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懸崖と懸崖作り

公開日:2020.2.20 更新日: 2021.5.25

盆栽において根元から立ち上がった幹がすぐに下方に屈曲して懸垂している樹形を懸崖という。
観賞用植物の主幹を下向きに伸ばして懸崖に似た草姿や樹姿を作り、観賞価値を高める整枝法は懸崖仕立ておよび懸崖作りという。その例にキクの懸崖作りがある。

盆栽の懸崖は環境の厳しさを模写しているが、その表現には立ち上がりの太い幹と、枝先は上向きに伸びあがる力強さが要求される。

キクの懸崖作りには、茎を真っすぐ伸ばす前垂れ懸崖と左右に大きく曲げて流水型にする静岡型懸崖とがある。
キクは自然日長下では8月下旬以降に花芽分化する。花芽分化するまでの栄養生長期に、側枝の頂芽を摘心すると頂芽優勢から解放されて、葉の腋芽が発達して新しい側枝が育つ。
各側枝の頂芽が花芽分化して発蕾開花すると懸崖ギクの花になる。

したがって花数は側枝数に依存するので、懸崖作りは栄養生長期間中に繰り返し摘心と施肥を行って側枝を増やす。
苗は前年の秋に小ギクの冬至芽から挿し芽で作り、翌春に鉢に移植し、5月に大鉢に定植する。
主茎は約30度に上向きに傾けた長い支柱に沿わせ、そのまま伸ばす。茎の伸びに合わせて横の支柱を付ける。
4月から8月までの期間は摘心を続け、最後の摘心を開花の約2ヵ月前の9月上旬に行う。

側枝の生長が遅い根元部位ほど早くに摘心し、株全体の側枝の生長を揃える。発蕾後に主茎を下向きにして姿を整える。

 

『農耕と園藝』2010年11月号より転載

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