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猟師と考える、山と鳥獣害②

公開日:2020.1.7 更新日: 2020.1.8

「狩猟」と「有害鳥獣捕獲」。野生動物を捕獲する点では同じに見えますが、その時期や意味は違います。いったいどこが違うのでしょう? 静岡県南伊豆町で猟師として野生動物の管理・活用や、森と里、海のつながりまで考えた環境保全に取り組んでいる(株)森守 代表取締役社長  黒田利貴男さんに、狩猟者になるための手続きや心得についても教えていただきました。

前方の林の中にイノシシが見える。有害捕獲期間に捕獲。

野生動物を捕獲するには、「狩猟」と「有害鳥獣捕獲」がありますが、みなさんは、その違いについて、ご存知ですか? いずれも猟銃やわななどを使って、野生動物を捕獲する、人間の行為は一緒ですが、その意味するところと内実は違います。

だれもが勝手に野山に入ってシカやイノシシを捕まえてよいわけではなく、狩猟という行為は、さまざまな法律で規定されています。たとえば「鳥獣保護管理法」で、狩猟とは「法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をすること」と定義されていて、これを行うには「狩猟免許」が必要です。その内容は、使用する猟具によって異なり、「網猟免許」「わな猟免許」「猟銃免許」があります。中でも猟銃免許は「第一種銃猟免許(装薬銃)」「第二種銃猟免許(空気・ガス圧縮式)」に分かれています。

そもそも威力の弱い空気銃は、狩猟に使われていませんでしたが、鉛弾が使えるようになり、鳥類(ヒヨドリ、ムクドリ、スズメ)等の捕獲が許可されました。それでも空気銃は巻き狩のような本格的な狩猟には不向きですが、さらに威力の強い圧縮式にガス銃が出たことで、ワナにかかった大型獣の殺傷が可能になり、有害鳥獣捕獲に使われるようになりました。

装薬銃には散弾銃とさらに威力の大きいライフル銃がありますが、ライフル銃を所持するには、10年以上の経験が必要です。

特に被害がなくても、免許を所持した猟師が山に入り、巻き狩りや単独猟でシカやイノシシなどの獲物を仕留める。かつて狩猟は山村で暮らすオヤジたちの冬の楽しみであり、都会からやってくるハンターにとってはレジャーやスポーツの意味合いが深かったと思います。

また狩猟は、都道府県ごとに狩猟期間=猟期が決まっていますが、それはもっぱら冬です。北海道以外の都府県は、概ね11月15日から翌年の2月15日まで。北海道は10月15日から翌年1月15日まで狩猟が行えます。ただし、農作物への被害が多い都道府県では期間が延長されていて、静岡県では前後15日ずつ延長されて、11月1日から2月末までが猟期となっています。正式な猟期は、各都道府県や年によって異なるので、興味のある方は各自治体の窓口に問い合わせてください。

冬に狩猟を行うわけ

ではなぜ、猟期は冬に限定されているのでしょう?

イノシシは、11月末から2月末までに繁殖期を迎えます。秋になると枝から木の実が地表に落ち、それを食べて栄養を蓄えることでメスは妊娠・出産の準備に入ります。一方、繁殖期に入ったオスは、メスと同様木の実を大量に食べると、今度はメスを求めて何も食べずに森を歩き回ります。昔から狩猟者の間で「イノシシを狩るなら正月を境に年前のオス、年明けのメス」といわれていたのは、いずれも一年で最も獣体が大きくなる時期だからです。

猟期に捕獲した大イノシシ。

では、クマの場合はどうでしょう? クマの繁殖期はイノシシと違って6〜7月の初夏で、冬になるとメスは出産・育児の時期を迎えます。この時期に「冬ごもり」をする前、秋になると木の実をたらふく食べて、穴に閉じこもるのです。

猟期に捕獲される鳥類の代表は、水鳥のカモです。カモの場合、夏の間は海や川で魚を食べているので、この時期捕獲すると肉が魚臭くなります。ところが秋以降、カモは田んぼのひこばえについた二番穂や、稲刈りでこぼれた落穂などを食べるので、この時期にみなさんが食べる鴨肉は、臭みもなく美味しいのです。

つまり猟期とは、動物たちの繁殖期であり、獣体が充実する時期であり、そして一年でもっとも美味しく味わえる時期なのです。

2006年の猟期、たつま割をしている猟師たち。

今から40年ほど前。私は小学4年生の頃から父親のグループについて、猟に行っていました。当時は都市に住むお金に余力のある方が地方へ銃猟に来て、現地の狩猟者グループは、そんなお客さんの狩りをガイドすることで、生計を立てていました。「客猟」1人につき、約1万円のガイド料、地元旅館への宿泊費などで地方は潤っていたのです。

しかし、それも長続きしませんでした。原因は最近流行している「豚コレラ」でした。1976(昭和51)年から79(昭和54)年、伊豆半島と千葉県で大流行して、イノシシはほぼ絶滅状態になってしまったのです(近年の豚コレラについては、後述します)。

狩猟を始めるには?

