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東京2020大会を夏花で彩る

第6回 夏花壇に花色鮮やかな「ビンカ」を

公開日:2020.2.23

ビンカにはさまざまなタイプの花が存在します

連休明けから初夏にかけて多く出回るビンカ。次々に花が咲く様子から、「日々草(にちにちそう)」とも呼ばれています。旧学名はVinca rosea(現学名はCatharanthus roseus)で、旧学名の属名が残り、ビンカという名称が現在でも使われています。

キョウチクトウ科ニチニチソウ属の多年草ですが、日本では越冬できないため1年草として取り扱われています。原産地はアフリカのマダガスカルで、温暖な気候を好みます。

花色は白、ピンク、赤、オレンジ、紫色の5色が基本。花弁の濃淡と中心部の色の違いから品種としてさらに分かれ、各種苗メーカーが取り扱うシリーズごとに10色程度が揃っています。

花の大きさは2~6cmと大小さまざまで、花弁は5枚で構成される一重系が中心ですが、最近は多く花弁が重なる八重系品種も上市されています。また、草姿はほとんどが立性タイプですが、横に広がりながら成長するほふく性タイプも出回っています。

ビンカから抽出される成分には薬用も認められています

ビンカから抽出されるビンカアルカロイドは、そのままでは毒ですが、Moudi、 Mら(2013) Vinca alkaloids. (Int J Prev Med、 Nov; 4(11): 1231–1235. Review)によると、血糖値低下と細胞毒性効果を有し、糖尿病、高血圧、さらには抗がん剤としても利用されています。ビンカアルカロイドが細胞分裂時に必要な微小管の重合を阻害し、細胞分裂を停止する作用を及ぼす結果であることが認められています。

品種の優劣を決める種苗コンクールを開催しました

東京都農林総合研究センターでは種苗メーカーと協同して、花壇苗の種苗コンクールを毎年開催しています。2015年度にペンタス26品種のコンクールを行いました。ここでは、その時に評価の高かった品種を中心に特徴を解説していきます。

【栽培概要】

2015 年3月11日に市販播種用土(商品名:TM-2)を充填した 288穴セレトレイに26品種を播種し、展開葉が2~4枚時に3.5 号黒ポリ鉢へ3本植えで鉢上げしました。

定植用土は、標準用土(赤土:腐葉土:ピートモス=5:3:2)の混合用土とし、基肥は用土100ℓあたり成分量でN=54g、P2O5=160g、K2O=54gを施用しました。

その結果がこちら・・・

1位 サンダー グレープ(サカタのタネ㈱)

ポットでの草丈が17cmとコンパクトで、かつ分枝に優れボリュームがあります。花径は5.7cmとやや大きめです。開花揃いも良く、花付きが良い品種です。花色は紫色というより、ピンクを濃くした色に近くなっています。

撮影場所:シンボルプロムナード公園

2位 パシフィカXP ポルカドット(タキイ種苗(株))

ポットでの草丈が15cmと節間が詰まり、出品された品種の中で最もコンパクト。花径は5.2cmと中輪系で、開花数が多い品種です。花弁は白色で中心に赤目が入ります。

撮影場所:シンボルプロムナード公園

3位 タイタン ポルカドット(㈱ミヨシ)

ポットでの草丈が17cmと比較的にコンパクトで、かつ分枝に優れボリュームがあります。花径は5.4cmと中大輪系(タイタンシリーズの中には6cmに達するものもあります)。花弁は白色で中心に赤目が入ります。

撮影場所:シンボルプロムナード公園

温度さえ確保できれば、ビンカ作りは難しくありません

販売されている種子は種苗メーカーが播きやすいようにきちんとコーティングされています。生産者はこのコーティング種子を播種機で一斉に播いたり、丁寧に一粒ずつ手で播きます。セルトレイを利用することで、生育が均一化し、鉢上げ作業も楽になるため、生産栽培する場合はセル苗育苗が主流となっています。

最近は、苗の品質も安定し価格も安くなってきており、セル苗を購入する生産者が増えています。

播種時期は、基本的に2~3月で、温度さえ確保できれば周年播くことが可能ですが、出荷時期は春から初夏にかけてです。一般家庭で育てる場合は暖かくなってからの方が無難です。

発芽に必要な温度は22~25℃前後で、播いてから芽が出るまで6日程度を要します。ビニールでトンネル被覆したり、電熱マット等を利用すると温度を確保できます。

本葉が2~4枚(1~2対)程度展開したら、3号ポリポットの場合は1本植え、3.5号ポリポットの場合は3本植えで鉢上げします。乾燥には強いのですが過湿に弱い傾向にあるため、鉢上げ用土はなるべく水はけを良くするように心がけます。

赤土(園芸店では赤玉土を購入可能)に腐葉土やパーライト、鹿沼土などをブレンドすると良いでしょう。基肥として肥料は緩効性肥料(ロング肥料など)と即効性肥料(化成肥料など)を鉢用土1ℓあたりそれぞれ2g程度入れます。ビンカは鉢上げ後温度が低いと根の張りが極端に悪くなるため、最低15℃を維持するようにします。

一方、最近の研究において、鉢上げ用土のpHと生育との関連性を明らかにしています。石灰を含む肥料を多く入れ過ぎてpHが6.5以上となると、開花が遅く、生育が極端に悪くなります。

pHの違いによる生育の違い

左からpH5.0、pH 5.5、pH 6.0、pH 6.5、pH 7.0、pH 7.5

また、pH7.5の高pH条件下で、葉に生理障がいが生じることが分かっています。下部の葉全体が黄化したり、葉縁部の巻き込み、不整形の斑点、葉先の褐変が生じます。このように、ポット用土のpHも大事ですが、花壇など植えつける土壌のpHにも注意を払う必要があります。

