため、特に生でいただくのが良いという「冬の浦」もおすすめ。

「豊秋」は揃いの良さがウリ。食味の良い「冬の浦」は試食人気も高かった。

株式会社トーホク

地元・宇都宮とのことで気合い十分の株式会社トーホク。「マコトちゃん」、「味なやつ」といったユニークなネーミングの品種が多く並ぶなか、注目は「ビタミン」。他のものより1.5〜2倍とビタミン類が多く含まれているのが特徴。

身の半分がグリーンで目を惹く「ビタミン」。ビタミンを多く含むダイコンということで、健康ブームと相まって注目されそうだ。

協力/だいこんサミット実行委員会
取材・文/丸山純

 

 

 

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