狩猟免許には、わな猟免許、網猟免許、銃猟免許(一種・二種)があります。いずれの免許も「生きているものの命をいただく」ための免許ですから、それなりの覚悟が必要です。

狩猟の現場で動物を仕留めると、自然な流れで絶命の瞬間や、けものたちの血や内臓を見ることになりますが、時折その覚悟がないまま狩猟の世界に入ってきた人間の、不届きな行為を目にすることがあります。それはわなにかかった獲物を放置して、死ぬのを待つというやり方。狩猟は相手の動物を捕まえたり、銃弾が当たったら、それでおしまいでのゲームではありません。

狩猟免許は、野生動物を捕獲するための資格ですから、自分の仕掛けたわなに獲物がかかったら、しっかり「止め刺し」をして、解体して、食べるなど、責任を持って対処していただきたい。また、銃猟の場合「半矢」といって、急所が外れて手負いのまま逃げるけものもいます。その場合は、最後まで追跡してきちんとトドメを刺す。その覚悟も必要です。

資格や納税も必要

さらに銃を使って狩猟をする場合、「猟銃免許」と「猟銃・空気銃所持許可証」が必要になります。最近は都市部に住みながら「狩猟を始めたい」という人も増えていますが、猟銃を所持するには、いくつか注意が必要です。地方では猟銃の自宅保管は適法なのですが、都市部では銃砲店、もしくは保管業者に預けなければなりません。地方では公安委員会が行う猟銃所持許可事務が年に1度か2度しかないのですが、人口の多い都市部では、2カ月に1度程度行われる。そんな違いもあります。

山へ行くには車も必要ですが、機動力のある四駆車がおすすめです。

狩猟免許や許可証を手に入れたら、狩猟をする都道府県で「狩猟者登録」を行います。東京都在住者が山梨県や静岡県、北海道で狩猟をする場合、各都道府県への登録が必要です。

そして都道府県ごとに「狩猟税」を納付します。銃猟は16,500円、わな・網猟の場合、1シーズン8,200円。その他、大日本猟友会、都道府県猟友会、都道府県各支部猟友会、市町村猟友会の会費も必要になります。近年は、狩猟税の免除や減額措置も取られていますが、猟友会の会費は免除の対象にはなりません。狩猟を始めるということは、野生獣の命をいただく覚悟とともに、意外にお金がかかるのです。

山には猟師のルールがある

誰もが初めて森に出て猟をするわけですが、そこから野生動物との駆け引きが始まります。まずは野生動物の行動習性を覚えていかなければなりません。それにはベテラン猟師について覚えるか、独自に調査研究するかになりますが、そこには非常に難しい問題があります。

山には、国や自体が定める法的なルールとは別に、その地域ごとに「猟師のルール」があるからです。端的にいうと「縄張り」があり、グループごとに狩りをする山が決まっています。例えば、自分たちの犬が他のグループの山に獲物を追って行くことがあります。その山で他のグループが追っていた獲物を捕獲した場合、その獲物は折半となります。

猟師のルールは非常に厳しいものです。それは狩猟事故防止するためです。慣れた山で狩猟や有害鳥獣捕獲をするなら、他のグループも入ってこないし、山を荒らすこともありません。最近は、誰でも狩猟免許を手軽に取得できるようになりました。そのため誤射による狩猟事故も発生しています。

狩猟者間のトラブルも多発しています。ある時、神奈川県の狩猟者グループが私たちの縄張りに入ってきました。我々はちょうど猟を始めるところだったので、「すみません、今からここに入るので他に行ってくれませんか」と声をかけました。すると「ここは黒田さんに断ったからいいんだ」と返してきたのです。

雑談しながら「あなたたちは黒田さん知ってるんだ。」「もちろんだよ!」「ふ〜ん」と名札を前に突き出し「俺らも黒田っていうんだ……」というと、そのグループはクモの子を散らしたようにどこかへ逃げてしまいました。そのハンターたちは、私が黒田だと知らずに、私の名をかたっていたのです。