例えば、アスファルトの近くなどpHが上がりやすい条件下では、先に示した障がいが生じる可能性があります。土壌を酸性化するために、無調整のピートモスをすき込むなどの対策が必要です。

不整形な斑点が生じる
葉縁部が内側に巻き込む

高土壌pHによる生理障がい症状

鉢上げ後、そのまま手を加えず生育させても良いのですが、根付いた頃に2~3節残して摘心(先端の芽を摘んで、葉の基部にあるわき芽の成長を促進する)すると、花がつく枝が増えてボリュームのある株に仕上げることができます。

ビンカの摘心(矢印は摘心部位) 

追肥は液体肥料で適宜与えます。2月下旬播種の作型で6月下旬には満開時期を迎えます。ビンカは生育が早く、播種から約3か月で開花させることができます。

初期の温度と鉢上げ後の水管理に気を付ければ比較的容易に栽培することができます。出来上がった花苗を園芸店で購入するのではなく、ぜひ苗づくりにチャレンジしていただければと思います。

苗を準備したら花壇やプランターへ植え付けます

ほふく性種は寄せ植えやハンギング、地表面をカバーするのに利用可能です。わい性種は揃いが良く、広い面積を景観形成するのに利用できます。密植しても次々と花はつきますが、上方へ徒長してしまうので日当たりの悪いところではやや広めに植えるようにします。

また、多肥では株が暴れ花が少なくなりますので、肥料はなるべく控えるようにし、生育を見ながら追肥で補うようにしましょう。夏を過ぎ、株が込み合ってきたら切り戻し、樹形を整えることができます。

こちらは、色違いの品種を組み合わせた寄せ植え。豊島区池袋の寄せ植えでは、小輪系の品種を取り入れ、かわいらしく見せています。

浦安市舞浜
豊島区池袋

疫病、立ち枯れ病、灰色カビ病、炭そ病、アブラムシは大敵です!

ビンカは虫害よりも病害により生育不良となる場合が多くみられます。ここでは、一度発生すると甚大な被害をもたらす疫病と立ち枯れ病の2大病害について説明します。

疫病

ビンカの病気の中で最も問題となっています。葉先から葉縁にかけて斑点を生じ、次第に広がって葉全体が枯れます。茎では、地際部の節が黒色に変色することもあります。被害がひどい場合は、株全体が枯死します。

病原菌はPhytophthora var. nicotiana(ファイトフトラ ニコチアナ)という糸状菌(カビ)です。降雨や潅水による植物体へのはね上がりで侵入し、大雨が続き時期や多潅水で発生しやすくなります。

対策として、連作を避けるとともに、排水を良好にし、灌水時に土がはね上がらないようにします。密植や窒素過多による過繁茂で発生が助長されますので、植え付け密度や肥培管理に注意する必要があります。

最近は、「コーラ」シリーズ(シンジェンタジャパン㈱)など疫病への耐病性を有する品種も発売されています。

疫病に侵されたビンカ

疫病が発生し、ほぼ全滅しています。

立ち枯れ病

主に地際部の茎が侵されます。茎に茶褐色の病斑が形成されたのち、その部分が腐敗します。下葉から黄化し、ひどい場合は株全体が萎れ枯死します。病原菌は、Rhizoctonia solani(リゾクトニア ソラニ)と呼ばれています。他の植物にも多く寄生する多犯性の糸状菌(カビ)で、ビンカ以外の植物でも病害被害が報告されています。

多湿状態で発生が助長されるため、対策としては、密植を避け、通風性を確保します。また、感染株の残さから広がることもあるため、感染した植物は残さず処分するとともに、未熟な堆肥の使用を避けるなどの対策が必要です。可能であれば土壌消毒を実施したり、連作を避けるようにしましょう。

夏花としてビンカを積極的に利用しよう

ビンカは花色が豊富で明るい色を中心に多くの品種が販売されています。花の大きさもバラエティに富み、利用場面に応じて、使い分けが可能です。葉色が濃く光沢があり、高級感と躍動感を感じさせます。花はセルフクリーニング(開花が終わった花がらがきれいに落ちて目立たない性質)能力が高く、花がら摘みをする必要がなく、管理に手間がほとんどかかりません。

また、ビンカは品種に関わらず耐陰性が強く、北側の花壇や都心部のビル間の植栽にも向きます。さらに、乾燥にも強く、夏の暑さにも良く耐えます。たとえ乾燥で葉がしおれ気味(葉が内側に巻き込んで垂れ下がります)になっても、水が補給されると速やかに回復します。

そのため、夏花として失敗することはほとんどありませんが、唯一の弱点は過湿に弱いことです。雨が続いたり、水はけの悪い場所では根腐れや疫病などの病気が発生し、甚大な被害をもたらすため、植付前の花壇の準備と植付後の水管理に気を付ける必要があります。

このように、暑さや乾燥に強く、植え付け場所をほとんど選ばないため、オリンピック・パラリンピックの会場やその周辺で多くのビンカが利用されることが期待されます。本記事を参考に、迷ったらまずビンカをデザインに取り入れていただければ幸いです。

プロフィール

岡澤立夫(おかざわ・たつお)
主任研究員(博士)。東京都で6年間普及指導員として現場指導にあたる。
平成17年からは花きの研究員として、屋上緑化資材「花マット」や地中熱ヒートポンプなどの省エネ技術ほか、花壇苗の屋内向け商品「花活布(はなかっぷ)」を開発。現在は、オリパラに向けた夏花の研究を中心に取り組んでいる。

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