その場に残ったリーダーを捕まえて「やたら人の名前使うと猟ができなくなるよ」と伝えました。人の名前をかたって猟場に入ろうとすると、名誉毀損または詐欺になりかねません。すると猟銃の所持許可を返納しなければなりません。本人の目の前で名前をかたるのは、詐欺罪に当たらないと思いますが、いずれにせよ、このような問題は、日常茶飯事なのです。その時はこちらも面白がってからかっていましたが、実際そこにいた全員が銃を持っていました。もし、短気な人がいたら、一触即発の事態になっていたでしょう。無用なトラブルやいざこざを避けるためにも、狩猟を覚えるには山のルールを熟知したベテランに指南してもらうのが早道だと思います。

新米猟師が猟場に出て、最初に覚えるのは、けもの道の見極めと足跡の見定めです。土に残る足跡からいつ、どこへ、どのくらいの、どんな獲物が歩いたかを見定めるのです。せっかく足跡を見つけても、それが1週間前のものなら、その周辺に獲物はいないことを意味しています。

宮崎県椎葉村の猟師たちは、単独猟で犬数匹と一人の猟師が森に入ります。この村のルールは、自分が見つけた獲物を、獲るまで追いかける。たとえ一猟期かかっても同じ足跡の獲物を追いかけます。そして命をいただくために、森の中にある山の神様に必ず祝詞を上げるそうです。猟師には森から恵みをいただくという感謝の気持ちも必要です。

捕らえたイノシシを、森守の加工処理施設に運ぶ黒田さん。

有害鳥獣捕獲とは?

一方、「有害鳥獣捕獲」とは、農林水産業や生態系への被害を防止、軽減するために行われるもので、被害を受けた農家や土地の所有者が、市町村の担当部署に相談して申請を行います。有害鳥獣捕獲は、かつて年に1回か2回、動物の自然の中の餌がなくなった頃、ほとんど夏に行われていました。

冬はイノシシの繁殖期で、秋にたっぷり木の実などを食べていれば、里に出てくることはありません。しかし春先から餌不足になり、栄養価の高い農作物を狙って里に出てきます。その時に車や人を怖いと思わなくなったのです。

シカは草食動物なので、冬の間食べ物が少なくなり、道路端の草や、雪の下の苔などを食べるようになります。そんなシカにとって青草が生い茂る夏はまさに天国でしょう。それでも最近は生息数が増加して、森の中が餌不足になり、イノシシ同様道路端まで出てくるようになりました。そんなことから全国的に被害が拡大し、冬の狩猟だけではとても追いつかなくなってきました。

ここ数年、猟期の「狩猟」よりも、「有害鳥獣捕獲」での捕獲頭数の方が、3倍近くに伸びています。それはまた、彼らの生息域や生息環境が大きく変化したことを意味しています。それでも狩猟は、動物の繁殖期である冬場に狩りを行うので、野生動物たちに「狩猟圧」をかけていたのは事実です。捕獲することで、個体数を減らすだけでなく、多くの狩猟者が森に入ることで、活動範囲が狭まっていたのです。

くくりわなの設置準備。最近はICTを活用した捕獲通知システムで、見回りの労力軽減も図れる。

以前は農地で被害が出ると、「有害捕獲許可申請書」を各都道府県に提出するために、都道府県の出先機関まで申請に行かなければなりませんでした。そして申請が受理されると、行政の担当職員か鳥獣保護員が現地調査を行うため、捕獲の許可が降りるまで1週間から10日ほどかかっていました。

ところが2014年の「鳥獣保護管理法」の改正を機に、2015年から有害鳥獣捕獲に関わる権限が、都道府県から各市町村長に移譲され、申請から捕獲までの手続きがスムーズになりました。このように、狩猟や有害鳥獣捕獲に関する法律が変わって、新しい制度も設立されています。

<有害鳥獣捕獲認可者>
各市町村の首長の許可により有害鳥獣捕獲を行う人のことです。2014年までは、都道府県知事が許可権者となり有害捕獲が行われていました。当時は今のような報償金制度はなく、地域のために猟友会が行っていました。

現在は捕獲の促進のために報償金が支払われるようになりました。すると報償金目当ての狩猟免許所持者が増え、捕獲頭数も増えています。それが地方財政を圧迫し、現在は「鳥獣被害防止特措法」の元、狩猟者を支援するようになりました。

<鳥獣被害対策実施隊>
農林水産省の「鳥獣被害防止特措法」により各市町村が設置する鳥獣被害防止対策事業で任命される捕獲従事者です。農水省は農地や山林を守るのが仕事なので、農地を守るための柵などの資材を支給しています。各市町村は鳥獣被害対策協議会を設置して事業を行っています。協議会を通せば支援が受けられるので、捕獲報償金のみ支給を受けている市町村も少なくありません。

<認定鳥獣捕獲等事業者>
「鳥獣保護管理法」を所管している環境省が、都道府県の捕獲事業を支援する制度で、都道府県知事から任命を受けた法人を支援しています。国から都道府県へ委託した事業ですが、それぞれ猟友会に委託すケースが多く見られます。

たとえば群馬県では、北部の沼田市、片品村、みなかみ町の猟友会に委託して、東日本大震災以降、放射能に汚染された野生動物の捕獲を行っていて、すべての個体の放射能検査を実施しています。汚染された個体は販売も、食用にもできないため捕獲されなくなるのを防ぐためにも、この制度は必要です。

新制度の舞台裏で…

いずれの場合も報償金の額は、都道府県、市町村により幅があり、1頭5,000円のところもあれば15,000円のところもあります。その金額は獣種によっても違います。南伊豆町のように元々イノシシの多い地域では、かつてイノシシ成獣7,000円、幼獣3,000円、シカ0円、サル30,000円という具合でしたが、本州ではシカの生息域の拡大が大きな問題になりました。そのために今ではシカもイノシシも同額の地域が多いようです。2011年以降南伊豆町でもイノシシとシカは7,000円、サルは30,000円に。なぜシカが急激に増えたのかについては、後述したいと思います。農水省の特措法の支援を受けている自治体は、それまでの単独の報償金に、国の支援を上乗せして約12,000円を支給しています。西日本では狩猟者が値段をどんどん吊り上げた例もあります。

このような経緯から、猟期に捕獲したものや、猟友会に加入していない人が捕獲したもので報償金を受け取ったケースも生じています。つまり報償金の不正受給です。全国でも逮捕者が出るほどの問題に発展しました。

20年前の有害鳥獣捕獲は、地域住民のために手弁当で行うのが当たり前でしたが、いつしか狩猟者は金儲けのための狩猟を行うようになってしまいました。現に狩猟者登録をしても、猟期に狩猟を行わない人はたくさんいます。そんな風潮を国の制度が後押ししたのは間違いないでしょう。

ワナのワイヤーを、木の根元にしっかりとめる。

そもそも猟期に狩猟を行わなければ、生息数は減りません。それは猟期が繁殖期だからです。春や夏になり農地に被害が出て、有害鳥獣捕獲申請をする頃には、既に次の個体が生まれているのです。その個体を減らしてきたのは猟師です。有害鳥獣捕獲だけでは、単に捕獲従事者でしかありません。

それでも狩猟免許を取得したての初心者が「ハンターです」「猟師です」と名乗ります。有害鳥獣捕獲が本来の目的からズレが生じたまま行われている。そのため個体数の管理にならず、被害の軽減につながらない。それが鳥獣害がいつまでも続く原因です。

以上のような経緯から、私は鳥獣被害対策実施隊としても、認定事業者としても有害鳥獣捕獲は行っていません。本当に被害のある農地所有者からの依頼で、現場を確認して、適正と認める場合のみ行っています。そんな中、静岡県は猟期に捕獲を促すために、狩猟期間も認定事業者による捕獲を実施しています。それは狩猟期間に捕獲を推進するという意味ではよいでしょう。ただ、それによって代々受け継がれてきた猟師のルールが行政によって壊される一面もあります。他のグループの猟をする縄張りの中に入り込んでくる。伊豆半島ではそれが原因の狩猟事故も起きています。

かつて狩猟は冬季が中心でしたが、現在はそれ以外の期間にも有害鳥獣捕獲が頻繁に行われるようになり、野生動物たちは休まる時がなくなりました。つまり、一年中追い回される、またはわなに注意を払って警戒しながら生きるようになりました。逆にそれを回避する術を学習したものは賢くなり、里に慣れてしまったのも事実です。本来は臆病で薮を好み、暗い森に棲んで夜間に活動していた動物たちが、安全な里に慣れ、車や人、外灯に照らされた道路に普通に現れるようになっています。

《プロフィール》
黒田利貴男(くろだ・ときお)
1965年静岡県生まれ。小学4年生の時から、猟師の父の後について山を歩く。
21歳で狩猟免許、猟銃所持許可を取得して以来、狩猟期間は猟を続ける。南伊豆の山を知りつくす猟師であると同時に、稲作や林業、しいたけ栽培の経験も持つ。野生獣の管理や活用に留まらず、それを囲む森と里、海のつながりまでを視野に入れ、活動を続ける。2015 年7月株式会社森守を設立。現在は病気療養を続けながら、森林資源の活用、耕作放棄地の再生、狩猟者や加工処理の人材育成、自然を活用したエコツーリズム等、幅広く活動中。農林水産省が任命する農作物被害対策アドバイザー、南伊豆町町会議員

文・写真/(株)森守 代表取締役社長 黒田利貴男
構成/三好かやの

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